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長崎県長崎市

“井戸端的”つながりを取り戻し、アップデートする! まちづくり支援施策『ながさき井戸端パーティー』

【地域交流イベントの情報を集め見える化!地域交流のプラットフォームを目指す】

『ながさき井戸端パーティー』(以下、井戸端パーティー)は、専用サイト(https://nagasaki-idobata.jp/)を介して、地域を盛り上げたい人と地域交流に参加したい人とをつなげ、地域活性化を図る、長崎市が運営するWeb主体の地域交流サービス。長崎市全域の地域交流イベント情報を専用サイト上で一元的に集めて見える化し、“交流の場”とすることで、主に20~50代の子育て世代の忙しい人たちでも「自分も参加してみたい、やってみたい」と主体的に動き出すような、地域交流のプラットフォームを目指している。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2022」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

“長崎流”まちづくりを実現したい!

 長崎市は、「くんち」や「精霊流し」に代表される地区単位・町単位で協力しあいながら催される祭りが盛んな土地柄で、もともと人と人との結びつきが強いまちである。しかし、転出超過数が2018年、2019年と2年連続全国ワースト1位となるなど、少子高齢化が急激に進んでおり、特に子育て世代を中心とした若い層の流出が深刻な課題となっている。これに伴い自治会加入率も平成28年に初めて70%を下まわり年々低下傾向にあり、役員の高齢化と近所付き合いの希薄化により、担い手不足は多くの地区で課題となってきている。

私たち中央地域センター まちづくり支援係は、市民窓口の最前線で自治会活動や市民の地域活動の支援に日々取り組み、そうした状況を肌で感じるなかで、長崎市の魅力・個性ともいえる人と人とのつながり・結びつきの強さが失われかねない危機感を抱くようになり、これからのまちづくりの担い手となる20~50代の子育て世代に向けた新たなまちづくり施策をうつことで、地域の絆を強くし、次世代にもつなげていきたいと考えるに至った。
 

≪令和元年度市民意識調査≫(回答者961件の43.4%が20~50代)より抜粋
・「積極的に参加したい」「できる範囲の協力はしたい」:79.0%
・地域活動にほとんど参加していない:63.7%
・地域活動に参加や協力をしたくない理由
  時間がない:40.5%
  機会がない:8.1%
  方法が分からない:14.9%

 

長崎市の市民意識調査では、上記のように約8割の市民が「地域にできる範囲で協力したい」が、「時間がない」「自分の地域の活動を知らない」という理由で地域活動に参加していない。 それであるならば、仕事や子育てで忙しく、地域活動を知る機会や参加する機会が少ないという状況ではあるが、忙しい中でも、興味があることや、子どもと一緒に参加できるものがあれば、人と交流するきっかけづくりになるはずと考え、若い世代と親和性の高いインターネット、SNSを活用した地域交流サイトを開設することとした。

開設にあたっては、渋谷区の「渋谷おとなりサンデー」等の先行事例を研究し、実際に実施自治体を訪問し、聞き取り調査を行う一方で、長崎市らしさや長崎市の現状に即したコンセプトづくりを意識した。長崎市の地元商店街などでは現在でも顔見知り同士の井戸端会議的な交流風景を目にすることができ、四季折々の行事をみんなで楽しむ土壌がある。こうした古きよき地域交流スタイルを再評価し、若い世代を巻き込んだ、地域交流の新たなカタチづくりを創出することを目指して、令和2年10月「ながさき井戸端パーティー」専用サイトを開設した。

 

取り組み事例
“井戸端的”つながりを取り戻し、アップデートする!
まちづくり支援施策『ながさき井戸端パーティー』

専用サイト トップページ(専用サイト トップページ)

ホームページ | 「ながさき井戸端パーティー」専用ウェブサイト
       「広報ながさき」(「ながさき井戸端パーティー」コーナー)

SNS | 「ながさき井戸端パーティー」Facebook   
    「ながさき井戸端パーティー」Instagram

 

取り組み期間

令和2年10月~(継続中)

 

