ジチタイワークス

三重県津市

津市版DBO方式による公共温泉施設の再生

取組概要

・開設後30年が経過し、老朽化が進む公共温泉施設の再起を目指し、敷地全体を活用した新たな温泉施設と収益施設の整備に関するサウンディング調査を実施。
・PFI方式(民設民営)による事業提案はなかったものの、公設民営方式(DBO方式)による施設の整備と指定管理者制度を活用した管理運営を合わせることで、効率的かつ効果的な事業へ生まれ変わるとともに、地域住民・組織との連携もあり、利用いただくすべての方へのサービス向上が期待できるものとなっている。

取組期間

平成28年度~(継続中)
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

当該施設は、かの清少納言が「枕草子」で讃えた名湯榊原温泉に日帰り公共温泉施設として、健康ブームの流れに乗り、昭和63年に運営を開始した施設であり、これまで一定の利用者を維持してきたが、建築後30年を経過し、施設の老朽化が進み、再整備の検討が急務となった。また、当初から、温泉地の観光振興拠点としてだけでなく、市民の健康増進や交流によるコミュニティの推進を図る施設としての役割を持った施設として、人気を博して来たが、近年は利用者の高齢化と施設の老朽化による度重なる設備の故障により、年々利用者が減少し、運営に係る支出超過額も増加してきた。平成26年10月からは、現場の運営を民間事業者に委託し、運営経費の効率化と利用者拡大を目指しましたが、一時的な回復は見たものの、現在はその効果が少なくなってきている。

一方、榊原温泉地域においても、観光旅行形態の変化の中、温泉のみの観光では来訪者数が激減の一途を辿り、10年前には10数件存在した温泉観光旅館も現在は大小含め、5件程度に半減しており、地域としても過疎高齢化が著しく進んだ現状となっている。

このような現状の中で、施設のこれまでの役割に対する成果や今後の在り方について検討を行い、複数の目的を持った施設として、市民の健康増進とコミュニティの推進の2つの目的については、これまで十分に果たして来ており、施設の目標を達したと思われるが、温泉観光地域の振興としての目的は果たせなかったことから、今後は、温泉観光地域の振興を大きな目標に再整備することとして事業を推進してきた。

事業の推進に当たっては、PPP(官民連携)により、民間活力を十分に活用し、ノウハウやアイデアを募集するため、サウンディング調査としての関心表明を広く民間に募集し、出来る限り民間の意向を反映できるよう自由度を高めることに重点を置いて検討してきた。

また、地域の中でも、この施設の再整備を地域振興の絶好で最後の機会と捉え、整備に合わせた地域づくりに真剣に取り組み始めており、地域、民間事業者、市が一体となった施設整備及び施設運営と地域づくりの取り組みの推進を図っているところである。

取組の具体的内容

◇平成28年度

老朽化とともに利用者が減少し、歳出超過額が急増したため、平成25年10月からフロント業務等の現場運営を民間事業者に委託し、運営改善を図って来ましたが、その委託期間の最終年度となったことや開設後30年を経過し、更に老朽化が進み部分的な設備の休止が増加したことから、今後の在り方を検討する必要があったため、施設そのものの現状調査、これまでの運営状況調査、利用者調査を行い、今後の在り方の検討に着手した。

【取り組み内容】
 次年度に施設現状調査を行うための予算化の準備とともに利用者調査としてのアンケート調査を実施
 〔主なアンケート調査の結果〕
 ・利用者は、市内55%、市外45%の割合
 ・65歳以上の高齢者の利用割合が70%以上を占める
 ・地元榊原地域の利用は4%
 ・使用料は、50%以上の利用者が安いと感じている
 ・障がい者用駐車場が少ない
 ・駐車場から施設までの高低差が10mと急勾配のため、高齢者の利用に支障がある
 ・レストラン等の飲食部の充実及び温泉利用者以外の利用も希望
 

◇平成29年度

施設の建物及び機械設備の現状調査及び運営状況調査を実施し、調査結果に基づき今後の在り方を検討

〔施設現状調査の結果〕
 ・躯体構造は、今後20年程度利用可能
 ・屋根、外壁、内壁、内装は、改築が必要
 ・機械設備は、更新及び修繕が必要
 ・現在の利用状況に合わせた規模での新築と現施設の改修との事業費比較は、ほぼ同等

