ジチタイワークス

愛媛県西予市

宇和米博物館~LOCA PROJECT~

取組概要

愛媛県西予市に所在する宇和米博物館。地元では、「米博」の愛称で呼ばれている。建物は昭和3年(1928年)に建造された旧宇和町小学校校舎を移築し、平成3年(1991年)に開館した。約80種類の稲の実物標本や宇和地方で使われていた農耕具など、米に関する資料を展示している。
しかし、博物館としての利活用では入館者数が伸び悩んでいたことから、平成27年(2015年)総務省の「公共施設オープン・リノベーション マッチングコンペティション」を活用し、展示、閲覧型の文化施設から、「まち」に活力を取り戻すため「しごと」を生み、「ひと」を呼び込むための「学び舎」として現役復活の施設となるよう『LOCA-PROJECT』を進めることとした。
※LOCAとは、「廊下」と「ローカル(=田舎)」、「濾過」、「スペイン語のクレージー」に由来しており、地域振興に係る新たな挑戦をするという意味。



リノベーションされた施設では、サテライトオフィスやコワーキングスペースとして再生され、オフィスの利用者や宇和米博物館の来館者、そして地域住民がつながり、新たなコミュニティが生まれる場所としてさまざまな役割を担っている。現在は、上記サテライトオフィス等としての活用はもちろん、隣接する第2校舎には愛媛大学地域協働センター南予が入居し、新たな学び舎の拠点施設として生まれ変わった。

LOCA-OFFICEのホームページより

取組期間

平成27年度~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

入館料(収入)に対して管理経費の割合が大きいこと、展示閲覧型の博物館として入館者数を増加させることに限界があるなどの課題があがっていた。そこで、まちづくりの拠点施設として、「まち」に活力を取り戻すために「しごと」を生み、「ひと」を呼び込むための「学び舎」として復活(現役復帰)させることを目的に、用途や機能を一部変更して、性能を向上させたり価値を高めたりする「リノベーション」事業に取り組んだ。

取組の具体的内容

●平成27年6~7月
 ・総務省の「公共施設オープンリノベーション事業(マッチングコンペティション)」により、民間等からアイディアを募集の実施

●平成27年7月
米博物館活用について、有志によるワークショップを開催

●平成27年8月
民間事業者から米博物館の新たな活用用法について提案を受ける

●平成27年9月
民間事業者と西予市による協議を重ね、提案がコンペティションで高い評価を受け、実証事業として(国の補助事業として)採択

●平成27年11月
新たな施設の利活用方法として、インキュベーション施設、コワーキング施設、ICT関連企業のサテライトオフィス、ゲストハウス(簡易宿泊施設、お遍路さんも利用)、カフェの設置、米文化を伝える部屋(米博物館の機能)、研修室(学校としての教室風景を残す)等とし、リノベーションを進める

●平成27年12月
総務省と西予市が委託契約締結

●平成27年12月~平成28年6月
市民、議会、市文化財保護審議会等の関係者と詳細な利活用の方法について協議

●平成28年8月10日
地方創生交付金活用を活用し、カフェのオープンに向け、焙煎機設置、一部防寒の工事実施

【焙煎機の導入目的について】
・焙煎機については、米博物館の立地条件などを鑑みると、他の(公設、私設の)カフェと差別化ができなければ、米博物館のカフェには多くの利用者が見込めないと判断し、運営の目玉になるものとして導入
・近年、カフェブームなどで「おいしいコーヒー」に注目が集まっている。焙煎機の調整で、「濃い・薄い・深い・甘い」コーヒーが味わえるため、焙煎機が目玉になり、米博物館の利用者の掘り起しにつながる。
・こだわりのカフェがあることが、米博物館をサテライトオフィスや会議室などとして利用する企業等にメリット(相乗効果)がある。
・焙煎機は、あくまで市の備品として取り扱うので、指定管理者だけでなく、(個人・グループ問わず)焙煎を希望する市民の方にも利用してもらうことも想定

