ジチタイワークス

沖縄県

【森田 修平さん】公務員、副業する。

沖縄から“本気で”虐待と非行問題をなくすために、様々な活動に取り組む児童福祉司の森田さん。業務内外の両輪で取り組む思いとは。

※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。

沖縄県
子ども生活福祉部 青少年・子ども家庭課
中央児童相談所 主査(児童福祉司)

森田 修平 さん

もりた しゅうへい:大学で福祉を専攻。実習で訪れた児童自立支援施設での経験をきっかけに、児童自立支援専門員として、2009年、沖縄県に入庁。以来、児童自立支援施設・児童相談所で勤務。児童自立支援施設では子ども達と寝食をともにしながら、“自立・自律”に向けた支援を行う。現在は児童相談所において、児童福祉司として子どもや保護者の相談・支援等に携わる。2017年5月、任意団体「沖縄の子どもと家族・支援者の未来を明るくする会(OCFS)」を有志とともに立ち上げ。ユニークなテーマの勉強会やイベントの開催、SNS等での情報発信を行っている。


子ども達の笑顔のためにやろうと思ったことはまずやってみる。

Q.本業と同じ分野の任意団体を立ち上げた理由とは。

これまで児童自立支援施設や児童相談所で、自分はずっと“対処”が中心だなと感じていました。もちろん問題が起きた後の対処は大事ですが、もっと未然に防げたらいいのに……と感じていたんです。そうすれば子ども達や保護者、支援者も楽になるなと。同じように感じている同僚や仲間も多くいました。その頃、全国規模の研修会を企画・運営したことをきっかけに、実行委員のメンバーと「横のつながりって大事だね」「このまま継続して何かやりたいね」という話が出て。そこから平成29年に、「沖縄の子どもと家族・支援者の未来を明るくする会(OCFS)」を立ち上げました。

 

Q.会の活動へは、福祉関係者以外の参加もありますか。

最初は業務として福祉に関わる人の参加が多かったですが、クチコミやSNSを通じて異業種の方も増えましたね。実際に、当事者である保護者が来てくれたこともありました。あるとき、会のメンバーの養護教諭が、発達支援に取り組んでいる児童のために不要なトランポリンの寄贈をSNSで呼びかけたところ、提供者が見つかりました。これにヒントを得て、子どもが必要とする物資を譲り受け、生活が苦しい世帯に無償提供する「OCFSコンテナハウス」という取り組みを、令和元年から始めました。地元紙でも取り上げられ、すぐに県民の方々から子ども服や日用品、文具、おもちゃなどが集まりました。支援機関の職員からも問い合わせがあり、支援の現場にも実際に提供を行っています。

さらに“福祉と教育の連携”をもっとスムーズにできないかと、福祉教育合同バスツアーを企画・開催。福祉現場の職員と教職員30名とで、児童相談所、児童自立支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設、少年鑑別所を視察しました。このときの視察先との調整に関しては、公務員であることの強みを存分に活かしましたね。

 

Q.副業である会の活動が通常の業務にも活きているという実感はありますか。

児童相談所が行う業務の一つに、課題のある家庭のことや保護者を分離せず、在宅で支援する取り組みがあります。ある家庭のケースでは、地域が主体となって在宅支援を行いました。偶然にもその地域には、これまでにOCFSの勉強会などに参加していた方がおられて。児童相談所と連携しつつ、保護者へのちょっとした声かけなどのアプローチに、地域の方々が積極的に取り組んでくれたんです。今までは、「どう関わっていいか分からない」と、地域に本来ある力を得るのが難しいこともありました。そのケースでスムーズに関わってもらえたのは、OCFSの活動に参加し、気軽な横のつながりができていたからだと思っています。

令和2年には、地元の新聞で児童虐待問題をテーマとした連載を半年間担当させてもらいました。幅広い世代から反響があり、情報を発信することの大事さを痛感しました。一方で、外に出て感じたのは、当事者である子ども達に必要な情報が届いていないということ。子ども達に届きやすいSNSツールを活用するなど、これから様々な情報発信を展開していきたいです。

最終的には、自分たちの取り組みを、行政に担ってもらいたい。いつか沖縄県全市町村が同じような取り組みをしていけたらいいなと考えています。

子ども達はもちろん、保護者も、支援に関わる人々やその地域の皆さんも、全員笑顔になってほしい。その思いで活動しています。

 

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