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入札加点がある“宣言”制度で、企業の自主的な行動を応援する。

中小企業が手軽に脱炭素化の取り組みを始められる制度
横浜市は、中小企業が脱炭素化への意欲を表明する「脱炭素取組宣言制度」を創設。宣言することで補助金の対象となる上、入札加点も受けられる仕組みで、約1年で6,500以上の事業所が宣言したという。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

横浜市
経済局 中小企業振興部 中小企業振興課
担当係長 佐々木 洋之(ささき ひろゆき)さん
すぐに答えられる選択式フォームにより3~5分の入力で宣言が完了する。
国際的な園芸文化を広め、持続可能な社会を目指す「GREEN×EXPO2027」。同市は開催都市として、2027年度末までに、市内ほぼ全ての中小企業が脱炭素化に着手することを目標に掲げている。それを踏まえ、毎年6月に行う「横浜市景況・経営動向調査」の中で、脱炭素化の状況を追ってきた。「コスト負担や人材不足を理由に、中小企業が二の足を踏む実態が見え、きっかけをつくる方法を模索していました」と佐々木さんは振り返る。
そうして令和6年6月に始まった「脱炭素取組宣言制度」は、企業が脱炭素化に取り組むことを宣言し、市が応援するというもの。宣言した企業は補助金制度などの支援が受けられるほか、公共工事の総合評価落札方式において加点される。こだわったのは“宣言するハードルを下げる”という点だ。WEB上の専用フォームにはあらかじめ施策がいくつか掲載されており、企業はその中から自社で取り組んでいるものや取り組む予定があるものを選択するだけ。入力は、3~5分ほどで完了する。「宣言内容の審査や提出物はなく、あくまで自主的な取り組みの一歩を応援しています」。参加した企業には宣言書とロゴマークが交付され、市のホームページに掲載されるという。

脱炭素化に取り組む企業が増えてさらなる参加への後押しになる。
金融機関や商工会議所などによる周知の協力もあり、宣言企業は着実に増加。制度開始から約1年で、小売業や建設業、製造業など6,500以上の事業所が宣言を行った。「横浜市景況・経営動向調査においても、脱炭素化に取り組んでいる中小企業が15%近く増え、約64%になりました。企業の意識が変化してきたという手応えを感じています」。
なお、以前は“何から始めていいか分からない”という企業も多かったが、宣言をきっかけに行動に移すケースが増加。エアコンの適切な温度設定や通勤時の公共交通機関の利用など、身近な取り組みから始めている。“電気代の削減につながった”“経営力の強化を実感している”といった声が寄せられているという。
目標達成に向けて、宣言企業のさらなる増加を目指している同市。「より多くの企業に関心をもってもらうため、入札時の加点を設定しています。加えて、補助金や様々な支援を受けられる点も、宣言を後押しする要素になるでしょう。制度を活用した企業が“種火”となって、その動きが他社にも広がることを期待しています。そして宣言をきっかけに、各企業の社員同士で、脱炭素化の取り組みや具体的な実践方法について、話す機会が増えていくとうれしいですね」と語ってくれた。











