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愛知県豊田市

公開日:2025-12-15

脱炭素スクールを開講し、企業への伴走支援で着実に実践力を育む。

環境・エネルギー
読了まで:4分
脱炭素スクールを開講し、企業への伴走支援で着実に実践力を育む。

中小企業の脱炭素経営を支援する学びと交流の事業

豊田市は脱炭素経営を学ぶための「脱炭素スクール」を開講。基礎知識に加えて、削減効果のシミュレーションや事業計画の組み立て方までを学べる実践的な内容で、参加企業同士のつながりも生まれているという。

※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。


目次

単発イベントでは知識の習得で終わり実践するための力が身に付きにくい。
講義と演習を組み合わせた学びで知識を深め、成果につなげる。
企業同士の絆が芽生えることで連携プロジェクトの案も。
プロフィール画像

豊田市
環境部 環境政策課
担当長 志村 和彦(しむら かずひこ)さん

プロフィール画像

豊田市
環境部 環境政策課
主事 熊谷 望実(くまがい のぞみ)さん

単発イベントでは知識の習得で終わり実践するための力が身に付きにくい。

令和元年に「ゼロカーボンシティ宣言」を行った同市は、2030年度までに温室効果ガスの排出量を平成25年度比で50%削減する中間目標を掲げている。“クルマのまち” であることから、排出量の約55%を占める産業部門の脱炭素化が急務だったという。「市内の製造業の多くは下請け企業です。取引先から温室効果ガスの削減を求められても、“何をしたらいいか分からない”と悩む声が多く聞かれました。単発の講座だけでは自主的に脱炭素経営を進める力が付きにくい。基礎から学んでもらえるよう、伴走して支援できる仕組みが必要だと考えました」と、志村さんは話す。

こうして生まれたのが、“スクール形式”という発想だ。「腰を据えて学ぶことで考え方が根付き、脱素施策を現場で推進する力が身に付くのではと考えました」。さらに参加企業同士が情報交換や連携を図ることで経験やノウハウを共有でき、新たなビジネスチャンスが生まれるのではという期待もあったそうだ。なお、対象者は基本的に経営者や総務部門の責任者としている。「スクールの目的は、企業が脱炭素経営の重要性を認識し、進め方を学ぶことです。そのため、多くの社員に浸透させる影響力をもつ立場の人に参加してもらっています」と、熊谷さんは説明する。

▲グループワークなどを通じて、企業同士の交流が生まれている。
▲グループワークなどを通じて、企業同士の交流が生まれている。

▲グループワークなどを通じて、企業同士の交流が生まれている。
▲グループワークなどを通じて、企業同士の交流が生まれている。

講義と演習を組み合わせた学びで知識を深め、成果につなげる。

こうして令和3年に開講したのが豊田市脱炭素スクールだ。全8回、約9カ月間にわたる講座は、“講義”と“演習”を組み合わせた実践的な内容で構成される。設計にあたっては業界団体へのヒアリングを行い、ニーズを把握した上で組み立てたという。なお、同スクールは商工会議所と信用金庫との共催で、市は委託業者とともに事務局を務め、スクール全体の企画や運営を担当。受講生募集や情報発信も共催団体と協力して行っている。

講義では、受講生が脱炭素経営やCO₂削減対策などの基礎知識を習得。最初は、自社のCO₂排出量を把握する“見える化”に重点を置き、演習では、削減効果のシミュレーションをして、事業計画の組み立てまでを実施する。最後には「脱炭素経営アクションプラン」を作成して報道陣もいる公の場で発表し、自社の取り組みをアピールする場を設けているという。「時間をかけて学び、行動に移すためのアクションプランといった成果物までできるのは、スクールならではのよさだと感じます」と志村さんは話す。

成果につながるように、同市では伴走支援を大切にしているのだとか。例えば講義内容の大枠は事前に定めているものの、受講企業の悩みや要望を随時反映させ、オーダーメード型のカリキュラムにしている。「各回の前には必ず委託業者やアドバイザー、市の担当者で打ち合わせを行います。受講生から“脱炭素の最新テーマを取り上げてほしい”といった要望があれば講義に組み込んだり、“先行自治体の取り組み事例を知りたい”という声があれば外部講師を招いたりしています」と熊谷さん。要望に応じて第4期からは、より高度な内容が学べるコースも設置。内容の充実に向けて改善を重ねているそうだ。加えて、質問や相談には随時メールや電話などで対応。都合がつかず不参加となった企業があれば、個別にフォローアップ講座も実施しているという。

企業同士の絆が芽生えることで連携プロジェクトの案も。

同スクールは第4期までを終えて、延べ52社が修了した。第3期修了生へのアンケートでは、約9割が“自社の脱炭素経営にスクールが役立った”と回答。“取引先や注文が増えた”“採用の場でアピールできるので人材確保につながった”という声も寄せられている。ともに学ぶ時間や演習時のグループワークなどを通じて企業同士につながりが生まれ、“仲間との絆と事務局のフォローのおかげで最後までやり切れた”といった声も上がっているという。

脱炭素に関する知識や、取り組みの進み具合には差があるため、グループ分けはそれぞれの課題ごとに行ったそうだ。「例えば、何から始めていいか分からないグループや、計画づくりは進んでいて社内浸透だけが課題というグループなどに分けました。情報交換が進み、企業連携による脱炭素プロジェクトの話も出ていて、今後の展開が楽しみです」と熊谷さんは笑顔を見せる。

修了生は増えてきたが、まだ当初の目標には届いていないという。そのため製造業だけでなく、その他の業界団体にも働きかけ、幅広い業種に周知していきたい考えだ。「第2期からは、修了生に新たな受講生を紹介してもらうようにしました。同じ悩みをもつ企業同士が集まり、励まし合いながら課題解決につながることを期待して、市としても引き続き伴走支援していきたいです」と、志村さんは意気込みを話してくれた。



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