取組概要
「簡単ゆびナビ窓口事業~ICTを活用したしんせつ窓口の実現~」は大きく2つのサービスからなる事業だ。一つは住民基本台帳カードやマイナンバーカードを利用した地方公共団体情報システム機構から提供されている「らくらく窓口証明書交付サービス」を利用したタッチパネル受付サービス、もう一つは無線通信技術を利用しタブレットを使用して、住民票をはじめとした証明書の申請書を住民が書かずに職員が操作することで作成し、同時に証明書を発行するタブレット受付サービスである。今回は、この全国初の無線通信技術を利用したタブレット受付サービスについて紹介する。
このサービスは、受付職員が住民から本人確認書類の提示を受けて申請者情報を入力し、必要な証明書やその内容について聞き取りを行うことで申請書を作成、住民票や印鑑登録証明書については証明書も同時に出力するものだ。
この方式により、住民は申請書への記入が不要となり、タブレット上への署名か出力した申請書への署名又は押印のみ、職員も必要な証明書の種類や内容を聞き取りながら申請書と証明書を作成するため、受付から証明書発行までの業務効率化を図れる上、時間短縮にもなるため、住民の待ち時間・滞在時間の短縮につながる。
取組期間
平成25年度から事業開始、平成29年度から税関係証明についても対象拡大し、現在も継続中
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
お客様満足度の向上とともに、ICTを活用して何かできないかという職場風土、さらに担当ベンダーからのタブレットを活用した住民基本台帳システム利用提案などを背景に職員で検討結果、お客様(各種申請に来られる住民)に紙に記入いただかなくて済むようにする、受付カウンターより前に出てお客様側での受付をするなどのアイデアが生まれ、それを形にするため、開発へ向けて動き出した。
記載されている字が見えにくく、また字を書くことが大変な高齢者、小さな子どもと手をつないでいたり、乳児を抱えていたりするために申請書に記載することが大変な子ども連れの方、身体が不自由なため字を書くことが困難な障がいをお持ちの方などを中心に、申請書に記入することなく職員が聞き取りながらタブレットを操作することで、必要とする証明書の申請書を作成し、住民基本台帳システムから住民票や印鑑登録証明書を同時に出力することで、お客様にも職員にも優しく、互いにWin-Winの関係になれることを目的とした。
取組の具体的内容
来庁されたお客様を受付カウンターで、また受付カウンターに来ることが困難なお客様(車いすの方や歩行がスムーズではない高齢者や障がいをお持ちの方など)については待合スペースなどへ職員が出向いて対応する。
どちらの場合もまず、必要な手続きを確認の上、来庁された申請者の情報を、本人確認も兼ねて身分証明書をもとにタブレットへ入力し、住民基本台帳システムから申請者を検索、その結果を本人とともに確認することで申請者を確定、連絡先となる電話番号などを入力後、確認した本人確認書類の種類を記録する。
その後、必要な証明書の種類や内容について、詳細な聞き取りを行いながら確認し、申請内容をお客様に確認いただいた後、タブレットの署名欄へ指またはタッチペンなどにより署名してもらうことで操作が完了する。
操作完了後、住民票や印鑑登録証明書、税関係証明書の場合は、申請書と証明書が出力され直接確認、印鑑登録申請書や戸籍関係証明書の場合は、申請書が出力され、印鑑登録処理や戸籍関係証明書の出力処理を経て確認、その後、会計を行い、お客様へ証明書を交付して終了となる。
タブレット受付サービスの画面イメージ
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
○全国初の無線通信技術利用
無線通信技術を利用したタブレット受付サービスは、全国初の取組。
○タブレット上での「自書」
タブレット上への「自書」の法的制度整理について、県を通じて総務省へ照会し、最終的に市において有効性を判断。
○システム手順は職員が考案
窓口での運用フローを職員が確認し、最適な手順を導き出し、その手順に沿ってシステム構築を依頼。
取組の効果・費用
○効果
住民にとっては、申請書に記載する必要がない上、話をよく聞いてもらえるという満足感が得られ、申請の種類によっては受付終了とともに証明書も出力されるので、待ち時間が短くなる。