取り組みの内容

「若い世代にまちづくり活動に関心を持ってもらいたい!」

地域交流イベント主催者は、井戸端パーティー専用サイトで、事前登録なしに簡単にイベント情報の投稿ができる。それらをまちづくり支援係が確認しサイト上で公開、専用Facebook、専用Instagramで日々発信している。また、長崎市公式LINEとの連携、市広報紙「広報ながさき」で「井戸端パーティー」のコーナーを持ち、地域交流のキーパーソンを紹介することで市民への認知向上を図っている。

さらに、ほぼ毎月大型商業施設で協力団体とともに啓発イベントを行っており、令和2年、3年は年に1度の大型イベントとして、民間のマルシェやワークショップなどを設けそれぞれ2,000人近くの来場者を集めた。またコロナ対策として、緊急事態宣言中などオフラインの交流が難しい期間は、オンラインの交流を掲載するなど工夫をした。

主な対象である、地域活動を知る機会が少ない20~50代の子育て世代は、インターネット、SNSを日頃から活用している世代であり、オンライン・オフラインの両面からアプローチすることで、
まずは興味のあることから交流を楽しんでもらう

顔見知りが増え地域活動への関心が高まる

自発的な企画が増え様々な地域活動に積極的に関わる

といった流れをまちに創出すべく、専用サイトへのイベント掲載、SNS投稿、広報用取材、啓発イベントの実施など、日ごろの運営はまちづくり支援係の係員8名が総出で関わる体勢をとっている。

まちづくりの仕組み

 

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

【継続する意思とモチベーションの維持】
 一過性のイベントとは異なりウェブサイト・SNS運営は継続的に利用し続けてもらうために持久力を伴う活動である。閲覧数が落ちないよう掲載イベント数を常に確保するため、地域交流イベント主催者に対してはこまめに連絡をとり井戸端パーティーの活用をお願いするとともに、啓発イベントでは係員自らがチラシを配るなど、地道な「営業活動」が欠かせない。こうした活動を無理なく続けられるよう、投稿に関しては係員が週替わりの当番制で対応し負担が偏らないようにする工夫や、時には掲載イベントに自ら参加し交流を楽しみながらモチベーションの維持に努めている。

【行政のスピード感の補完】
長崎市が運営するウェブサイトとして、井戸端パーティーに掲載されるイベントについては参加者がトラブルに巻き込まれないよう注意を払っている。このためイベントの投稿があった際は、内容を精査し決裁をとったうえで、専用サイト、SNSへの投稿を行っている。

必要なプロセスとはいえ、投稿から掲載までのタイムラグはイベント主催者の利用意欲をそぐため、即日対応を基本とし、週の掲載担当者がこまめに投稿をチェック、決裁も迅速に行うよう協力する体制を整えている。

【運営側と利用者側の思惑のギャップ】
 運営側のまちづくり支援係は、井戸端パーティーを、地域活動を促進するための“交流の場”にすることを目指している。このため主催者に対しては、ガイドラインを設けて投稿要件を明示しているが、投稿のなかには交流イベントをかたった営利目的のみのイベントもまぎれていることがあり、掲載をお断りするケースもある。

一方、お出かけ情報として単に楽しいイベントを探して専用サイトを訪れる市民にとっては運営側の基準で掲載イベントを絞ってしまうことは選択の幅を狭めてしまうことにもなりかねない。このため掲載イベントの選定には常に気を配っている。

【Web・SNSの知識習得】
専用サイト開設当初から、Web・SNSの運用経験を持った係員はおらず、専用サイトの掲載、SNSの投稿、文面づくり、写真撮影など、普段の運営は係員が実際にやってみるなかで試行錯誤を繰り返してきた。

多くの人にSNSの投稿が閲覧してもらえるように文面を工夫してみたり、昼休みや終業時間帯に投稿時間を設定してみたり、若い係員の意見を積極的に取り入れてみるなど、日々知恵を絞りながらスキルを高めている。

 

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

【親しみやすいサイトデザイン】
井戸端パーティー専用サイトは、行政の関わりを感じさせすぎず気軽に活用してもらえるよう、「井戸端」の「戸」をモチーフにしたキャラクターを使用するなど、親しみやすさと温かい雰囲気を演出するサイトデザインとしている。

