これからの自治体を支える「財政のイロハ」を、元・福岡市財政調整課長の今村寛さんがレクチャー。
第1回|「政策のビルド&スクラップ」
第2回|「借金するのは悪いこと?」 ←今回はココ
第3回|「財政課はなぜ嫌われる?」
第4回|「予算は誰がどうやって決めている?」
第5回|「どこまでやれば財政健全化?」
第6回| 「お金がないなら自分で稼ぐ」
※下記はジチタイワークスVol.2(2018年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
1.借金するのはお金がないから?
地方自治体の財政を語るうえで、よく誤解されるのが「借金」です。国は必要な支出を税などの収入で賄えないときに、補てんのために「赤字国債」を発行しています。しかし地方自治体は赤字を埋めるための借金はできません。収入に見合わない支出をして、お金が足りないから借金をするわけにはいかないのです。地方自治体が借金するのは、将来の市民が使う社会資本をあらかじめ整備するための「投資」だと考えられる場合です。
2.長く使うものだから将来の世代と負担を分かち合う
地方自治体は原則として、道路や公園、学校などの社会資本を整備するために借金をすることができます。将来にわたって長く使い続ける社会資本の整備費用は、整備する時期の市民だけで負担するのではありません。親子二代で住む二世帯住宅のローンの名義を親から子へ引き継ぐところをイメージしてください。世代間の公平を図り、「その社会資本の便益を受ける将来の市民にも負担していただく」という考え方によるものなのです。
3.借金の残高ではなく資産の価値で判断しよう
ではなぜ、借金をしても投資をするのか。お金が貯まるまで待っていては、不便な状態が続き、まちの成長を阻害します。将来を見越して住みやすいまち、働きやすいまちを創るための借金は決して悪いことではありません。大事なのは将来の市民に遺す資産と資産をつくるための負担を市民が受け入れられるか、ということ。将来の市民が本当に望むものであり、負担を受け入れることができ、きちんと返済できる額であることが重要です。
講師PROFILE
福岡市 経済観光文化局 総務部長兼中小企業振興部長 今村寛
元・福岡市財政調整課長。自治体財政についてわかりやすく学べる「出張財政出前講座」で全国を行脚。開催件数は4年間で80回を超える