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日常の小さな気づきを報告しやすい仕組みで、市民とつくる管理の形。

都市整備・上下水道
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日常の小さな気づきを報告しやすい仕組みで、市民とつくる管理の形。

市民の気づきや行動をインフラの維持管理に活用

人口減少が進む中、インフラの維持管理を行政だけで担いつづけることは難しい。千葉市は、市民が発見したまちの課題を行政に報告できるアプリを開発。市民と行政が協力してインフラを守る仕組みづくりを進めている。

※下記はジチタイワークスVol.43(2026年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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千葉市
総合政策局 市長公室
広報広聴課
課長 田中 剛志(たなか つよし)さん

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千葉市
総合政策局 市長公室
広報広聴課
主任 主事 鈴木 翠(すずき みどり)さん

将来の財源不足や職員減少を見据えて市民参加型のインフラ管理を模索。

「全国的な人口減少や少子高齢化による税収減や職員数の減少に、早い段階から危機感を抱いていました」と田中さんは振り返る。こうした状況を受け、同市では公共インフラを将来にわたって維持管理していくためのあり方が検討されていたという。「全てのインフラを行政だけで管理し、市民の要望に応えつづけるには限界があります。そこで、市民と行政が垣根を越えて地域の課題を共有し、協力して対応できるような仕組みづくりができないかと考えていました」。

一方、市民サービスの面でも課題があったという。「道路の穴や公園遊具の破損などの不具合に気づいても、“どこに連絡すればいいか分からない”との声が多く寄せられていました」と鈴木さん。担当部署を調べて電話をかける手間が、市民にとって心理的なハードルとなっていたそうだ。

そこで同市は、市民が感じる“通報の不便さ”を解消すると同時に、“気づき”を地域課題の把握に活かす仕組みとして、スマートフォンアプリ「ちばレポ」を開発。市民がまちの不具合を見つけたらアプリ上に投稿し、手軽に行政へ報告できるようにした。「平成25年7月から半年間の実証実験を行った結果、参加者からは“気づいたときにすぐに投稿できて便利”などの好意的な声が多く寄せられました」。こうした成果を受け、平成26年9月から、ちばレポの本格運用を開始した。

▲ちばレポの目的や使い方を学ぶ講座を実施。市民への周知を図る。
▲ちばレポの目的や使い方を学ぶ講座を実施。市民への周知を図る。

単なる通報にとどまらない仕組みで市民がまちに関わる実感を育てる。

ちばレポでは、投稿時に写真や位置情報を含められるほか、道路・公園などの分野設定もできる。その情報をもとにシステムが担当部署へ自動で振り分け、職員が重要度を判断して現場対応を行う仕組みだ。対応完了後は、職員が写真とコメントを添えて投稿し、ちばレポ上で全ユーザーに共有される。国や県の所管であった場合は、情報をPDF化して関係機関に提供しているという。

また、困り事の報告だけでなく、“市民自身が解決したこと”も共有できる点がポイントだ。「ごみを拾った、草を刈ったなど、まちの維持管理に関わる行動を投稿できます。単なる通報ツールではなく、地域の課題のうち、行政でなければ解決できない課題は行政で対応し、市民が力を発揮できる部分は市民が担う、という概念を組み込んで設計しています」と田中さん。併せて、投稿のハードルを下げるため、市からテーマを提示して投稿を呼びかける取り組みも行っている。「初めてアプリを使う人は、何を投稿すればいいのか分からない場合が多いです。そこで“カーブミラーを点検してください”のような課題に対応するものから、“オススメの桜スポットを教えてください”といった気軽なテーマまで示すことで、投稿のきっかけをつくっています」と鈴木さん。また、市民や団体から依頼を受け、「ちばレポ教室」と呼ばれる出前講座も行っているという。「取り組みの目的や活用事例、投稿方法などを紹介し、希望があればその場でユーザー登録をしてもらっています」。

さらに、企業との連携も進めている。「当市は日本郵便と包括連携協定を結んでおり、郵便局員が配達中に道路の破損などを発見した場合、配達後にちばレポから情報提供してもらえるようにしています。今後もこうした連携を広げていきたいですね」と田中さん。


市民と行政の役割分担を進め一緒にまちをよくしていく。

ちばレポの登録者数は、令和6年度末時点で9,623人。同年度の投稿は、不具合の報告約3,600件に加え、市民の対応報告が500件以上寄せられるなど、市民による課題解決の動きも広がっているという。市民からは、“まちの不具合や変化を意識して探すようになり、まちを見る目が変わった”との声が届いているそうだ。職員にとっても、現場の状況を事前に把握でき、緊急性や対応の優先度を判断しやすくなるなど、成果があらわれているのだとか。「電話と違い、職員が自分のタイミングで投稿を確認できるため、スケジュールを組み立てやすくなりました」と鈴木さん。さらに、パトロールで発見した不具合も入力して一元管理することで、業務の効率化にもつながっているという。

田中さんは、「大規模な点検や専門的な補修は行政が担い、市民にできることは市民にお願いできるように、役割分担をさらに進めていきたいです」と強調する。そのためにも、ちばレポの普及と活用を一層進めていく考えだ。「道路や公園などのインフラを、行政だけで支えつづけることはできません。行政と市民、企業などが立場を超えて関わり、自分たちのまちを一緒によくしていく。その意識を広げていきたいです」と展望を語ってくれた。