〔運営状況調査の結果〕
 ・光熱水費の価格変動が、支出額の増減への影響が大きい
 ・民間事業者に現場運営を委託したことにより、歳出削減効果はあったが、委託事業であるため利用者増や歳入増には繋がらなかった
 ・施設の老朽化によるロスが多くなって来ている
 ・平成28年度収支では、使用料を50円値上げすれば支出超過が解消可能

〔在り方検討結果〕
 ・榊原温泉の観光振興の役割が果たせる施設として継続し、地域活性化の拠点となり、地域と連携する。
 ・高低差があり、高齢者の利用が困難な現在の位置から、駐車場の高さと同じ位置へ、必要最小限の規模として移転新築する。
 ・現在の利用状況に応じた規模により温泉施設を整備するとともに、施設用地全体を活用した附帯施設を整備し、飲食施設や販売施設などの自主事業に活用することで利用者及び地域への来訪者の増加と利益の向上を図る。
 ・施設の整備及び運営は、民間のノウハウやアイデアを活かすため、官民連携(PPP)手法により、民間活力の導入を図る。
 ・PFI事業などの事業手法により、運営期間は、10年から30年とする。

◇平成30年度

施設の在り方検討の結果に基づき、サウンディング調査及びPPPの可能性調査となる関心表明を募集し、公設整備と官民連携整備との事業手法を比較検討

〔募集概要〕
 ・募集目的:効率的で効果的な官民連携手法を検討するため、民間のアイデアによる事業提案を募集
 ・募集期間:平成30年6月4日から平成31年1月31日まで
 ・想定した募集対象者:
温浴施設事業者、飲食事業者、物産販売事業者、キャンプ場運営事業者など、温泉施設と自主事業施設を実施する意向のある民間事業者として、温泉の運営実績は問わない

〔募集(提案)結果〕
 ・民間事業者から4件の応募
 ・事業手法は、4件ともDBO方式(公設民営)による事業提案
 ・整備に係る資金(イニシャルコスト)は、津市が負担(公設)し、施設の設計・建設・管理運営(民営)は民間事業者が実施
 ・附帯施設の整備による自主事業の実施により、集客と収益の向上を図る
 ・運営収益の向上により、経常収支の損失を圧縮
 ・地域の活性化へも貢献

〔検討結果〕
 ・事業手法:
公設民営(DBO方式)
津市は、設計及び建設に係る費用を負担し、施設を保有する
事業者は、設計、建設及び整備後の施設を指定管理者として管理運営を行う
管理運営期間は、10年から30年
 ・事業者決定方法:公募型プロポーザル方式

◇平成31年度(令和元年度)

 公募型プロポーザル方式により、DBO方式による事業者の募集及び最優先交渉権者の決定
〔募集概要〕
 ・募集期間:令和元年9月9日から令和2年2月28日まで
 ・整備期間:令和2年7月から令和5年11月(予定)
 ・運営期間:完成後から10年以上最長30年
 ・対象業務:調査設計業務、既存施設解体撤去・処分及び撤去後の整備工事、新施設の建設工事、整備後の管理運営業務
 ・応 募 者:単独事業者又はコンソーシアム(複数の事業者が役割を明確に分担して事業を実施する連合体)により応募
 ・事業概要:
温泉施設の整備は必須、附帯施設の整備は任意
地域との連携による地域貢献を必須
温泉施設の管理運営費は、利用料金収入を充て、指定管理料は、現在の経常収支の損失より低額又は“ゼロ”
自主事業による経常利益から施設整備費用に見合う金額又は一部を運営期間に津市に納付
津市が初期費用を負担することで民間事業者の参入を活性化

〔募集結果〕
 ・民間事業者によるコンソーシアム4組の応募
 ・4組の内、3組の提案は、指定管理料0円+利益の一部を施設賃貸借料として運営期間に納付

〔審査結果〕
 ・募集要項の検討期間の延長による募集開始の遅れ(1か月)及び新型コロナウイルス感染症拡大による審査委員会の延期により、次年度へ事業者の決定を延期

◇令和2年度

 最優先交渉権者の決定及び交渉、事業者の決定

〔審査結果〕
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、プレゼンテーション審査をDVDにより、各審査委員が在宅で審査を実施し、審査委員会として最優秀提案及び優秀提案を決定し、最優秀提案の応募者を最優先候補者、優秀提案の応募者を次順位候補者にとして津市へ提言

