1. 葬斎場予約システムの導入により、インターネット上で火葬炉などの空き状況を可視化する。
2. 紙での予約管理による重大なミスの防止とともに、予約システムでの火葬予約管理の一元化を図る。
3. 受付場所となっている休日・夜間当直職員の負担軽減が図られる。
4. 死亡届を火葬許可申請書と兼ねるようにし、市民(葬祭業者)が2枚の届出を1枚で済ませる。
5. 葬斎場予約システムの導入により、市民課や各支所の窓口で行っていた火葬室使用料の収納を葬斎場の窓口で一括で行う。
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2022」の応募事例から作成しており、本記事の内容は全て「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
近年の超高齢社会の到来に伴い、火葬件数は年々増加(30年間で2倍増加)していました。
大分市葬斎場では、収骨室が3室しかないため、火葬時間が集中する時間帯(正午~午後3時)には火葬開始から収骨の案内まで、ご遺族を3時間以上待たせてしまうことになっていました。
紙ベースの予約管理で、市民、業者が火葬室の予約状況が確認できず、火葬室を予約する申請者(葬祭業者)は、ご遺族が希望する時間帯に火葬室を確保するため、昼夜問わず申請手続きに出向いていました。
電話およびFAXでの予約管理体制で、手間がかかり、火葬日時などの伝達ミスのリスクとなっていました。
取り組み事例
市民、業者、行政のトリプルプレーによる業務改革
~人生終焉のタイミングをよりスマートに~
取り組み期間
令和3年度~(継続中)
取り組みの内容
1. 葬斎場予約システムを導入することにより、インターネット上で火葬炉などの空き状況の可視化が行われ、斎場利用の円滑化および斎場間や火葬時間帯の平準化が図られ、今後の火葬需要の増加にも対応できる環境が構築されるとともに、斎場利用者が心安らかに、安心して利用できる施設運営を行うことができます。
2. 申請者(葬祭業者)が、インターネット上で火葬室などの空き状況の確認および火葬室の予約・変更ができるシステムの導入により、深夜に火葬室使用許可の手続きに出向かなくてよくなるとともに、ご遺族との日程再調整がなくなるなど、利便性の向上が図られます。
3. 紙媒体での予約状況の管理による重大なミスの防止が図られ、予約システムでの火葬予約管理の一元化による正確性の確保と業務の効率化を図るとともに、受付場所となっている休日・夜間当直職員の負担軽減が図られます。
4. 戸籍部門における死亡届で火葬許可申請書を兼ねるようにすることにより、市民(葬祭業者)が2枚の届出を1枚で済ませることができるようになり、市民の負担軽減と紙文書の削減が図られます。
5. 予約システムの導入により、市民課や各支所の窓口で火葬室使用料の収納を行っていたが、全ての収納を葬斎場の窓口で一括で行えるようにしたため、市民課と各支所の窓口職員の料金収納に係る時間を削減することができます。
取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
これまで紙ベースが中心であり、業者も従来方式に慣れていたため、デジタル化を進めることになかなか理解とイメージが湧かなかったようでしたが、取り組みを進めていくにつれ、前よりもすごく良くなったと感謝の言葉が聞かれるようになりました。
人生の終焉(しゅうえん)の場である葬斎場での取り組みは、ご遺族の心情に配慮しながら、行政の独断で進めることはできないため、慎重かつ、効果が最大限発揮できるように取り組みを進めていきました。
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
他都市の状況調査を行ったところ、スポーツ施設や文化施設などの予約システムと葬斎場予約システムとが、担当部局が異なることで、それぞれの部局でシステム構築、運用が行われている自治体が多く、イニシャルコストやランニングコストの二重投資の状況がうかがえました。
大分市では、大分都市広域圏(大分市を中心市とする7市1町)で導入していた「おおいた公共施設案内・予約システム」内に葬斎場施設を追加することにより、二重投資を回避し、葬斎場予約システムを導入することができました。
行政事務の効率化だけでなく、市民、業者にもwin-winな取り組みとすべく、業者への丁寧な説明や操作マニュアルを作成し、スムーズな移行につなげました。
効果・費用
「おおいた公共施設案内・予約システム」の改修することにより、別途システム導入する場合に比べ、イニシャルコストを1/3に抑え、ランニングコストはゼロにすることが可能となりました。
葬祭業者もシステム内で火葬室の空き状況を可視化できるようになったため、予約の確認の電話や深夜の当直室への予約申請をせずに、24時間、どこにいても火葬室の予約が可能となりました。
火葬にかかる申請をデジタル化することにより、紙媒体での申請を減らすことができたため、新型コロナ交付金が活用でき、実質一般財源はゼロでの構築、運用となりました。
火葬室の予約を可視化し、予約できる時間帯を平準化することにより、火葬業務に携わる職員の時間外勤務手当を大幅に削減し、働き方改革の推進につながりました。
何よりも、火葬後の収骨室での収骨の時間の待ち時間をなくすことにより、悲しむご遺族の方々のお時間を奪うことなく、御遺骨とともにスムーズにご自宅に帰宅することができるようになることが、大きなコストメリットです。
今後の予定・構想
現時点では、大分市に隣接する由布市(旧挾間町)からの火葬の受付は大分市民と同額で受け入れていますが、今後高齢化による火葬件数の増加により、大分市外からの火葬の受け入れ件数の増加も考えられ、大分都市広域圏での受け入れについて検討も必須となってきます。
その場合に、現状の広域圏での予約システムの運用の場合、標準化が図られているため、システム導入に向けたハードルは全くありません。費用面や協議に係る時間は大幅に削減できるものと考えられ、コスト面でも運用面でもスケールメリットは大いにあるものと考えています。
大規模災害時における対応や周辺市町村からの火葬の受け入れ体制を構築する上でも、広域圏におけるシステムによる一元管理は有効です。
他団体へのアドバイス
他自治体でも、公共施設予約案内システムを運用されている自治体も多く、予約システムを主管する情報系部門(企画部門)と葬斎場を所管する市民部門や保健所部門との連携がうまくいかない場合には、参考となる事例であると認識しています。
死亡届と火葬許可業務の紙媒体の申請の一体化は、全国の自治体で行われており、大分市の取り組みを参考にすることで全国の戸籍の窓口で紙申請が大幅に減少するものと考えています。