全国でも例を見ない寄附市民参画制度と、ふるさと納税制度を組み合わせ、寄附者への還元と市の魅力向上に奮闘する、小玉さんの信念とは。
※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。
福井県坂井市
総合政策部 企画情報課 主事
小玉 悠太郎 さん
こだま ゆうたろう:2013年、坂井市に入庁。財務部課税課で国民健康保険税、個人住民税などの業務を担当。2016年には、総合政策部企画情報課で「寄附市民参画制度」にもとづく「ふるさと納税返礼品」の立ち上げに尽力。同時に移住推進、坂井市専属住みます芸人事業、シビックプライドの醸成事業に携わる。2020年、国内最大級のふるさと納税大賞「ふるさとチョイスアワード2020」において「チョイス自治体職員大賞」を受賞。現在も、ふるさと納税のほか、人口減少対策、まちづくり、地域活性化などに取り組んでいる。
預かった寄附で、まちの魅力を高め、市民の笑顔を増やすのが使命!
Q.そもそも「寄附市民参画制度」の仕組みと目的とは。
坂井市では、平成20年から寄附金の使い道を市民から募り、その決定にも市民の意思を取り入れるという「寄附市民参画制度」を行ってきました。これは、ふるさと納税制度に先駆けて始まったもので、市民の方に、寄附を通じ誇りを持って市政に参加してもらうための制度です。防災倉庫や防犯備品の設置、公園の遊具設置といった事業を対象に、市民から寄附金を募るもの。募集して目標額に達したものは、市民提案事業として実際に事業化されるという仕組みです。
市民の寄附文化の醸成になるよう、約9年間はこの取り組みを返礼品なしで行ってきました。しかし私は、市民提案事業を一つでも多く実施できるのであれば、「返礼品が寄附の入口であってもいいのでは」と考えたのです。そこで平成28年に、ふるさと納税のプロジェクトチームを発足。農業、観光、教育など各部署から集まった若手職員で提案を進め、上司の理解と協力を得て、平成29年からは、ふるさと納税における返礼品の提供が始まりました。
Q.新しい取り組みを進める上で苦労したことは。
チームを発足したとき、ふるさと納税件数ランキングで福井は47位。ふるさと納税に対し、坂井市を含め、福井県全域が盛り上がっていませんでした。チームで事業者候補のリストアップを行った後は、一軒ずつ訪問し、ふるさと納税の仕組みから説明してまわりました。高額返礼品争いなど、マイナスのイメージもあり、最初はご理解いただくのに時間がかかりました。ですが、徐々に参加したいと言ってくださる事業者が増え、当初36事業者・150品目だったものが、現在(令和3年1月取材時)では104事業者、800品目に。
昔から福井の人自身が「福井には何もない」と言っているのが悔しかったので、「これだけ豊かな特産品があるんだ!」と、県内外にPRできるいい機会にもなったと考えています。
Q.アワードで受賞した際はどういう気持ちでしたか。
「この制度は素晴らしいものだ」ということを、全国のふるさと納税担当者に伝えたいと考え、その思いを発信する方法としてアワードへエントリーしました。「自治体職員部門」で申し込んだのは、全国の先輩担当者から学んだことを、今後は私が伝える立場になりたかったからです。
私が大切にしているのは、寄附市民参画制度で培った“寄附金を預かる者の使命”を果たすこと。どのように市民に還元されるかを考え、関係者に対し透明性をもった運用に努めています。また、寄附者に対しては寄附金の使い道を徹底的に“見える化”しています。事業内容と目標額をポータルサイトで公開し、毎週達成速報を更新することで、臨場感を出しています。結果として、寄附をする7割の人がその使い道に納得して指定し、地域に貢献している実感を持ってもらえるようになりました。現在は、寄附してくださった方を坂井市へ招待するイベントも行っています。
今回受賞したことで、坂井市がふるさと納税の取り組みの見本となるよう「頑張らなければ」と気持ちを新たにしました。
私は、「ふるさと納税の担当者は、地域の魅力を一番知っているべきだ」と思っています。事業者と顔を合わせ、取材や撮影も自ら行うことで、自分のまちがもっと好きになりましたし、仕事のやりがいや楽しさを見出せました。今後もより魅力的なまちづくりで市民に還元し、ふるさと納税を通じて寄附者に市のファンになってもらえるよう、また、多くの市民に寄附市民参画制度へ参加してもらえるよう、努力していきたいです。