神戸市の「地域貢献応援制度」は、職員の副業を応援する画期的な内容。これを利用し、活動する秋田さんに、公務員が副業をする意義を聞いた。
※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。
兵庫県神戸市
企画調整局 つなぐラボ
特命課長
秋田 大介 さん
あきた だいすけ:2002年、神戸市に入庁。都市計画局計画部内の計画課、工務課で都市計画事業等に従事。その後、建設局西部建設事務所、都市局計画課を経て2019年より企画調整局つなぐラボ。特命課長として、社会課題解決のための役所内および官民連携のコーディネートを行っている。2016年、「NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」の立ち上げとともに副理事長に。2017年、神戸市の地域貢献応援制度を利用し、報酬をもらいながらの副業を開始。「Kobe Mural Art Project」実行委員会代表、「一般社団法人アスミー」代表理事を務め、地域活動に積極的に参加している。
“役所と企業の架け橋”に。公務員だからこそできる副業がある。
Q.地域貢献応援制度とは。利用したのはなぜですか。
平成29年に神戸市役所で始まった制度で、職員が勤務時間外で、社会性・公益性の高い地域貢献活動をする場合、報酬を得て従事することができます。私の場合は、制定前からNPO法人で活動していたので、私が制度を利用し、法人から報酬をいただく第1号になることで団体の知名度が上がればと考え、手を挙げました。公務員の中には、地域に飛び出して活動していることを積極的に発信せず、頑張っていても無報酬で働いている人が多いです。しかし、この制度を利用すれば、多少なりとも有償で活動ができます。今回の参加は、自らが先陣をきってモデルケースになることで、市職員の業務外での社会貢献活動が増えれば、という思いもありました。
現在、私が副業として参加しているのは、「須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(以下、SUBP)」、「Kobe Mural Art Project(以下、KMAP)」、「アスミー」の3団体です。
Q.詳しい活動内容を教えてください。
SUBPは、制度利用前から取り組んでいる活動です。車椅子ユーザーを主とする障害を持った方たちに、日頃難しいマリンアクティビティを楽しんでもらうことを目的に活動をスタートしており、令和3年で5年目を迎えます。これまでに砂浜専用のビーチマットや水陸両用車椅子ヒッポキャンプを導入し、多くの方に利用していただきました。今は海だけではなく、山登りやキャンプなどにも挑戦しています。
KMAPは、神戸の街中にミューラルアート(壁画)を設置することで、子どもから大人までが楽しめるアートを増やすというプロジェクトで、令和元年に誕生しました。アーティストを育てる文化が醸成され、アーティストが評価され正当な対価が支払われる街をつくることを目標にしています。プロジェクト第1弾は、今年取り壊される予定の市庁舎2号館の南北の壁面にミューラルアートを描く「2号館ありがとうプロジェクト」。資金調達はクラウドファンディングを利用しました。プロジェクトはメディアでも話題になり、現在は第2弾を考えているところです。
アスミーは、全国の公務員をつなぐオンラインサロン「市役所をハックする!」から生まれた取り組みです。災害が発生したとき、自治体職員はずっと現場に従事せざるを得ない状況になります。しかし、その職員自身も被災者であり、被災した家族がいるわけです。災害時に家族のことを心配せず復旧に全力であたれるよう、被災した自治体職員の家と家族を守るための互助システムをつくることにし、令和2年に一般社団法人化しました。こちらはまだ動き出したばかりなので、ぜひ興味のある方は参加していただきたいですね。
Q.公務員が地域活動に参加する意義とは。
私が参加している団体のスタッフからは、「ここに公務員がいて良かった」と言われることがよくあります。役所のことを知っている公務員は、とても重宝されるんですよね。例えば、団体が活動する過程で役所の許可を取ったり、協力をお願いしたりすることが多々あるのですが、そのやりとりがうまくいかない場合も多い。これは民間と役所との間に、考え方や言語のギャップがあることが主な原因なのですが、そこに公務員がいると、そのギャップを埋めることが可能になります。
また、書類作成など、市民にとってはあまりなじみのない作業でも、職務を通じて得た知識、経験を活かせば、かなりスムーズに進めることができます。団体側は、より活動がしやすくなりますし、取り組みの幅も広がる。公務員が地域活動をすることで、民間企業と役所との架け橋になることができるわけです。これだけでも、公務員が地域活動に参加する意義は十分にあると思います。
新しいことを始めるとなると勇気が必要ですが、幸い私たち公務員は生活基盤が比較的安定していて、多少チャレンジしてもリスクが少ない。だったら、仕事とは別に、興味があることを始めてみてもいいのではないでしょうか。私の場合は副業という形ですが、多くの公務員が仕事外で地域とつながる機会が増えれば、もっと社会を良くすることができると考えています。