これからの自治体を支える「財政のイロハ」を、前・福岡市財政調整課長の今村寛さんがレクチャー。
第1回|「政策のビルド&スクラップ」
第2回|「借金するのは悪いこと?」
第3回|「財政課はなぜ嫌われる?」
第4回|「予算は誰がどうやって決めている?」
第5回|「どこまでやれば財政健全化?」 ←今回はココ
第6回| 「お金がないなら自分で稼ぐ」
※下記はジチタイワークスVol.5(2019年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
1、財政健全化は目的ではなく手段
どういう状態になれば財政健全化が達成できたと言えるのでしょうか。財政健全化は目的ではなく手段なので、健全化そのものに終わりはありません。
過去の政策決定を維持するための経常的経費が硬直化するなか、地方自治体で不足するのは、現にある政策課題を解決するために必要な「新しいことに取り組むお金」。その財源捻出のために今の取り組みを見直し、優先的に実施すべき政策を実現するための財源を捻出するのです。それが財政健全化で、健全化自体が目的になるものではありません。
2、財政健全化に終わりはあるか
経常収支比率や財政力指数などの財政指標は他の団体と比較したり、過去からのトレンドを分析したりするために使用する物差しに過ぎません。これ以上、財政健全化の取り組みが必要かどうかを判断する基準にはならないのです。
優先度の高い施策を新たに手がけ、社会課題の解決を図ろうとする限り、財政健全化に終わりはない。財政指標がどれだけよくても、今後取り組むべき重要な政策課題があり、その実現に向けて多くの財源を捻出する必要があれば、既存事業を積極的に見直さなければならなくなるのです。
3、自治体の財政健全化は個人の健康づくりと同じ
「財政健全化」は「健康づくり」に例えることができます。人が健康でありたいのは、仕事や趣味などの好きなことに挑戦でき、おいしいものを食べ、いろんな場所に出かけていろんなことを楽しめるから。人それぞれの豊かな人生を送るという目的を達成するためです。
また、フルマラソンを走る陸上選手と私のような普通の勤め人とでは、やりたいことをするために必要な健康状態にも大きな差があります。それぞれの目的を実現するために必要な状態を保つという意味では、個人の健康づくりも自治体の財政健全化も全く同じなのです。
講師PROFILE
福岡市経済観光文化局総務・中小企業部長 今村寛
元・福岡市財政調整課長。自治体財政についてわかりやすく学べる「出張財政出前講座」で全国を行脚。開催件数は4年間で100回を数える。