地方公務員の推薦文をもとに審査し、地味派手を問わず頑張る職員を選出する「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。株式会社ホルグ主催のこのイベントは、2023年で第7回を迎えます。ジチタイワークスは今年も協賛メディアとして参加。応援企画として、歴代受賞者3名をクローズアップ!受賞時の振り返りと現在の取り組み、全国公務員へのメッセージなどをお届けします。
【「地方公務員アワード」歴代受賞者をクローズアップ!】
(1)地方公務員アワード2017で受賞!菊池 明敏さんにインタビュー(総務省経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー)←今ココ
(2)地方公務員アワード2021で受賞!伊藤 遼平さんにインタビュー(埼玉県宮代町)
(3)地方公務員アワード2022で受賞!廣濱 学さんにインタビュー(愛知県豊田市)
▼地方公務員アワード2023の概要はコチラ
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023』開催のお知らせ
地方公務員アワード2017で受賞!
総務省経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー
(元岩手中部水道企業団局長)
菊池 明敏(きくち あきとし)さん
プロフィール
1991年、市町村合併後の北上市役所に入庁。財政課、企画課などを経て、2001年に水道部営業課。2014年、岩手中部水道企業団創設に伴い移籍。2009~2014年、2020~2022年、関西学院大学専門職大学院兼任講師。2013年、総務省公営企業法適用研究会委員。2012~2020年、総務省地方公営企業等経営アドバイザー。2021年~総務省経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー。共著に「地方公営企業経営論」(関西学院大学出版会)「水道が危ない」(朝日新書)、論文は水道事業広域化、下水道事業法適用など多数。
―受賞理由となった、取り組みの概要を教えてください。
平成26年に、4つの水道事業を事業統合し、「岩手中部水道企業団」を創設。際限のない人口減少を迎えた水道事業の新時代において、日本で初といわれる広域統合を実施。
全国の水道事業は、人口減少に伴う使用水量の減少によって、際限なく減収していく時代。ですが、高度成長期に大量投資した施設設備が老朽化し、収入減少下の大量更新投資の時代が到来しています。つまり、今後は社会の縮小に合わせてダウンサイジングをしなければ水道経営が成り立たない状況です。これに対処するために水道事業の広域統合は強力な手段であり、これを全国に先駆けて行いました。
その結果、水道事業の広域化に対する補助制度等財政支援制度の創設や、広域連携を主眼とした水道法改正につながり、さらには全ての県での「水道広域化推進プラン」の策定につながりました。現在、日本の水道事業の主要施策である水道事業広域化の流れの端緒となった事例であり、水道事業の現在の方向性を決める発端になったといえます。いわば1つの社会実験が、日本の水道事業の方向性を変えるきっかけになったと考えていいのではないでしょうか。
この統合による実際の成果としては、統合から8年間で、約250億円ものダウンサイジングによる将来費用を削減。これにより、今後の水道事業経営を盤石なものとし、今後の収入減少下の大量更新投資に対処する非常に強力な方策であることを証明できたと考えています。
岩手中部水道企業団とは
水道企業団とは、地方公共団体の事務をほかの地方公共団体と共同で処理するために設ける一部事務組合で、水道、ガス、電気事業など地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する場合、これを「企業団」という。
(出典/引用:「岩手中部水道企業団ホームページ」https://www.iwatetyubu-suido.jp/jigyo/8/)
―最初に受賞を知ったときのお気持ちはいかがでしたか。
自分のやったことが客観的に見ればどの程度の評価に値するのか、自分自身では皆目分からないので、取り上げていただいたことは素直にうれしく思います。
水道事業はともすると自治体全体の業務の中では、いわば“亜流”の扱いを受けているように感じるときがありますが、官房系ではないこういった部署に日が当たることは、全国の水道等公営企業に従事する職員の意識、意気やステータスの向上につながっていくのではないかと思います。
―受賞後、周囲の反応はいかがでしたか。
実際には受賞時点で特に大きな反響というものはなかったように感じますが、これがきっかけとなり、三大紙や地方紙などの新聞、雑誌、マスコミなどの取材がいくつか入り、その都度、水道事業の広域化の効果等について説明する機会を得たため、結果として、水道事業における広域化概念の認知度拡大につながったことは間違いないと考えています。
水道界の中だけでしか知らなかった水道広域化や日本の水道事業の厳しい将来像を、一般にも知らせることにつながる要因の一つになったのではないかと思っています。
―現在は、どのような業務をしていますか。
令和4年に、岩手中部水道企業団の参与職を退き、現在は総務省の経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー事業を主として全国の水道事業、下水道事業における“広域化”、“経営改善”、“料金改定”、“公営企業法適用(複式簿記、企業会計化)”、“経営分析と経営改善に向けた具体的なアドバイス”などに従事。
事業体や各県からの依頼を受け、全国の事業体を訪問し、アドバイザー業務や相談対応業務を実施しています。総務省公営企業等アドバイザーの頃を含めれば、100件を優に超えるアドバイス実績となっているところです。
また、水道広域化や水道事業の経営分析といった内容の講演依頼も多く、全国各地で講演する機会もいただいています。広域化する前と後では環境がガラリと変わって、広域化する以前には全く想像だにしなかった状況となっていることに今さらながら驚いています。
さらに、経産省などと一緒に水道標準プラットホーム構築と普及にも携わっており、全国水道における全システムのクラウド標準データ化を目論んでいて、さらには下水道や他のインフラへの普及も考えています。これが普及していけば、ゆくゆくは自治体のシステム全般にも波及できると思います。使うアプリはおのおのでも、データは全国統一標準という世界の構築を目指しています。
―今後、どのような方に受賞してほしいと思いますか。
ある意味、パフォーマンス的な行動によって注目を集めている方々もいますが、小さくても物事を実際に動かし、一歩を踏み出し、新しい改善改革を実行した方に光を当ててほしいと思います。
何事も実際の改善改革につながらなければ、変革にはつながっていかないと思うので、とにかく一歩踏み出した方、そして実績を上げた方、さらには社会変革につなげた方など、地に足がついた地道な改善を行った方々、小さくともしっかり改革の実績を出している方の受賞が望ましいと思います。
―全国の公務員の皆さんへ伝えたいこと(メッセージ)をお願いします。
基本的に公務員の仕事は、日の当たらない地味で地道な仕事です。
しかし人々の暮らしに必須の仕事であり、その最終目的は“人の幸福(次世代の幸福、自分の幸福も含めて)”だと思います。そのためには際限のない改善の積み重ねが必要だと考えています。
“やらない理由”、“やれない理由”、さらには“やりたくない理由”が横行することも多く目にしますが、公務員としての自負と誇りをもって失敗を恐れず、逃げず、とにかく一歩を踏み出して、改善改革を実行してほしいと思います。
公務員から別職種に転職される方々も増えていますが、できることならば“人の幸福”のため、まい進する公務員を全うしていただき、またワークライフバランスもしっかり考えて、充実した人生を送ってもらいたいです。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023」について
【開催概要】
1)スケジュール
・推薦・応募受付期間:2023年5月31日(水)~7月7日(金)
・結果発表(holg.jpWEBサイト上)2023年8月中旬
・表彰式:2023年10月28日(土) ※スケジュールは変更する可能性がございます
2)応募・推薦方法
▼詳細はこちらから
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023』開催のお知らせ
3)結果発表等
・2023年8月中旬に、『Heroes of Local Government』 にて掲載
・2023年10月28日(土)に表彰式開催予定(変更可能性有)
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