【検索性への配慮】
単にイベントを一覧掲載するだけでなく、地域交流イベントを扱う専用サイトとして、地図を用いて自分の地域のイベントを探したり、「食べる」「つくる」「体を動かす」など興味にあわせてカテゴリー検索ができたりと検索性を高めている。

【イベント主催者支援機能】
専用サイトには、イベント主催者がイベント情報を入力するだけで専用サイトへの投稿とともにチラシが自動作成できる機能を付加しており、主催者は宣伝活動などに活用することができる。

【投稿要件の明示】
「投稿のご案内」として主催者にどのようなイベントを投稿ができるかガイドラインを示している。「営利目的のみでないもの」とし、マルシェ等の金銭のやりとりを伴う交流イベントにも投稿の間口を広げている。

【開催リポート】
主催者はイベント開催後に専用サイトに開催報告を掲載することができ、閲覧者は参加を検討する際、前回開催の模様を見ることができる。

【地域のキーパーソンとのつながりづくり】
令和4年度から、井戸端パーティーを活用してくれるイベント主催者のなかから顕著な活動をしている方にアポイントをとり、地域を盛り上げるキーパーソンとしてインタビュー記事を紹介するコーナー「井戸端people」を専用サイト上に新設。

ダイジェスト版を市広報紙「広報ながさき」に毎号掲載することで専用サイトへの誘導を図っている。キーパーソンにとっては今後のイベント企画の励みとしてもらうとともに活動の周知が図られ、参加希望者にとっては主催者がみえることでイベント参加への安心感にもつなげる。

 

効果・費用

【多様な団体が利用し、個性的なイベント情報が集まりはじめた】
令和2年10月の専用サイト開設から令和4年3月末の1年半の間、152の団体から611件のイベント投稿があった。団体の種別としては「個人」が最も多く、行政関連団体の投稿に偏らない運営ができている。

これには「地域交流の促進」という趣旨に添った活動を行っている個人や団体にまちづくり支援係から積極的に声をかける日ごろの営業活動が功を奏していると思われる。一団体当たりの平均投稿回数は4.0回と、継続して投稿してくれる団体も増えてきている。

団体種別ごとの団体数と投稿回数

公園でのヨガや週末マルシェなど、イベントの種類も多岐にわたりユニークな企画の投稿も増えてきている。

一例を紹介すると、
長崎市を代表する観光地・出島を拠点に活動をする団体「DEJIMA BASE」の「はしふき」がある。これは出島にかかる橋を参加者が文字通り拭くことで、愛着が生まれ地域づくりの原動力にしようというボランティア活動で、これまで述べ200人以上が参加し、はしふき後に交流会を開くなど継続的なイベントとして定着している。

「Joynus」は、小学生から大人まで年齢に関係なく一緒に楽しみ、長崎で最も童心に帰れるような遊び場づくりを目指して活動している団体。小学校の昼休みのようなドッジボール、サッカーといった遊びから、ちょっと変わった水遊び、ボール遊び、運動会まで開催し、当日の飛び入り参加も受け入れている。

この他、コロナ禍を反映してオンラインでのイベントの投稿数もこれまで159件あり、オンライン、オフラインの両方のイベント告知に活用されている。

オンライン、オフラインの両方のイベント

累計閲覧数は28,668回。1日平均では55回と年に1度の大型イベントの際に大きく伸びる以外はこれまで安定した閲覧数で推移してきた。まちづくり支援係は、閲覧数を落とさないために専用サイトの固定ファンをつくること、さらに閲覧数を伸ばすための新規ユーザーの獲得を目指し、年ごとに閲覧者数と掲載件数の目標値を設定しており、令和3年度は閲覧者数目標2,352人/月に対して1,654人/月、掲載件数目標40件/月に対して39件という結果であった。

【井戸端パーティーをきっかけに、地域交流イベントを企画したいという人があらわれてきた】
波及効果として、これまでイベントを計画したことのない人たちのなかから、少数ではあるが井戸端パーティー上で「自分も企画したい」「企画するために団体をつくりたい」という人があらわれ始め、実際に企画、実施されるケースがでてきている。また、企画者同士のマッチングにより、企画者同士が協力して新たなイベントも生まれた。

