ジチタイワークス

【宮下 智さん】発信しなければ誰も気づかなかったかもしれません。

地方公務員の他薦にもとづき、現役の地方公務員が審査を行い、「本当にすごい!」と思う地方公務員を表彰する取り組みである「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。株式会社ホルグが毎年開催し、2022年で第6回目の開催となる。

そこで、ジチタイワークスも協賛メディアとして、アワードを盛り上げるべくコラボレーション。

第3回目は、2020年度の受賞者である群馬県庁・宮下 智さんの「あの人は今?」にフォーカス。
「すごいと言われることをやっていても、発信しなければ誰も気づかなかったかもしれません。」と語る宮下さん。受賞当時の状況や、受賞取り組みのその後、公務員アワードに対する想いを伺った。

宮下 智(みやした さとる)さん
群馬県・知事戦略部デジタルトランスフォメーション戦略課

プロフィール

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」受賞

京都大学法学部卒業。大学卒業後、群馬県庁入庁。財政、健康福祉、市町村支援、中小企業支援、まちづくりなど幅広い業務を担当。
商政課時代に取り組んだ様々なまちづくり推進事業で、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」の「ジチタイワークス賞」も受賞。2020年3月に発足した「NPO法人自治経営」では理事に就任(現在は会員)、また2022年7月からは「都市経営プロフェッショナルスクール」の講師も務める。

 

悔しい経験をバネにプライベートでの活動を開始

―― まず、受賞当時の状況、仕事観や想いも含めてぜひ聞かせていただきたいと思います。

宮下さん:受賞当時は産業経済部労働政策課で障害を持った方の就職支援の仕事をしていました。娘に障害があることもあり、自分ごととして情熱を持って取り組んでいましたね。

その直前、商政課でまちづくりの仕事をしていたときに、官民が連携し遊休不動産を活用して都市の経営課題を解決していく「リノベーションまちづくり」に出会いました。その実践として、公私にわたって仲間と県内各地の使われていない公共空間を活用したマーケットを開催していたのですが、その活動などを評価していただき受賞に至りました。


 

―― プライベートでも活動を始めたきっかけは何かあったのでしょうか?

宮下さん:プライベートで活動を始めたのは2018年です。その前年に、県庁前にある芝生広場を使って庁内や民間の仲間とナイトマルシェを開催したところ、約1,000人が集まり、出店者さんの売り上げもしっかりと立ち大成功でした。しかし残念なことに、「イベントをやると芝生が傷む」という理由でその後開催することは許されませんでした。県有不動産から地域経済循環を生み出し、税金を使わずに地域を良くする流れをつくりたかったのですが、不完全燃焼のまま異動することになりました。

その翌年、木下斉さんらが主催する「都市経営プロフェッショナルスクール」に入門しましたが、「学びながら地域で実践する」ことが求められる厳しいスクールだったこともあり、都市経営について勉強しながらプライベートで仲間と公共空間を使ったマーケットを県内各地に展開していきました。
 

―― そういった活動が知られて推薦に至ったのですね。

宮下さん:はい。それ以外にも、太田駅の北口エリアで地元の飲食店のオーナーさんたちとリノベーションまちづくりを実践したり、公営競技である伊勢崎オートレースの活性化に取り組んだりと色々な活動していたので、推薦してもらえたのだと思います。
 

―― 受賞時のまわりの反応はいかがでしたか?

宮下さん:一緒にまちづくりをしてきた仲間や職場の同僚、また家族や両親もすごく喜んでくれました。

あとは知事のYouTube番組に出演依頼があって、そこで受賞の報告をしたところ、「群馬の誉だ」と褒めていただいたのがすごくうれしかったですね。知事と直接話す機会はなかなかないので、とても刺激的で楽しかったです。
 

得意分野の官民連携で地域の盛り上げ役に

―― 今働かれている部署と仕事内容について教えてください。

宮下さん:「知事戦略部デジタルトランスフォメーション戦略課」で、県庁32階にある官民共創スペース「NETSUGEN(ネツゲン)」の運営を担当しています。新たなビジネスや地域づくりにチャレンジする人が集まるイノベーション創出拠点として、日々多様なセミナーや交流イベント、ミーティングなどが活発に行われています。

オープンから1年半が経ちますが、今や100を超える企業や個人が月額会員となっていて、まさに群馬の「熱源」として非常に盛り上がってきています。私もこれまでの経験や人脈を活かし、そこに集まる皆さんのコーディネート業務を行っていますが、毎日が刺激的でワクワクしながら仕事をしています。これは余談ですが、32階からの眺望は素晴らしくwi-fiも超高速で、こんな快適な環境で働いている公務員は他にいないかもしれません(笑)。ぜひみなさんも一度、NETSUGENに遊びに来てください。いつでもお待ちしています。


 

―― 今後のご展望は何かありますか?

宮下さん:実は、地方公務員アワードを受賞した半年後に「公民連携の取り組みにより地域を活性化した」ということで知事から表彰もされました。職員が個人で表彰されること自体がすごく珍しいことで、これはアワードのおかげだと思っています。

またこうした流れがあったからこそ、官民共創の部署に配属されたのかなと思っていて、これからも官民共創スペース「NETSUGEN」が盛り上がるように、自分の持っているリソースを全て注ぎ込んで精いっぱい頑張っていきたいです。
 

持続可能な地域をつくるために活動

―― 宮下さんのお話を伺っていて、地域での経済循環や持続可能な地域づくりにこだわって、仕事やプライベートの活動に情熱を持って取り組んでいると感じました。

宮下さん:もちろんその想いはありますね。子どもたちのためにも、人口が減っても持続可能な地域を残していきたいと思っています。
 

―― その想いはどうやって形成されたのですか?