〔最優先交渉権者〕
 津市は、審査委員会からの提言に基づき、最優先候補者を最優先交渉権者に次順位候補者を次順位交渉権者に決定
 現在、最優先交渉権者と事業者の決定となる基本契約の締結に向けて交渉中

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

◇施設現状調査

施設のハード部分は、建築コンサルへ調査を委託し、建物、機械設備等施設の現状調査を行うと同時に調査結果に基づき、施設整備に向け新築又は改修の試算を行い、施設整備の方向性の検討材料とした。

運営部分は、担当者に加え、平成27年度から津市独自の取り組みである職務経験者採用職員(元銀行融資担当職員)の協力を受け、利用者の状況や収支状況等の調査を基に分析を行い、運営に係る事業の方向性の検討材料とした。

また、施設利用者や地元市民へのアンケート調査を実施し、それぞれの意見や要望などを聞き取り、今後の事業の進め方の検討材料とした。

◇関心表明の募集

現状調査等に基づく検討により、民間のノウハウやアイデアによる施設整備事業費の効率化、観光施設としての集客力及び経常利益の向上を図る事業のサウンディング調査と官民連携(PPP/PFI)の可能性調査を関心表明として一括に実施し、整備経費の削減、公共施設を活用した民間収益事業のニーズ、集客力の向上による温泉観光地域の活性化、経常利益の向上による施設維持管理費の大幅な削減が図れる事業の可能性を求めた。

関心表明の募集と同時に市内の金融機関を中心に事業募集セールスを行い、取引のある事業者に周知してもらった。また、温浴施設運営事業者を始め、飲食関係、レジャー施設関係など可能性のあると思われる事業者を訪問又は電話等によりセールスした。加えて、大手製薬会社へもダイレクトメールによりセールスを行った。

◇津市版DBO方式による事業(者)募集

関心表明の応募結果により、概ね関心表明の目的どおり、官民連携手法による事業実施ができるとの判断ができたため、イニシャルコストは津市が負担するがPFI手法に限りなく近い、自由度の高い内容で公募した。また、運営期間も指定管理期間を10年以上30年の期間とした。

募集する事業の考え方としては、現在の高齢利用者に配慮しつつ、休日はファミリー層や若者の利用が促進できる施設とし、出来る限り利用料金は現状維持を目指した。また、安定した経営に資するため、榊原温泉の旅館等の経営を圧迫しないことを条件に集客と収益が見込める自主事業を展開できる附帯施設の整備の提案も求め、利用料金収入により整備後のランニングコストに係る指定管理料を現在の経常収支額より低額又は“ゼロ”を目指すとともに経営利益の中からその整備費用に見合う金額を施設の賃貸借料等により、津市へ納付する提案も求めた。

取組の効果・費用

・近年の施設運営に係る経費は、施設の老朽化に伴う人気浴槽の一時的な休止などによる利用者の激減とともに修繕料の増加、温泉配管からの漏水等による温泉源泉の使用料の増加など光熱水費の増加により支出超過額が年間2千万円近くと年々増加しているが、今回の整備により、整備後のランニングコストが、20年間(最優先交渉権者の提案期間)ほぼゼロになる。
また、加えて利益の中から、附帯施設の整備費とほぼ同等分の津市への納付(最優先交渉権者の提案)が見込まれることから、イニシャルコストについても、後年度において市の負担軽減を図ることができる。

・設計から建設工事を民間に一括で任せることにより、事業実施期間の短縮や工事経費の縮減にも繋がり、公共施設として発注するより有利な点が多い。

・これまでに要した費用は次のとおり。
 施設状況調査業務委託料(ハード調査分)=5,292,000円〔H29〕
 のり面点検調査業務委託料=1,134,000円〔H29〕
 H29計=6,426,000円
 現地測量調査委託料=1,188,000円〔H30〕
 関心表明受付窓口表示板製作委託料=21,060円〔H30〕
 H30計=1,209,060円
 事業アドバイザリー業務委託料=2,640,000円〔R1〕
 参考地質調査委託料(ボーリング調査2本)=1,433,300円〔R1〕
 事業者選考審査委員会経費=277,112円〔R1〕
 R1計=4,350,412円
◇合計=11,985,472円

