ジチタイワークス

秋田県

【近藤 麻実 さん】クマ対策専門職員として クマとの付き合い方を伝える。

近藤さんは令和2年4月、自然保護課に3年の任期付き職員として入庁。7月から同課に設置された「ツキノワグマ被害対策支援センター」の専門員を務めている。東北で初めてのクマ対策専門職員として注目を集め、着任当初から新聞やテレビなどの取材が殺到。市民への出前講座や自治体職員向けの研修などを通じて、クマ対策の正しい方法を普及させるために力を注いでいる。

※下記はジチタイワークスVol.13(2021年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

秋田県 生活環境部 自然保護課 鳥獣保護管理班
ツキノワグマ被害対策支援センター

近藤 麻実 さん( 入庁1年目)

 

日本各地で野生鳥獣による農作物や人身被害が問題となっている。秋田県では近年、人里へのクマの出没が増加しており、昨年受理されたクマの目撃情報は900件を超えた。令和2年4月、秋田県庁にクマ対策の専門職員として入庁した近藤さんに話を聞いた。

正しい知識を広めたい。

皆さんはクマにどのような印象をお持ちですか。「かわいい」「怖い」など人それぞれだと思います。クマとはあまり縁のない三重県で生まれた私は、アフリカの野生動物に興味を持ち、獣医師を目指して岐阜大学へ入学。そこで「ツキノワグマ研究会」に入ったことを機にクマ生態や人との関わりに強い関心を抱きました。その後、大学院を経て北海道の環境科学研究センター(当時)に入所し、9年にわたってヒグマの研究に没頭。そして令和2年から秋田県の職員になりました。

クマについての見方は、人によって大きく異なります。「駆除するなんてとんでもない」と主張する方々がいる一方で、農林業への被害や集落への出没などによって、クマに怒りや恐怖を感じながら生活している方々もいます。両者の思いを理解しながら、私自身はクマとうまく距離をとり、折り合いをつけて生活するための方法を研究し、皆さんに広くお伝えしていくことが重要だと考えています。

 専門知識を地域に還元。

前職でクマの研究をするうちに、クマの知識を持って管理計画を立てたり、対策現場で実行したりする人が都道府県の中に必要だという思いが強くなっていきました。しかし、全国の自治体を見渡してみても、鳥獣対策に関して先進的な取り組みをしているのは一部のみ。大半は数年ごとに異動する職員が手探りで対応していることにもどかしさを感じていたところ、秋田県で専門職員の募集を見つけ、応募しました。

今年度から市民講座や警察・行政職員対象の研修のほか、事故の検証をするようになり、起きた事故の原因や事故を避ける方法が分かるようになってきました。これまで、住民の方々には事故報道くらいしか情報がなく、ただ恐ろしい印象だけがあったのではと思います。事故事例を紹介しながら、事故防止のための具体的な行動を伝えることで、納得・安心していただいていると感じています。

地方では過疎高齢化が進み、クマなどの鳥獣対策を進めるには、地域づくりから考えねばならない状況です。多くの方に正しくクマのことを知ってもらい、防災や教育、農業など横断的に連携することが重要だと感じています。ここ秋田で鳥獣対策のいいモデルをつくって全国へ広めるという大きな構想を抱きつつ、これからも確実にクマ対策を進めていきます。

 

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