生活習慣病重症化の危険因子となり得る「肥満症」は、まだ一般的に認知度が低い※という。そんな中、春日井市では人間ドックなどの結果をもとに、高リスク者に対するアプローチを検討。かかりつけ医師や健診の保険指導を通じて適切な治療につなげる仕組みづくりに挑戦する。
※ノボ ノルディスク ファーマ 令和6年 「肥満」と「肥満症」に関する意識実態調査より
【慢性疾患のリスクが高まる現状を打破するための対策とは?】
(1)【インタビュー】健康寿命の延伸を目指して、慢性疾患に立ち向かう。
(2)始まっています!新たな対策【肥満症】←今回はココ
(3)始まっています!新たな対策【非ウイルス性肝疾患】
(4)慢性疾患対策をもっと知るためのQ&A
※下記はジチタイワークスPICKS(2024年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
愛知県春日井市
健康福祉部
左:部長
神戸 洋史(かんべ ひろふみ)さん
中央:健康増進課 課長補佐
川口 良子(かわぐち よしこ)さん
右:健康増進課 課長
兒島 康万(こじま やすかず)さん
生活習慣病の減少に向けて、模索をしていた中での出会い。
厚生労働省による「健康日本21(第三次)」が令和6年度から始動した。これに合わせ、同市では既存の健康増進計画を「心と体のかすがい健康計画2035」としてアップデートするために、内容の検討と過去の施策の評価を実施。そこで市として取り組むべき課題が見つかったと兒島さんは話す。「過去5年間を振り返ったところ、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロームなどの項目で、目標としていた数値を達成できていませんでした。そのため、何か新しい施策を始める必要性を感じていたのです」。
ちょうどその頃、市内の肥満症専門医から「一緒に肥満症の周知啓発事業に取り組みたい」といった提案を受けた。「当時は私もその病気を知らず、治療を要するものだという認識もありませんでした。話を聞くと、製薬会社であるノボノルディスクファーマ(以下、NNPL)と協働し、肥満症対策として病気の啓発や受診勧奨を行う新たな事業でした」。
肥満症は、同市が課題としていた高血圧や糖尿病などの疾患とも密接な関係がある。しかし、国内では認知度が十分でなく、専門医療機関が限られていることもあり、適切な診断や治療を受けられていない状況だという。これが課題解決のチャンスになるかもしれないと考えた。「肥満症は治療が必要な病気で、生活習慣病重症化につながるリスクがあることを知らない市民が、おそらく大半でしょう。周知啓発を行うことで、市民が病気に対する知識を得て、健康意識が向上すれば、まち全体の健康増進にもつながるだろうと思ったのです」。こうして、肥満症の受診勧奨に向けた取り組みがスタートした。
市長からのアドバイスを受け、医師会とも合意形成を進める。
提案を受けた後、兒島さんは部内で相談。この話を聞いた部長の神戸さんはこう振り返る。「前例がなくても、意義のある事業は積極的にやった方がいい。健康課題の解決に先駆的に取り組むなら、このチャンスを逃さずに進めるべきだと判断し、すぐに副市長に事業のプレゼンを行うことにしたのです」。
しかし、最初は取り組みのメリットをうまく伝えられず、承認が得られなかったのだという。そこで2人は同社の協力を得て、プレゼン内容をブラッシュアップ。再び副市長に、この事業が市民の健康を守ることや、将来的な医療費削減につながることを伝え、2回目の説明で同意を得たという。さらに、市長にもプレゼンを実施。市長からは“医師会の理解を得て、地域全体で取り組む必要がある”といったアドバイスがあり、それを前提に事業を正式に進めることが決定した。
その後、医師会へ事業説明に出向くと、活発に意見交換がなされ、ポジティブな議論が交わされたと川口さんは語る。「市民への周知啓発を十分に行うことや、若い世代にも情報が行き届くようにすることなど、有意義な助言をいただきました。その上で、“市民のために、しっかり連携して取り組んでいく”という同意が得られたのです」。
実は、この事業説明の直前に医師会の会長や理事を直接訪問し、詳細な説明を行っていたと兒島さん。「説明会当日は時間の都合もあり、伝えられることが限られています。誤解などが生じないよう、事前に事業の目的や必要性を丁寧に伝えました」。こうした地道な努力が功を奏し、医療機関との協力関係を構築した上で、実施に向けて歩みを進めていったという。
健康づくりの取り組みを続け、幸福度の高いまちを目指す。
同市では、令和6年度中に、本格実施前のパイロット事業を行う予定だ。この段階では、市が行っている人間ドック受診者を対象に、BMIが35以上かつ医療機関を未受診の市民に対して受診勧奨を行う。その結果をもとに、受診勧奨の対象者となる基準を定め、来年度からは本格的に事業を展開する計画だという。受診勧奨の具体的な方法について、川口さんは「以前から当市では、特定健診の受診率向上などに向けて独自の施策を行ってきました。そのノウハウも活用して、今回の仕組みづくりを進めていきます」と熱意を見せる。
また、前述の通り肥満症の認知がまだ十分に広まっていないため、「まずは啓発に努めなければならない」と、兒島さんは力を込める。「肥満症は、治療が可能であるということを広めたい。その部分は同社と協力して、正確な情報発信を心がけながら、受診率が向上するような策を打っていこうと考えています」。
この事業は中長期的なチャレンジになるが、肥満症や関連する様々な疾患の予防は、社会保障費を削減するという副次的な効果も期待できる。ただし、同市がゴールに見据えているのは、健康増進計画の基本理念である“健康寿命の延伸”だ。神戸さんは「まちの幸福度の向上は、市民の健康あってのもの」としつつ、次のように締めくくってくれた。「市民の健康づくりは、小さな取り組みの積み重ねが大事です。この施策もその一つ。一歩ずつ結果を積み上げて、ウェルビーイングに貢献する先進事例になっていけたら……と考えています」。
お問い合わせ
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
医療政策・渉外本部 ローカルマーケットアクセスグループ
TEL:03-6266-1000(代表)
E-mail:JPHC_LMA_REQUEST@novonordisk.com
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