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

・関心表明の募集という形で、興味のある企業等を募集したが、公募の意図が上手く伝わるかどうか、また、興味を持ってくれる企業が多くあるかどうかなど、応募者の有無や意図通りの提案があるかなど、募集内容をどのように周知するかが課題であった。⇒市内の企業へのセールスや関連性のある事業者などへのダイレクトメールにより周知するとともに、市内の都市銀行支店や地方銀行を回り、直接、融資担当者などに説明して、取引のある企業に周知をお願いし、興味のある企業を紹介してもらい、その企業を訪問し説明したことにより、数社に興味を持ってもらえた結果、最終的には4者の応募があった。

・事業者募集においては、関心表明の提案を基本としたものの、運営利益の還元を評価の重点項目としたため、関心表明同様に応募者の有無が心配であった。⇒関心表明のあった企業や関心表明時に興味があった企業などにダイレクトメールにより募集要項を送付し、応募への興味を持ってもらうこととした。結果、関心表明応募者3者と新規応募者1者の4者から応募があった。

・事業手法は、公設民営方式となり、DBO方式により、設計、施工、運営を一括で委ねる方式ではあるものの、PFI手法とは違い、津市が発注する方式であるため、公共工事ならではの制約などにより、スピード感や自由度など民間活力活用のメリットが薄れる懸念があった。⇒市の行政経営部門や建設部門、契約部門などとの庁内協議により、PPPの趣旨の下、出来る限り民設民営に近い手法として、民間活力を少しでも活かせるよう、自由度の高い事業手法により募集することができた。

・運営について、指定管理者制度による利用料金制により運営することとしたが、市の指定管理マニュアルにおいては、その期間を基本的に3年~5年としていた。⇒施設の性格、事業の性質とともに今回の事業は、設計、建設から運営までを通じて、効率的で効果的な施設整備と運営を行うことを考えた事業であることを基本に市の行政経営部門と詰め、民営のメリットを最大限に活かすため、10年から30年の期間で募集することができた。

今後の予定・構想

・本年度(令和2年度)において、9月補正予算に事業費を計上する予定であり、決定した最優先交渉権者との交渉により、9月末までに基本契約を締結して、10月から設計業務に着手する予定で進めている。

・スケジュール的には、調査設計を令和2年10月から令和3年6月に行い、建設工事は、令和3年8月から令和4年6月までとして、令和4年9月運営開始の予定で、以降20年間の運営を行う。

・現在、当該施設の地元地域である「榊原温泉地域」においても、この機会を地域活性化の最後のチャンスとして、地域づくりに着手したところであり、当後施設及び施設運営者と連携協力を図り、地域を挙げて榊原温泉への来訪者の増加、榊原温泉地域の活性化を目指して取り組みを進めている。今後は、地域、施設運営者、市が連携協力して、この取り組みを成功させ、榊原温泉地域の活性化を目指して行く。

他団体へのアドバイス

・公共施設の整備は、PPP/PFI手法の活用により、民間活力の導入が増加してきたとはいえ、公共事業が故に課題も多いと思う。特に、今回のように規模的にPFIとするには規模が小さいが、現在の公共事業としては高額となる事業に民間活力を導入するためには、DBO方式が最適というより、この方式を選択せざるを得ないものと思われる。その中で、公共発注しながらも民間のメリットを最大限に活かすため、少しでもPFIに近い手法とするためには、公の中で、それぞれの専門的な部門が前向きに協議し、その手法を定めることが唯一の方法であると思う。徐々に変わって来てはいるものの、昔から公共は縦割りが強く、横の連携を苦手としてきましたが、新型コロナウイルス感染症による新しい生活の時代に、いろいろなことが変わる必要がある中で、今後はこういう部分も変わっていくところとも思う。公共と民間がそれぞれのメリットを上手く共有していける手法をいろんな行政事務で活かせるようになればと思う。

取組について記載したホームページ

・現在の施設の状況と関心表明及び事業者募集に係る情報については、津市ホームページ

に掲載している。

・地域の取り組みについては、現在、地域の取り組みの中で新たなホームページの作成中である。

問い合わせ先

三重県 津市久居総合支所 地域振興課
059-255-8851
 

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