地方公務員の他薦にもとづき、現役の地方公務員が審査を行い、「本当にすごい!」と思う地方公務員を表彰する取り組みである「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。株式会社ホルグが毎年開催し、2022年で第6回目の開催となる。
そこで、ジチタイワークスも協賛メディアとして、アワードを盛り上げるべくコラボレーション。
第1回目は、2018年度受賞者である寝屋川市・岡元 譲史さんの「あの人は今?」にフォーカス。
「1人では受賞できなかったことなので、当時の滞納整理チームを代表して受賞させてもらったと考えます」と岡元さん。受賞当時の状況や、受賞取り組みのその後、公務員アワードに対する想いを伺った。
岡元 譲史(おかもと じょうじ)さん
寝屋川市 経営企画部 企画三課 広報編集長(元 滞納債権整理回収室 係長)
プロフィール
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2018」受賞
1983年生まれ。2006年に同市入庁後、12年間にわたり、様々な債権の滞納整理に従事し、市税滞納額70%(約25億円)削減に貢献。2022年より現職。
「滞納整理に価値を見出して伝えることで、受講者の不安や葛藤を取り除く」という独自スタイルによる研修を全国で実施し、6年間で延べ3,700人が参加。受講者が給食費の滞納ゼロを達成するなど、すぐに使えて再現性の高いノウハウを伝えている。執筆に、「現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術」(学陽書房)、「滞納整理のための空地・空家対策」(『税』2018年3月号)など。プライベートでは2男児の父。PTA会長を務めるなど地域の活動も行う。
チーム代表として受賞した地方公務員アワード
―― まず、受賞取り組みの概要を教えてください。
岡元さん:滞納整理業務を通じて、寝屋川市の滞納市税額の大幅な削減[ピーク時から約70%(25億円相当)]に貢献したこと、培ったノウハウを全国の市町村に共有したことが評価されたと自覚しています。もちろん1人ではできなかったことなので、当時の滞納整理チームを代表して受賞させてもらったと考えています。
―― 受賞したときのまわりの反応はいかがでしたか?
岡元さん:まだアワード創設2年目で、今ほど認知されていなかったこともあり、「よく分からないけどすごいね!」という感じでした(笑)。ただ、僕を推薦してくださった上司と父親が特に喜んでくれたので嬉しかったです。
―― 受賞して変わったことは何かありましたか?
岡元さん:これまでも一生懸命に仕事をしてきたつもりでしたが、「頂いた賞に恥ずかしくない働き方をしたい」という想いも加わって、より一層、仕事に励むようになりました。
また、受賞インタビューを見たメディアの方から執筆依頼を頂いたり、研修講師依頼が来たり、初めて出会った方から「アワードを受賞された岡元さんですよね?」と声をかけていただいたりと、外部からの反響が大きかったです。受賞をきっかけに書籍出版の話も頂き、2021年5月には『現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術』(学陽書房)を出版させていただきました。
活動が全国に広がったきっかけは池田市での研修
―― 12年間、熱意をもって滞納整理に取り組めたポイントはどこにあったのでしょうか?
岡元さん:もともと曲がったことが嫌いなんですが、後天的な部分もあります。僕は当初、保育料の滞納整理を5年間やっていました。その当時は、「お子さんを預けて働いて給料を得ているのに保育料を払わないなんておかしい、絶対に正さなくては」という強い想いで働いていました。
もちろん、「完全な悪人」がいるわけじゃなく、それぞれ様々な事情を抱えていて、時には同情するケースもあるけれど、財産があれば差し押さえて保育料を回収していくんですね。そうなると、自分が一生懸命仕事をすることで苦しむ人が出てくるわけです。そういう人たちの切ない顔を見て、「自分は、今後もこの人たちに恥ずかしくない働き方をしないといけないな」と思うようになりました。
―― 岡元さんは全国各地で滞納整理の魅力を伝えてこられましたが、どんなきっかけで活動を始められたのですか?
岡元さん:大阪には「マッセOSAKA」という研修施設があるんですが、平成21年ごろ「徴収力強化研究会」という名の研究会が設立されて、僕も参加したんです。その関係もあって、当時の副所長と仲良くなりました。その後、その方が池田市の人事参与になられた際、池田市の研修に呼んでくださって、数年間にわたって滞納整理の研修を担当させていただいたのがきっかけです。
―― その後、活動範囲が全国に広がっていったんですね。
岡元さん:そうですね。「LG Net(ローカルガバメント・ネットワーク)」という全国の自治体職員が滞納整理などの情報交換を行う組織があるんですが、そこで仲良くなった人たちから「研修に来てほしい」と言われるようになりました。そこからどんどんお声がけいただけるようになり、アワード受賞時には年間10件くらい研修講師の活動をしていましたね。
異動しても、滞納整理はライフワーク
―― 現在は広報紙の編集長をされていると伺いました。
岡元さん:令和4年4月から「経営企画部企画三課広報編集長」という役職を拝命して、『広報ねやがわ』の編集チームリーダーを務めています。市民の皆さまに価値ある情報を届けるべく、新米編集長として奮闘しているところです。令和4年6月号広報ではカメラマンデビューも果たしました(笑)
―― 滞納整理に関する活動はもうされていないのですか?
