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“特命空き家仕事人”とともに住民に向き合って空き家に価値を見出す。

加速度的に増加する空き家問題の担い手を起用
まちのために積極的に外部人材を起用する三条市。「地域活性化起業人制度」を活用して空き家の専門家を迎え、成果を上げているという。外部人材との協働のメリットや現場の様子について、市長と担当者に話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.42(2026年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

三条市
市長
滝沢 亮(たきざわ りょう)さん

三条市
市民部 環境課
主事 榎本 脩人(えのもと しゅうと)さん
ふるさと納税の成功をきっかけに外部人材起用の機運が高まった。
そもそも同市が外部人材の起用に踏み切ったきっかけは、ふるさと納税の改革のためだったと市長の滝沢さんは振り返る。「近隣自治体が成果を上げる中、当市でも市政運営の財源確保のために、寄附額を増やすべく、本格的に取り組みたいと考えました。寄附の多くはインターネットを介して行われますが、庁内には十分な知見をもつ職員がいなかったのです」。そこで同市は、外部から専門家を迎えることを決断した。
令和3年にはマーケティング戦略全体を統括するチーフマーケティングオフィサーを公募し、外資系企業出身者を採用。併せて、ふるさと納税の専任職員の配置や、組織の再編を行った。こうした改革が実を結び、令和2年度に7億円だった寄附額は、令和3年度に15億円、令和4年度に50億円を突破。この成功によって、外部人材の起用が職員に受け入れられたという。
次に着手したのが、空き家問題だった。その打ち手として地域活性化起業人制度を活用したのは、職員によるアイデアだったそうだ。同制度では、自治体と都市部の企業が協定を締結し、社員を一定期間、自治体に派遣してもらい、地域活性化に取り組む。「国が人件費の一部を負担してくれて、職員は専門的な知見をもつ人材とともに働けます。財源と人材が揃うので、ゴーサインを出しました」。同制度の活用実績などを参考に人材を探したが、移住のハードルは高かったという。しかし、職員の熱心な働きかけにより、令和4年に空き家活用事業を手がける「ジェクトワン」の熊谷 浩太(くまがい こうた)さんを“特命空き家仕事人”として、迎えることができたそうだ。


住民が空き家に向き合う機会を増やしユニークな新規事業にも注力する。
令和5年の住宅・土地統計調査によると、同市の空き家は4,590戸。住宅総数に対して、空き家率は11.9%と、年々増加傾向にある。空き家の所有者が高齢のため施設に入所したり、相続人が転居したりと背景は様々。草木の越境などをきっかけとした近隣からの苦情で、空き家が見つかるケースもある。榎本さんは「空き家の中でも特に問題となっているのが、持ち主の長期不在などで1年以上放置されている“その他空き家”です。この区分の空き家は、直近10年で約2倍に増加しました。放置が続くと建物が倒壊するリスクが高まります。対策の必要性を感じながらも、限られた職員だけで先手を打つことが難しく、問い合わせ後の対応になっていました」と話す。
こうした中、同市では空き家の解体を進めるだけではなく“発生させないこと”“流通させること”を目指した。庁内や公民館へ空き家についての相談ボックスを設置。さらに、イベントで不動産会社や建設会社などに直接相談できるスペースを設け、住民が空き家について考え、アクションできる機会を増やしたのだ。職員も自治会の協力のもと、空き家と思われる建物を調査するなど、能動的な取り組みを行った。さらに熊谷さんは、地域の有志とともに「燕三条空き家活用プロジェクト」を発足させ、空き家対策のノウハウを庁外にも共有。同プロジェクトでは、農村部の古民家を改修して移住・農業体験施設の立ち上げを行う。また、空き家の残置物をリメイクしたアイテムを販売するショップの運営など、ユニークな新規事業にも力を注いでいる。

外からの風で組織を変革し職員の意識を変えていく。
取り組みの結果、令和3年度に30件だった空き家の相談件数は、令和6年度には745件に増加。流通件数も21件から150件まで伸びたという。「住民にとって相談しやすい環境を整えたことが、成果につながったと思います。役割分担によって、職員はより迅速な住民対応ができるようになりました」。また、広報紙やSNSなどのメディアを通じて、継続的に空き家の情報発信を行っている。令和7年度からは同プロジェクトームを県内初の「空家等管理活用支援法人」に指定し、職員が担ってきた「空き家・空き地バンク」や「空き家相談窓口」などの運営を委託。空き家の利活用を一気通貫で進めていく。
変革の一手に外部人材を起用する意義について、滝沢さんは「庁内に新しい視点や自由な発想が生まれやすくなることです。外部人材の活用は単なる人材確保ではなく、組織文化をアップデートする機会だと捉えています」と話す。また、榎本さんは「熊谷さんのどんな任務にも応える姿勢や、プレゼン資料のつくり方、話し方など、勉強になります」と刺激を受けているようだ。今後も同市では、専門的な知見が求められる場面において、外部人材の受け入れを前向きに検討するという。