職員にとっては、記載された申請書の確認が不要となり、受付手順も定型化されることで確認漏れや聞き取り漏れが減り、さらに住民票や印鑑登録証明書については証明書出力の手間が省けるため、受付から会計までの時間も短くなる。
以上から、窓口において住民も申請書に記載する必要がないことから簡単に済むとのことで喜びが得られ、お客様満足度の向上につながるとともに、対応した職員へは感謝の言葉もいただくことで職員の業務にあたるモチベーション向上にもつながるだけでなく、時間短縮や証明書出力の省力化により効率的な窓口業務の運営を行うことが可能となる。
今後、市民課窓口業務は住基ネットやマイナンバー制度など業務量の増加が予想される一方、職員数の増加があまり期待できないため、さらなる窓口業務の効率的な運営が必要となる中、このツールの利用によりその効果が期待できるものと考える。
○取組状況
住民票、印鑑登録証明書、戸籍関係証明書等
平成30年度 総発行件数 141,630件
うちタブレットによる受付件数 24,543件、全体に占める割合 17.33%
平成31年度 総発行件数 138,247件
(令和元年度)うちタブレットによる受付件数 23,393件、全体に占める割合 16.92%
住民票、印鑑登録証明書のみ
平成30年度 総発行件数 94,295件
うちタブレットによる受付件数 18,428件、全体に占める割合 19.54%
平成31年度 総発行件数 89,998件
(令和元年度)うちタブレットによる受付件数 17,511件、全体に占める割合 19.46%
※代理人による請求や第三者請求、住所が市外の方からの請求などについてはシステムを使用せず、紙の申請書に記入していただき、通常の受付を行う。
○取組に要した費用
導入費用 36,944,250円(税込)
(財源 1/2内閣府地域活性化推進室 平成25年度 少子高齢化・環境対策等復興モデル事業、1/2復興特別交付税)
運用費用 3,525,120円(税込(8%))、3,590,400円(税込(10%))
<参考>令和2年度 機器更新費用 26,818,440円→長期継続契約による賃貸借(予定)
取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
○ツールとしての導入後、使用する体制を構築することが重要
導入当初、高齢者や障がいをお持ちの方、子ども連れの方を対象としていたが、職員によりその定義が異なり、また、タブレットの使用に抵抗がある職員が使用しなくなることから、なかなか利用率の向上を図ることができなかった。
しかしながら対象を限定せず、また、基本的にゆびナビシステムを利用することを推奨する雰囲気を作ることで利用率を高めることができた。
なお、このシステムで対応できる部分とできない部分があるため、そのより分けを受付で行い、対応できないものについては、システムによらず紙の申請書へ記入してもらい、通常の受付を実施する。
今後の予定・構想
今後、さらなる利用率の増加を目指し、お客様の待ち時間の短縮、窓口滞在時間の短縮による利便性向上を図りながら、窓口業務の効率化を目指す。
他団体へのアドバイス
本市では、証明書発行と住民異動届でスペースや人員の問題から窓口を分けておらず、お客様に満足していただくために、限られたスペースと人員を効率的に活用する必要がある。
全国の自治体においても、今後も住民窓口でのさらなる業務の増加が予想される上、職員の増員はほぼ見込めないことから、現体制でいかに効率的に業務を行うことができるかが共通課題ではないだろうか。
証明書発行に際しては、「タブレット受付サービス」を活用することで、申請から証明書発行までワンオペで行うことが可能となり、その分の人員を住民異動受付・入力業務へ割り当てることができる。
このサービスはあくまでもツールであり、利用のために窓口の配置や手順を大きく変更する必要はなく、少しの工夫で利活用を図ることができる。
窓口業務の効率化へ向け、導入や利活用について検討してみてはいかがだろうか。
取組について記載したホームページ
○会津若松市ホームページ
【タブレット等を活用した「しんせつ(親切・新設)」窓口(会津若松方式)をご利用ください】
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2014022700037/
問い合わせ先
福島県 会津若松市 市民課
電話番号 0242-39-1229