地域をよくする活動や思いを、多くの市民に知らせるために。
SDGsに対する世間の認知・共感は徐々に高まってきている。しかし、身近な地域でどんな活動が行われているかということは、なかなか認知されにくいようだ。同市は「SDGs未来都市」として、市民の意識醸成を目指しているが、自治体から発信できる情報には限りがあるという。「当市は、市内企業の代表に地元出身者が多く、“加西市をよくしたい”という意識が強い傾向にあります。環境美化の取り組みや、子どもへの学習支援など活動熱心ではあるものの、各団体が独自に行っているため、私たち行政も全ては把握できません。せっかくの有意義な活動も、市民にあまり知られていないことが、もったいないと思っていました」と岩野さん。
そんな中で同市が注目したのが、「バイザー」から提案を受けたSDGs推進プラットフォーム「グッドシティ」だった。同社が管理するサイトに、市民が閲覧できる自治体ごとの専用ページを作成。そこで企業や市民団体などが活動内容を発信する。「各組織が連携できる体制をつくれば、活動を広げられる可能性も。情報を1カ所に集めることで、市民にも知ってもらいやすくなります。当市がやりたいことと、グッドシティでできることが一致していました」。令和5年10月に導入し、令和6年度から本格運用するという。
企業や団体自らの発信で活動が分かりやすく身近に。
同サイトでは、SDGsにつながる地域の社会貢献活動を可視化できる。発信はブログ形式で、活動を行う団体が自ら投稿。自治体の作業負担はなく、各団体にとっても、伝えたい内容を自分たちで決められ、広告費もかからない。具体的に発信することで、活動に関心をもつ市民が参加したり、他団体と連携したりするきっかけにも。閲覧した人が発信者にメッセージを送れるなど、市のホームページを介するよりも、利用者同士がつながりやすいという。
各団体は、サイトから「SDGsパートナー登録制度」に申請。付与されたマイページから情報発信できる。「もともとは登録制度を紙で受け付けるつもりでした。グッドシティがなければWEBは使わなかったかもしれません。情報に即時性があり、印刷・郵送代も不要でメリットが多いです」。認証団体の活動に市民が参加した場合は、地域通貨と連動した独自のSDGsポイントが付与される仕組みになっている。
「登録企業や市民団体は、市の認証と取り組みの周知で、組織のイメージを向上させられる点がメリットになるでしょう。ポイントの付与も、まずは市民参加のきっかけになれば。当市は大学がなく、若者が市外に流出しやすいことも課題です。社会貢献活動の内容が伝われば、若者からの印象がよくなり、地元で就職する機運が高まることにも期待しています」。

みんなの“自分事”になるよう、庁内外でSDGsをPRする。
サイトの本格的な運用に先立ち、さらにSDGsに親しむための取り組みも進んでいる。市内では、国連での採択前から社会貢献活動が盛んだった企業など、10団体で構成する「SDGs推進協議会」が活動中。同市が事務局となり、SDGsに関心をもってもらうためのアイデアや企画などをワークショップ形式で検討している。協議会でアイデアを出し、子ども向けの啓発イベントを開いた実績もあるという。庁内でも、若手職員を中心にプロジェクトチームが立ち上がり、SDGs学習ゲームを活用した普及啓発など、広報活動に力を入れているそうだ。
行政だけで考えるのではなく、市内の多くの人に自分事として意見を出してもらいやすい仕組みをつくっている同市。「導入して終わらず、いかに活性化させられるかを考えています。SDGsは目標が大きすぎる上に、すぐには効果なども見えづらいため、取り組むための一歩目が大切。難しく捉えずに、市民の参加意識を醸成するために工夫していきたいです」。
 兵庫県加西市
兵庫県加西市
政策課 係長
岩野 裕之(いわの ひろゆき)さん
SDGs活動を盛り上げるプラットフォーム「グッドシティ」
自治体ごとの専用ページで、地域の企業や団体がSDGsの活動を発信したり、成果を共有したりするプラットフォーム。地域住民に活動を伝え、関心や参加意欲につなげる。

地域で取り組むための活用例
〈企業の活動を活性化〉
SDGs登録制度 SDGsの活動に取り組む企業や団体を自治体が認証する制度。グッドシティのサイト内で運用し、申請や受付ができる。
SDGsの活動に取り組む企業や団体を自治体が認証する制度。グッドシティのサイト内で運用し、申請や受付ができる。
〈住民の関心を高める〉
地域ポイントの付与 住民参加の意欲を高めるため、活動のインセンティブとして地域ポイントを付与。継続的な参加や発展を促す。
住民参加の意欲を高めるため、活動のインセンティブとして地域ポイントを付与。継続的な参加や発展を促す。
CHECK
他自治体でも、まちづくりに活用した導入事例があります。
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