●井戸端パーティーを見た方が企画したイベント
・主婦の方:「稲佐山でおにごっこ」「おめかしパーティー」の実施
 ほかの企画者との協働で「稲佐山で自然体験」
・20代男性:「現川公園で外遊び」
・地域の薬局:「オンラインで乾燥肌対策座談会」「オンラインで医療費控除を学ぼう」

【大型商業施設とのコレボレーション】
井戸端パーティーに賛同いただいた大型商業施設(みらい長崎ココウォーク、無印良品の地域店)から無償でスペースを提供していただき出展者とともに定期的に啓発イベントが開催できるようになった。まちづくり支援係にとっては井戸端パーティーを啓発する絶好の場、大型商業施設にとっては市民への地域貢献をアピールする場、出展者としては大型商業施設での活動周知の場として、三者にとってメリットのある啓発イベントの運営が行えている。

【市役所内で様々な連携がとれるようになった】
井戸端パーティーが庁内で認知されるにつれ、各部署が自ら企画するイベント告知に活用されるだけでなく、各部署が関わる外部団体に井戸端パーティーが紹介され投稿につながるケースも増えてきている。

●他部署との連携による井戸端パーティー活用例
・ゴミ拾いのボランティア団体活動の発信元としての活用(廃棄物対策課)
・地域コミュニティ連絡協議会が実施する活動の掲載(地域コミュニティ推進室)
・「まちぶらプロジェクト」認定団体の活動の掲載(まちなか事業推進室)

【係内運営を基本としたコスト節約策】
令和3年度の予算額は1,500千円。専用サイト運用管理と事業内容の周知、市主催の啓発イベントの実施にかかる経費が主となっている。日ごろの専用サイトの運営、SNSへの投稿、取材および原稿作成、イベント開催等は業者に頼らずできる限り係員が担当することで、手作り感のあるサイトやイベントを演出するとともにコストの抑制にもつなげている。

 

今後の予定・構想

専用サイト開設から1年半が経過し、定期的にイベントを掲載いただける団体が増え、一定のInstagram 、Facebookのフォロワーがつくようになってきた。さらなる利用促進に向けて、今年7月から専用サイトの改修を行う予定で、これまでの運用経験を踏まえて係員全員で改善のための意見を出し合っている。啓発活動としては、11月に一昨年、昨年に続き大型商業施設での大規模イベントを計画中。

また、主な対象である、子育て世帯への周知に向けて、市内全公立小学校児童へのチラシ配布も検討している。こうした継続的な活動により、「長崎市で交流といえば井戸端パーティーだね!」「井戸端パーティーをみて週末のでかけるところを決めよう!」というレベルまで、長崎市に住む人、働く人、学ぶ人たちに親しんでいただける媒体となることを目指していく。

井戸端パーティーの最終的な目標は、地域の人たちが自発的に地域活動を活発化させていくことにある。最近では、長崎市で井戸端パーティーのような「交流の場」をつくりたいという団体も出てきた。将来的にはそうした市民主体の活動に井戸端パーティーの役割を引き継いでいくことも考えていきたい。

 

他団体へのアドバイス

「ながさき井戸端パーティー」の運営を通して、地域交流イベント情報を集め、見える化し、地域交流のプラットフォームとしていく一連の取り組みは、まちづくり支援係の私たちにとって地域の活動を俯瞰(ふかん)的に把握し、地域づくりのキーパーソンとつながるよいきっかけとなっている。

地域活性化のためのウェブサイト・SNS運営は、継続していく意思と根気強さ、日々の運営の手間など、係員全員が同じ目標に向かって協力していくことが不可欠である。

一方で、個性的なイベントを行っている方と知り合ったり、関わったイベントが盛り上がる場面に立ち会えたりと、楽しい瞬間も多い。なにより、少しずつ、しかし着実に地域に関心を持ち地域の環境をよくしようという人たちや活動が芽生え始めていることが感じられるようになったことは、この職務についている私たちにとって喜びである。

行革というと、業務の効率化がまず頭に浮かびがちだが、その陰で見過ごされかねない地域のつながりづくりや活性化といった成果の数値化が難しいテーマに、もっと行革の陽があたるよう、全国自治体の「まちづくり」に関わる方たちと情報交換や苦労を共有しながら一緒に取り組んでいければと思っている。

 

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