
建設会社での勤務を経て伊勢崎市に入庁して以来、都市計画や景観行政、世界遺産登録の実務まで、幅広い分野でまちづくりに携わってきた橋本 隆さん。編集室が過去に実施したインタビューでは、「公務員である以上、学びつづけることが大切。学ぶ職員が増えれば、市民の満足度も上がり、地域への貢献にもつながる」と語ってくれました。その言葉どおり、自ら学びを積み上げて“20以上の資格”を持ち、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」にも選ばれた実績の持ち主です。そんな橋本さんが、自身の実務経験や学びを伝えるべく筆を執った一冊をセルフレビュー!現場に根ざした実践知と公務員としての熱量……執筆の背景にある想いやメッセージにも、ぜひ注目してください。
※著者の所属先及び役職等は2025年4月公開日時点のものです。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。
【著者】
橋本 隆(はしもと たかし)さん
群馬県伊勢崎市
建設部 治水課 課長
【プロフィール】
9年間勤務した建設会社を退職後、2003年伊勢崎市入庁。群馬県県土整備部都市計画課(派遣)、企画調整課、区画整理課長、都市計画課長、都市開発課長、土木課長等を経て、現職。総合計画、都市計画マスタープランの策定のほか、県内市町村初の景観行政団体、世界遺産登録の実務を経験。前橋工科大学客員教授、博士(工学)、技術士(建設部門)、一級土木施工管理技士。
【書籍】
自治体の土木担当になったら読む本
【本の内容を要約すると?】
本書は、土木担当になった職員が、転入直後から感じる多くの不安を解消するための実務ノウハウを丁寧に紹介しています。例えば、活字だけでは伝わりにくい「土木の基本」や「社会資本整備事業」「道路管理」「河川管理」のポイントをはじめ、どんな部署でも役立つ仕事術を豊富な図表を用いて解説しています。
初めて土木に携わる職員に向けて、トコトンやさしく、分かりやすく解説。
土木の初心者でも楽しめる書籍を目指し、以下の3つを重視して執筆しました。
1つ目は、視覚的に理解できる書籍であること。全体的に専門用語を避け、平易な表現と合計113種類の図表で“パッとひと目で理解できる内容”にしました。土木を知らない新規採用職員でも、図表と写真で理解しやすくなっています。
2つ目は、実務を忠実かつ丁寧に解説すること。自治体の土木担当は、国や都道府県と比べると規模の小さな社会資本の整備・管理を担います。小規模だからこそ現場は多く、多種多様な対応が求められます。そこで、第2章では法定外公共物、第3章では生活道路整備事業という“自治体ならではの実務”を丁寧に解説しました。
3つ目は、横断的な実務ノウハウを紹介すること。道路・橋梁・河川などの専門分野だけでなく、第6章ではどんな部署でも役立つ「土木担当の仕事術」で締めくくりました。土木担当が知っておくと便利な議会対応のノウハウも解説しています。
土木の基本から、整備・管理のポイントや横断的な仕事術まで。
本書の読みどころをダイジェストでお伝えします。
第1章は、「土木担当の仕事へようこそ」。歓迎の意味を込めて、土木担当の1年、必読の書、欠かせない3つの力などを解説します。経験の浅い土木担当向けに、年間スケジュールや“何から学び、どんな力を養っておくべきか”を知ってもらいたいと考えました。
第2章は、「土木の基本」を視覚的に解説。本書の最も大きな特徴といえる本章は、土木に関係する様々な部署で通用する内容を、豊富な図表と写真で紹介しています。地盤・道路・水路・災害・人工公物・自然公物・法定外公共物など幅広い内容を解説しているため、土木担当と連携する機会が多い危機管理や財産管理の担当者も、ご一読いただければ円滑な業務につながるでしょう。
第3章は、事業全体の流れを知っておきたい「社会資本整備事業のポイント」。具体的な解説内容としては、全国各地で実施されており、生活に密着していてイメージしやすい“生活道路整備事業”を選定しました。架空の路線を設定し、事業説明会や線形説明会を含む事業の開始から完了までを疑似体験できる内容です。担当者になったつもりで読むことで、社会資本整備事業の開始から完了までをイメージできるようになるでしょう。
第4章は、「道路管理のポイント」。道路は人工公物であり、市町村道計画の立案を行ってから路線の認定を行い、その路線の廃止に至るまでの一連の流れがあります。こうした道路事業の流れや承認工事、占用許可、維持管理などについて解説しました。専門用語が多い橋梁やその維持管理についても、図表を多用することでイメージしやすいように配慮しています。
第5章は、「河川管理のポイント」。河川は自然公物であり、供用開始の概念がなく、そもそもすでに存在しています。こうした河川の管理では、河川の種類、河川区域、河川管理施設などを理解することが重要になるため、図表で詳しく紹介。さらに、近年の気候変動を踏まえ、その重要性が高まっている「流域治水」の基本的事項についても解説しています。
第6章は、「土木担当の仕事術」。様々な土木担当の職場で活用できる横断的な内容です。着任当日からすぐに実践できる内容や将来の議会対応に役立つ内容まで、幅広い実務ノウハウをお伝えしたいと考えて執筆しました。
まずは土木担当の実務ノウハウを知り、少しずつ専門分野の理解を。
私は、不安を抱いている新規採用職員や新任の土木担当の「実務の味方」になることができれば……と願いながら本書を執筆しました。各章を順番に読み進めてもよいですし、気になる章から読みはじめても全く問題ありません。お忙しい人や短時間で読みたい人には、重要な部分をゴシック体にしましたので、その部分を拾い読みしていただいてもよいでしょう。
また、今月から土木担当向けの動画を無料で視聴できるようになりました。公務員限定にはなりますが、オンライン市役所(※1)に参加していただくと、いつでも気軽に「30分de土木基礎講座」を視聴できます。ぜひ本書や動画を活用しながら、徐々に専門分野も理解していきましょう。
※1 オンライン市役所:全国の公務員で運営する、公務員限定のオンラインプラットフォーム