バイオガスプラントの余剰熱でチョウザメの飼育に取り組む鹿追町(しかおいちょう)。企業などの前例はあるものの、行政として取り組むのは珍しいという。飼育10年目の今、キャビアの販売は目前に。入庁直後から担当する鈴木さんに、新規事業をゼロから発展させる心得を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
北海道鹿追町
商工観光課
商工労政係 鈴木 綾さん( 入庁11年目)
チョウザメ担当になるまでは、魚卵全般を好んで食べる方ではなかったという。「小まめに水を換えるなど飼育環境を整えると、生臭さが軽減されることが分かりました。私でもおいしく食べられるキャビアをつくります」。
未経験で飼育の主担当に。
第一志望だった鹿追町の職員になって1年目で、チョウザメの飼育担当になりました。帯広畜産大学の卒業ということで、町長から直接指名されたものの、大学で専攻していたのは農業土木です。生き物は好きなので抵抗はありませんでしたが、誰も取り組んだことのない新しい事業を任されることへの不安はありました。まずはチョウザメの基本を学ぼうと、飼育や研究を行う道内の大学・企業などに視察に行きました。一般的な魚の飼い方をチョウザメの特徴に置き換えながら、餌やりや病気の対処法などをまとめて飼育マニュアルを作成。キャビアが取れることを目標として、平成26年に飼育をスタートしました。
最初は手探り状態で、専門機関に相談しながらでしたが、3年ほど経つと飼育が安定し、人工ふ化や雌雄判別などができるように。300匹から飼いはじめて、今は約6000匹に増えています。平成30年に北海道胆振東部地震が起きた際は、2日間にわたり全域が停電。水槽に空気を送れなくなると、酸欠死させてしまいます。そのため通常の災害対応業務と並行して、発電機を起動させたり魚を移動させたりと安全確保に徹しました。その後も、台風など災害が起きるたびに魚たちの安全を守りながら、現在は年齢ごとに約50の水槽を管理しています。
前例踏襲ではなく発展を。
飼育開始当初、生後8年ほどでキャビアが取れると説明していたため、時期が近づくと関係者や町民からの「まだ?」という期待の声にプレッシャーを感じていました。試作ができたときはホッとしましたね。今はチョウザメの魚肉を出荷していて、キャビアも今年度中には商品化できそうです。
以前は分からないことがあると自分だけで立ち止まっていましたが、生き物を扱う仕事を通して、困ったときは早めに周囲に相談し、対処する姿勢が身に付きました。計画通りにいかないことも多いため、考え方も柔軟になったと思います。変化する状況をよく観察して、前例通りではなく、いい方向に発展させるように変えるべきだと、周囲のアドバイスから学びました。
チョウザメ飼育とは別ですが、町民を対象に、冬期限定で役場関係の仕事をあっせんする事業があります。そこでも例年にはなかった新しい仕事を探して取り入れてみると、町民から喜ばれました。工夫してよりよく変えていくことは、どんな仕事にも活かせるのだと感じます。チョウザメの事業も発展の段階にきました。キャビアの商品化はゴールではなく、当町の新たなブランドづくりのスタート。一つの事業にとどまらず、ほかの可能性も見つけて育てていきたいです。
▲6,000匹ほどを雌雄や年齢で分けて育てている。
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