●平成28年10月
指定管理者の公募開始し、一般社団法人ZENKON-NEX(代表理事 齊藤正)決定

●サテライトオフィス、コワーキングスペースとして利用開始

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

地元の方に親しまれてきた公共施設を、民間事業者の新たな発想とアイディアにより、新しい学びの空間として、利用価値を変えることができた。
平成27年度から推進してきたリノベーションによる相乗効果により、令和元年10月には隣地に設置している校舎には、地域の産業や人材育成、まちづくりなど、愛媛県南予地域全体の課題解決に向けた研究機関として「愛媛大学地域協働センター南予」が設置され、米博物館全体が学びの空間として生まれ変わった。

取組の効果・費用

●事業実施前後の利用者数
・指定管理者運営前 H27:12,494人 H28:12,362人
・指定管理者運営後 H29:15,131人 H30:16,172人 H31:19,240人
実施後の方がより多くの利用者を呼び込んでいる。

●収支について
【収入】
・指定管理者運営前(H25年度から27年度)の収入(入館料有りの時代)3年平均:755,052円
・指定管理者運営後(H29年度から31年度)の収入3年平均:5,456,154円
【支出】
・指定管理者運営前(H25年度から27年度)の支出3年平均:8,327,886円
・指定管理者運営後(H29年度から31年度)の支出3年平均:13,920,911円

●オフィスの利用者実績
・市内企業 H30.1月~ 
・東京都IT企業 ※H30.6月~ 
・GIS地理情報システム関連業務企業、H30.2~(コワーキングスペースを利用)
・H31.4~ 個人A:ネット販売やマーケティング(コワーキングスペースを利用)
・H31.5~ 個人B:イベントでスペース利用(コワーキングスペースを利用)
以上、3企業、2個人が入居し、米博物館を活用。

●カフェ利用等の実績
米博のカフェ利用、焙煎体験などを経て愛媛新聞でも紹介された方等3件のカフェ起業家との関わりを生んでいる。

●米博物館と愛媛大学とのかかわり
令和元年10月から愛媛大学地域協働センター南予が第二校舎に開設した。学生や先生方が出入りされる中で米博物館利用企業との連携が実現し新しい「モノ」が生まれ、仕事が生まれる環境が創造していくよう米博物館として関わっていくことが重要になっている。今後は、市民、愛媛大学、米博利用企業、行政が連携しての各種講座などを企画するなど、新たな展開に向けた相乗効果に期待ができる施設になった。
【下図】(愛媛大学地域協働センター南予のホームページより)
南予9市町(大洲市、八幡浜市、宇和島市、西予市、内子町、伊方町、鬼北町、松野町、愛南町)をそれぞれの代表的な風景の写真で円状に配置して、南予地域の活性化の機関として、真ん中に「地域協働センター南予」を位置付けている。これらの地域間連携を促進することで南予地域全体の活性化に寄与していきたいと思う。

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

これまでの施設の機能が大幅に変わるため、市内外への方に認識してもらうのに時間がかかった。

今後の予定・構想

木造校舎過ごすことができる愛媛県(日本)のどこにもない場所として、自宅(第一の場所)でもなく、職場(第二の場所)でもなく、その間にある自分のお気に入りの場所(第三の場所)とも違う、人と人のつながりを大事にした、フォースプレイス(第四の場所)として売り込み、利用者増につなげたい。

他団体へのアドバイス

地方自治体の公共施設を取り巻く社会経済環境は大きく変化してきており、公共施設の整備や維持管理のあり方が大きな転換期を迎えている。単に公共施設の総量の削減を目的とした廃止という議論ではなく、働き方が大きく変革を迎えている中、地方の公共施設は地域産業の振興や人材育成など、官民連携により、新たな活用方法が見い出せる可能性がある。

取組について記載したホームページ

【参考1】米博物館のHP http://komehaku.jp/
【参考2】愛媛大学地域協働センターのHP http://ccr.ehime-u.ac.jp/rccn/

問い合わせ先

愛媛県 西予市 経済振興課
電話番号 0894-62-6408

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