「何でこうなってるの?」「もっとこうならいいのに」毎日仕事をする中で、頭をよぎる疑問や悩み…そんな「モヤモヤ」を、一歩先ゆく公務員の皆さんに解決して頂く企画。
第12回は、日々の業務に忙しく、企画や政策立案にかける時間がないという悩みへの回答を、福岡県糸島市の岡祐輔さんに執筆頂いた。
【今回のモヤモヤ】
「通常業務で手一杯、企画・政策を立案する時間も余裕もありません」
これからの自治体職員は、「企画力や政策立案力が必須!」とわかっているものの、正直、通常業務でいっぱいいっぱいで、とてもそんな時間も余裕もありません。どうしたら時間を捻出できるのでしょうか…。
通常業務が忙しくて、「考える時間がないんです!」「いつ分析しているんですか?」といった本当にリアルな現場のお悩みを耳にします。しかし、「悩みのあるところに、改善のチャンス」が眠っています。ということは、目の前に企画のチャンスがあると思いませんか?
その考える時間がないことを改善することも一つの企画です。忙しいにも原因があるので、それを発見して解決する改善策を企画しましょう。
話は変わりますが、私はカレーライスが大好きで、小さい頃はキレンジャー(昔の戦隊モノの黄色キャラ。気は優しくて力持ちで、いつもの喫茶店のおやじさんのところでカレーライスを食べていた)と呼ばれていました。
まだカレーライスが嫌いな人にはあまりお会いしたことはないのですが、もしカレーライスが嫌いだとして、その嫌いな原因を調べようとしたらどうでしょうか。味?におい?色々ありますが、さらにその理由には、食材、調味料、調理器具、作り方などの要因が考えられます。
お伝えしたかったことは、忙しい仕事を分解して考えることです。
あなたは何を担当していますか?
その中で最も事務量の多い業務はどれでしょうか?
最も事務量が多い業務の中でも、年や月の時期的なもの?日々の定型業務?それとも移動時間が多いのでしょうか。
でも「分解する」と漠然としたものがより具体的になります。このとき「ボリュームが大きいもの」「手をつけやすいもの」「成果が出やすそうなもの」を見つけましょう。少量の業務量で、利害関係者が多く、費用や時間がかかり、相当複雑な業務のようなものはなるべく後回しです。時間を生みだした後に企画しましょう。
では、業務の分解の仕方をお教えします。
まずは業務の流れを鎖に分けてみます。例として、住民票の交付事務を考えます。インクや用紙の調達事務、案内や受付業務、書類の確認、後対応、広報活動など(これ以外にも入力作業や他機関への取り次ぎといった多くの事務があると思います)、より細かく区切って考えてみてください。
そして、今回は自分の業務にかかっている時間は、顧客の対応時間に置き換えることができ、その各工程にかかる時間と費用を入れてみます。
「忙しい」と漠然としていたものが、視覚化され、手が付けやすくなりました。そこで「外部に委託できないか」「間に何か追加できないか」「2つを統合できないか」「その行程そのものを省略できないか」「機械やシステムに変えることができないか」「ほかの人と分担できないか」といったことを考えます。
受付から後対応まで自動交付機に変えてみようと考えれば、1人当たり19分減らすことができる。コストも380円減らせるなど効果もわかり、導入後もどのくらいコストが減らせたかを検証できます。
これを提案することは十分、企画・提案と呼べるのではないでしょうか。しかも残業が減ったり、新しいほかの企画を出す時間を増やしたりすることができるようになり、一石二鳥です。
実は私も異動したばかりで、ふるさと納税の問い合わせが多く「寄附証明書は、いつ届くのですか?」「ワンストップ特例申請書は、ちゃんと受理されていますか?」など、ほかの業務も兼務している中で、電話対応や取り次ぎに多くの時間を取られ困っていました。この書類発行業務は外部の事業者に委託しているにもかかわらず、です。
市が寄附者に書類を届ける行程を考えると、ポータルサイトで寄附を受けた後、書類を発行し、封詰めし、発送し、寄附者に到着します。そこで、ポータルサイト上の連絡先はどこになっているか(外部委託)、書類を送付する前にメールでお知らせできないか(追加)、書類・封筒に記載された連絡先はどうなっているか(外部委託)などを確認すると、サイトにも、書類にも、封筒にも市の連絡先が記載されていました。
直接委託先の事業者に連絡してもらった方が寄附者も早く対応してもらえます。しかも、量は多く、手がつけやすいことです。実際に大きく業務負担を減らすことができ、その分、寄附額を向上させる別の業務やそのほかの企画に時間を割けるようになりました。
また私は働きながら大学院に通っていましたが、今回の相談と同じように、社会人の皆さんが学びをあきらめる理由は、時間の捻出が最もネックになっているからだと思います。私は近くの大学院を選び、さらに職場における大学職員の出向チャンスをいただけたことで通学時間を大量に減らしました
また妻の育児休暇中しかないと考え、家事・育児の時間を軽減させてもらい、必修以外の選択科目は受けたくても我慢して単位なしのWEB学習をするなどして、家庭の時間に当てたり、学習効率を上げたりといったことをしていました。
日々の行程のどこかを省いたり、外部や機械に任せたりするなどの手を打つしかありません。しかしそれは闇雲でなく、流れを分解することで、その部分ごとの打ち手が何かしら見えてきます。
今はコロナのおかげ?によって、WEBで可能にできることも増えました。忙しくて余裕がないときは、その忙しいを少しでも解消するため、改善の企画をしてみてください。ちなみに、この鎖の考え方は「バリューチェーン分析(マイケル・E・ポーター)」という手法を利用したものです。ぜひ仕事を分解して役立てていただければ嬉しいです。
そして最後になりましたが、今回(3回目)で最後の記事です。これまでお読みくださった皆さん、本当にありがとうございました。
岡 祐輔(おか ゆうすけ)
糸島市企画部経営戦略課主任主査。MBA(経営修士)。
2003年に福岡県二丈町(現・糸島市)に入庁。民間の経営手法を公共経営に活かすため、仕事の傍ら、九州大学ビジネススクールに飛び込み、MBA取得。2016年に「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生担当大臣賞を受賞。受賞した政策を実施した「糸島マーケティングモデル」は「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2018」で地方創生賞(コト部門)を受賞。これらの功績により、地方公務員アワード2018を受賞。著書に 『スーパー公務員直伝! 糸島発! 公務員のマーケティング力』 (学陽書房)「地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略」(実務教育出版)がある。
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