宮下さん:就職した頃からなんとなく意識していました。「働き方改革」という言葉が出てくるだいぶ前から、ワーク・ライフ・バランスや多様な働き方に興味があり、意識して効率的に仕事をして残業せずに帰っていましたが、これも人口や税収が減り公務員の数が減ったとき、今までの働き方では通用しないという考えがあったからだと思います。

あとは補助金に頼らずに規制緩和等を進め、民間のプレイヤーに活躍してもらうフィールドを用意することも、持続可能な地域づくりのためにはとても大切で、これは「リノベーションまちづくり」や「都市経営プロフェッショナルスクール」を通じて学んだことです。今では自分の行動を決める大切な軸となっていますね。
 

自分のアタマで考えてチャレンジする公務員を育成

―― 受賞した取り組みの現状について教えてください。

宮下さん:太田駅北口の活性化の取り組みは順調ですね。地元の飲食店オーナーさんたちとプライベートで小さくはじめたのですが、今ではマルシェなどのイベントの際に太田市が後援してくれたり、市有地を貸してくれたりして、規模がどんどん大きくなっています。また、3階建てのビルをリノベーションしてみんなが集まれる拠点をつくる「WARPビルプロジェクト」など、新しいことにも楽しみながらチャレンジしています。
 

―― 伊勢崎オートレースの活性化はいかがですか?

宮下さん:新型コロナウイルスの影響でファン同士の交流会などができずなかなか厳しい状態ですが、SNSでの情報発信は毎日続けています。その甲斐もあってか、コロナ禍でもオートレースの売上は大きく伸びているんです。売上の一部は繰入金として伊勢崎市の収入になるのですが、去年は1億円、今年は3億円と順調に回復しておりとてもいい流れですね。
 

―― 宮下さんは「NPO法人自治経営」の活動もされていますよね。

宮下さん:受賞する直前に仲間と一緒に立ち上げて、様々な取り組みを実践しています。今は、公務員をアップデートする事業の責任者として、「公務員力養成講座」という連続講座を定期的に開催しています。6回の講座を1クールにして、地域で情熱を持って活躍している公務員に講義をしてもらい、その後にディスカッションする内容です。これまで100名以上が参加してくれて、参加者同士のネットワークもどんどん広がっています。


 

――「都市経営プロフェッショナルスクール」の講師にもなられたと伺いました。

宮下さん:7月に新しく開校する北陸富山キャンパスの講師となりました。今の自分を育ててくれたスクールなので、講師として呼んでいただき大変うれしく思っています。「前例踏襲ではなく、自分のアタマで考えてチャレンジする公務員を増やしたい」という自分の想いを体現するスクールなので、恩返しの意味も込めて全力で頑張りたいと思います。
 

―― 自分のアタマで考えてチャレンジする公務員を育成する上で、伝え方をどう工夫されていますか?

宮下さん:まずは自分のこれまでの経験を話していくことが多いですね。その際に伝えたいメッセージは「小さな1歩でもいいから、まずは踏み出してみよう」ということです。組織の中で常識だと思われていることが必ずしも正しいとは限らない。もし違和感を感じたら、小さなことでもいいから自分のアタマで考えてチャレンジしてみよう。失敗してもチャレンジしている限りは失敗にはならず、経験値が積み重なるから、次はもっと成功に近づくと思うんです。
 

受賞のポイントは自己発信

―― 地方公務員アワードを受賞するコツは何かありますか?

宮下さん:当時はもちろん意識していなかったんですが、今振り返るとSNSで自分たちの取り組みや想いを日々発信していたことが良かったのかなと思います。すごいと言われることをやっていても、発信しなければ誰も気づかなかったかもしれませんので。


 

―― 最後に、今年の地方公務員アワードに向けてメッセージをお願いします

宮下さん:公務員は基本的に裏方の存在でなかなか光があたりにくいんですが、地方公務員アワードはそこに毎年光をあてて、頑張っている職員を浮かび上がらせています。受賞した公務員は自分のアタマで考えて新しいことにチャレンジしてきた方だと思うので、このアワードから刺激を受けてみんながチャレンジするようになると、もっと地域は良くなるし、もっと楽しくなると思います。

みなさんもぜひ、まわりの頑張っている公務員を見つけて推薦してみてください。今年のアワードが盛り上がることを願っています!

 


「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」
「自治体業務マニュアルアワード2022」について

【開催概要】
1)スケジュール

・推薦・応募受付期間:2022年5月31日(火)~7月7日(木)
・結果発表(WEB上)2022年8月中旬
・表彰式:2022年10月7日(金) ※スケジュールは変更する可能性がございます
 

2)応募・推薦方法

▼詳細はこちらから
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022』開催のお知らせ
 

3)結果発表等

・2022年8月中旬に、『Heroes of Local Government』 にて掲載
・2022年10月7日(金)夕方に表彰式開催予定(変更可能性有)

 


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