岡元さん:2018年4月に人事異動で滞納整理部署からは離れましたが、研修講師依頼があれば有給休暇を取得して講師を務めています。年間10件前後は登壇機会がありますね。令和4年度には、日本経営協会(NOMA)関西本部でも講師を務めます。また、執筆依頼も年に数回は頂いています。滞納整理はライフワークなので、今後も継続して関わっていきたいと思っています。
寝屋川市に貢献できるようなチャレンジを継続
―― 岡元さんの今後の展望を教えてください。
岡元さん:アワードを受賞したからといって浮かれるわけにはいきません。受賞者である以前に寝屋川市の職員なので、与えられた役割をしっかり果たしたいと思っています。広報編集長として、市をより好きになってもらえるような情報発信に取り組みたいです。
また、昨年度に出版した本の印税は全額を寝屋川市のために使うと決めています。これまで頂いた分は先日、寝屋川市にふるさと納税しました。今後も、個人的な活動と寝屋川市への貢献がリンクするようなチャレンジを続けたいと考えています。
―― そこまで寝屋川市に貢献したいと思える理由はどこにあるのでしょうか?
岡元さん:就職氷河期に公務員として採用してくれた寝屋川市に恩を感じているからです。『恩返し』ですね。加えて、自分の生活基盤を支える給料を寝屋川市から頂いている以上、課外活動で得た成果が組織にもプラスになるようにデザインする方がいいのではないかと考えています。その方が周囲からも応援してもらいやすいんじゃないかと。
推薦する・されるという事実が美しい
―― ちなみに、地方公務員アワードを受賞する上でのポイントは何かありますか?
岡元さん:地方公務員アワードは推薦文だけが頼りです。だから「この人をどうしても受賞させたいんだ!」と推薦文に情熱を注いでもらえるような働き方をしていて、応援してもらえる人であることがポイントだと思います。あとは、人との出会いを大切にすることも重要ですね。
―― 岡元さんは普段から「応援される人」を意識しているんですか?
岡元さん:僕は自分の力を全く信じていなくて、1人では何もできないと思っているんです。「色んな人の力を借りてこそ何かを実現できる」というのが前提としてあるので、人の力を借りられるような人であり続けたいですね。
―― 岡元さんは、2019年と2020年に審査員を経験されていますよね。
岡元さん:素晴らしい推薦文ばかりだったので、審査するのは難しかったです。受賞するかどうかは「紙一重」という印象なので、受賞できなかったとしても落胆してほしくないですね。
―― 最後に、地方公務員アワード2022に向けてメッセージをお願いいたします。
岡元さん:僕は、「誰かから評価されなくても一生懸命頑張っている人」に光があたる地方公務員アワードをすごくすてきだなと思っています。受賞する・しないにかかわらず、誰かのことを推薦するという行為自体がすごく尊くて、いい取り組みだと感じています。
この機会を活用して、普段なかなか伝えることのない「あなたってすごいよね」という想いを、推薦文という形で伝えてあげてほしいです。ダイヤモンドも暗闇ではただの石ころですから、ぜひとも皆さんが光をあてて、その価値を多くの方に知らせてほしいと思います。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」
「自治体業務マニュアルアワード2022」について
【開催概要】
1)スケジュール
・推薦・応募受付期間:2022年5月31日(火)~7月7日(木)
・結果発表(WEB上)2022年8月中旬
・表彰式:2022年10月7日(金) ※スケジュールは変更する可能性がございます
2)応募・推薦方法
▼詳細はこちらから
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022』開催のお知らせ
3)結果発表等
・2022年8月中旬に、『Heroes of Local Government』 にて掲載
・2022年10月7日(金)夕方に表彰式開催予定(変更可能性有)
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多種多様な仕事がある自治体の現場において、人事異動は「転職」と称されるほど。これまでの経験が活かされず、途方にくれるといった話も耳にすることが多い。
そこで、ジチタイワークスでは『自治体シゴトのテキスト』という企画をスタート。多種多様な自治体業務について、その業務に精通する方にその業務のやりがいや魅力、仕事のポイントなどについて紹介いただく企画。
今回のテーマは「滞納整理」。ご登場いただくのは「現場のプロがやさしく書いた自治体の滞納整理術」の著者である寝屋川市職員の岡元譲史さん。今では全国で滞納整理の研修講師を務める岡元さんだが、実は「滞納整理1年目は辞めることばかり考えていた」とのこと。岡元さんのテキストには、いったいどんなことが書かれているのだろうか。