ジチタイワークス

愛知県犬山市

地域活動の活性化のため町内会業務などのデジタル化支援“デジタル町内会ぷろじぇくと”

市から配布している広報や文書の回覧、町内会独自の行事案内や出欠の連絡を、従来の紙ベースによる資料配布ではなく、スマートフォンやパソコンといった電子媒体で受領・配信ができるようにし、町内会業務の簡素化を目指している。この町内会業務の簡素化により、地域における防犯防災活動や親睦・交流を深める活動など、実質的な町内・地域活動により注力することで、地域の活性化につなげていく“デジタル町内会ぷろじぇくと”を実施中である。

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2022」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

(1)事業の背景

犬山市では、広報紙の配布や市からのお知らせなどの文書回覧、地域との連絡調整などを、市内の317町内会に委託する形で実施しており、市長と各町内会長との意見交換も行いながら、まちづくりを共同で進めてきた。

しかしながら、過去に実施した町会長へのアンケート結果から、町内会役員のなり手不足や、会員の高齢化による町内会業務の負担軽減などが課題となっていた。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、対面で行う町内会行事が実施できない、手渡しによる広報配布や文書の回覧が難しいなどの現状があり、地域のつながりを維持するための方策が必要であった。

(2)事業の目的

まず、市の広報紙や、市からのお知らせなどの文書をデジタル化して配信することで、地域住民への配布業務を担っていた町内会長を含む町内会役員の業務を簡素化し、余裕時間を生み出す。その余裕時間を、地域活動の活性化につなげるための「チカラ」に変えてもらうことをねらっていく。また、副次的効果として、スマートフォンやパソコンを操作することに苦手意識を持つ人も、デジタル機器に触れる機会が増えることになり、超高齢化社会が進む中でのスムーズな情報伝達の一助や、自然環境への負荷を減らすためのペーパーレス化へつながることを期待している。

 

取り組み事例
「地域活動の活性化のため町内会業務などのデジタル化支援“デジタル町内会ぷろじぇくと ”」

ホームページ | 【デジタル町内会】モデル事業を実施しています

 

取り組み期間

令和3年6月~(継続中)

 

取り組みの内容

市の広報誌や、市からのお知らせなどの文書をデジタル化して配信するため、本事業に活用可能なアプリケーションの提供及びサポート対応の出来る民間事業者と連携・協力し、まず実証実験として事業を実施している。

 

●ステップ1 どんなアプリケーションを使うか

事業を始めるにあたって、どのようなアプリケーションを使うかが重要ポイントであり、まず、庁内の情報政策部署に協力をしてもらい、様々なアプリケーション開発会社と打ち合わせを実施し、事業の方向性やアプリケーションで何ができるかを十分検討したうえで、使用するものを決定した。

●ステップ2 事業の認知度を高める

初の試みである「デジタル町内会」事業が、どういったものなのか、何ができるのかをまず知ってもらうため、市内全町内会に事業内容を周知するチラシを配布し、その中で当事業に興味を持つ町内会があれば、市職員とアプリケーション開発会社職員が直接出向くなどし、説明会を実施した。

●ステップ3 デジタル町内会実証実験の開始

「デジタル町内会」事業は、まず実証実験として令和3年6月からスタートすることとし、モデル町内会として参加する町内会を募集し、想定していた3町内会を超える7町内会から応募があった。

応募した7町内会全てをモデル町内会とし、アプリの導入費用などを市が全額負担し、実証実験を開始した。
現在、実施しているのは以下のとおりである。

アプリイメージ図

デジタル町内会
≪アプリイメージ図≫

 

●ステップ4 実証実験効果の検証

この実証実験は、令和5年3月までを予定しており、現在も実施中である。市の広報紙や、市からのお知らせなどの文書をデジタル配信しつつ、モデル町内会となった7町内会について、随時ヒアリングを行って、課題等の検証を行って本格運用に向け進めている。

 

取り組みを進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

実証実験を行うにあたり、モデル町内会には住民の半数以上の参加を条件としていたが、各町内会とも住民の参加は半数を超える程度に留まっている。参加人数を増やす方策を思案中である。

参加を希望する町内会に対して、アプリケーションのインストールや操作説明会を数回実施したが、町内会役員にデジタル機器の操作に不慣れな人も多く、大人数を集めた説明会形式では難しいと感じた。時間はかかっても、個別に操作説明やサポートを丁寧に行うことが、理解度が増し、参加の促進につながる。

 

特徴(独自性・新規性・工夫した点)

町内会活動を担っている人々は、高齢者を中心とした世代が多く、スマートフォンやパソコンの操作に苦手意識を人も多いため、シンプルで簡単に操作できるアプリケーションの活用が前提であった。

また、LINEやFacebookの利用者は一定数いるものの、町内会業務でSNSを使うには不安な人も多いと考え、町内会会員のみが利用できる環境(クローズド)を用意し、安心、安全であることをPRした。加えて、個人間でのメッセージのやりとりができないため、誹謗中傷等につながるおそれがないことも特徴の一つである。

 

効果・費用

(1)取り組みの効果

現在、実証実験中であり、市の広報紙や、市からのお知らせなどの文書はデジタル配信と紙ベースでの配布の両方を行っているため、現状での明確な取り組み効果は挙げられない。しかし、今後の本格稼働においては、紙ベースでの町内会の文書配布業務の削減は期待でき、新たな地域活性化に向けた活動を行う余裕が生まれると思われる。

また、市としては、市政情報などの速やかな情報発信の展開も可能となり、広報紙等の印刷や配布にかかる費用などの削減が期待できる。

(2)費用(税抜き)

デジタル町内会システム導入委託料:682,510円(全額市負担:7町内会分)
※初期設定費用、基本料金(1町内あたり)、利用料(1世帯あたり)、オンライン研修費

 

今後の予定・構想

本格稼働に向けて、現在、市が負担しているデジタル町内会の費用をどこまで町内会負担とするか、デジタル配信ではなく紙ベースでの配布を希望する住民への対応を検討していく。
防災情報やその他市がリリースしているごみ分別アプリなどとの連携を図っていく。

 

他団体へのアドバイス

高齢者を中心に、スマートフォンなどのデジタル機器に苦手意識がある人も多いため、入口となるアプリケーション操作等の対応は丁寧に行う必要がある。一方で、現役世代の人は慣れてしまえば、それぞれで使い方を工夫し活用していくため、世代間交流や地域コミュニティの活動促進につながることも期待できる。

 

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