地方公務員の他薦にもとづき、現役の地方公務員が審査を行い、「本当にすごい!」と思う地方公務員を表彰する取り組みである「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。株式会社ホルグが毎年開催し、2022年で第6回目の開催となる。
そこで、ジチタイワークスも協賛メディアとして、アワードを盛り上げるべくコラボレーション。
第2回目は、2020年度の受賞者である掛川西高校・吉川 牧人さんの「あの人は今?」にフォーカス。
「実は苦手だったテクノロジーの分野ですが、やりたいことを実現するために新しいことにチャレンジしていきました。」と吉川さん。受賞当時の状況や、受賞取り組みのその後、公務員アワードに対する想いを伺った。
吉川 牧人(きっかわ まきと)さん
静岡県立掛川西高校 世界史教諭・研修課長・ICT推進委員長
プロフィール
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」受賞
1974年生まれ。高校では世界史を担当、ICTやアクディブラーニング、グローバルが融合した授業を目指す。また学校が生徒を手放し、地域や社会と生徒を育むプロジェクト型学習なども行う。
Apple Distinguished Educator、Google認定イノベーター、マイクロソフト認定教育イノベーター2020-2021 2021-2022(MIEE)。
担当教科にとどまらない幅広い活動
―― まず、受賞当時の状況を教えてください。
吉川さん:現在と同様、静岡県立掛川西高等学校で研修課長とICT推進委員長を務めていました。あとは任意団体「掛川市プロジェクションマッピング実行委員会」を地域の方々と一緒につくって、代表理事として地域活性化の活動を色々してきました。
―― 研修課長やICT推進委員長として、具体的にどんなお仕事をされているんですか?
吉川さん:アクティブラーニングに関する研修による授業改善や、ICTを活用した授業のコーディネートや研修をやっています。また、地域で色々なことを実践されている方に学校でワークショップをしていただく際のつなぎ役もしています。
―― 吉川さんは世界史の先生ですが、ICT分野で活躍されるようになったきっかけが何かあったんですか?
吉川さん:僕はApple、Google、Microsoftの認定教育者なので、テクノロジーにすごく詳しい人だと思われがちなんですが、実はそんなことは全然ありません(笑)。前任校で働いていたころはテクノロジーが苦手な方でした。でも、今の学校に来て新しいことにチャレンジしていく中で、テクノロジーを使えば自分のやりたいことをどんどん実現していけるなと実感したんです。
高校生と地域をつなぐ企画を主導
―― 受賞取り組みの概要についても教えてください。
吉川さん:僕が勤めている静岡県立掛川西高等学校は、掛川城の隣にあり、お城に密着した学校です。また、生徒自身がお城を使って地域に貢献したい想いが強かったので、高校生と地域をつなぎ、掛川城でプロジェクションマッピングをすることにしました。
―― プロジェクションマッピングの活動は、今も継続されているんですか?
吉川さん:新型コロナウイルス感染症の影響でかなり活動しづらくなったんですが、昨年末に9回目のプロジェクションマッピングを実施しました。久しぶりのリアルイベントで、約3000人が集まりました。YouTubeでのライブ配信やパンフレットの電子書籍化など、リアルとオンラインを融合できたことが昨年度の大きな成果かなと思います。
―― イベントでは生徒さんと一緒に活動されるんですよね?
吉川さん:はい。でも、うちの生徒だけでなく、他校の生徒も一緒にやっているので、地域を巻き込んだ大きなプロジェクトになっています。うちの学校の中では当初、有志で取り組んでいたんですが、今はパソコン部という枠組みでやっていて、プロジェクションマッピングをしたいから入部する生徒がたくさんいる状況です。
―― また、受賞当時はnoteのフォロワー数が8,000人を超えていましたよね(2022年6月22日現在で9,138人)。学校の先生はとても忙しいイメージがあるのですが、お仕事と課外活動をどう両立させているんですか?
吉川さん:課外活動は仕事が終わった後や休日に取り組んでいます。前任校では女子バレー部の顧問をしていて、練習や試合、合宿に時間を使っていましたが、今はそれらの時間を課外活動に使っているイメージです。活動は趣味の要素が強くて、生徒も楽しんでいると思いますが、それ以上に僕が楽しんでいますね(笑)。地域の方々と色々な交流をすることで僕の楽しみも増えていくし、その中から新しいプロジェクトが生まれてくるという良い循環になっていると思います。
地方公務員として評価されることが新鮮
―― 受賞したときのまわりの反応はいかがでしたか?
吉川さん:大変失礼ながら、僕は当時この賞を知りませんでした。日頃から様々なプロジェクトを一緒にやっている経営者の方々から「地方公務員アワード受賞おめでとうございます」と連絡が入って、受賞したことを知りました(笑)。僕を推薦してくれたのは、会ったことのない福岡の中学校の先生で、受賞をきっかけに面識ができました。
―― 地方公務員アワードを知った後は、受賞に対してどんな気持ちになりましたか?
吉川さん:地方公務員アワードが素晴らしい賞だと分かったので、まわりの方々からの祝福が本当にうれしかったです。
また、2021年2月に『ヤングジャンプ』で特集していただいたことが特に思い出に残っています。読んできた雑誌に自分の名前が載ることがとてつもなくうれしくて、誇らしかったですね。
―― 受賞して変化したことはありますか?
吉川さん:他の受賞者の方々と決定的に違うことだと思うんですが、この賞をとって初めて「僕って地方公務員だったんだ」と気づきました。公務員より教員のカテゴリーが強い中で約20年間やってきたので、「そういうくくりで評価していただくこともあるんだな」と新鮮でしたね。
キーワードは「化学反応」
―― 吉川さんが地方公務員アワードを受賞されたポイントは何だったと思われますか?
吉川さん:公務員って目立たないし、主張する習慣がない仕事だと思うんです。でも、僕はその中で、教育活動をnoteで発信したり、懸賞論文を書いて賞をもらったりしていました。そういう取り組みが積み重なって評価していただいたのだと思っています。
―― 吉川さんが普段意識されていることはありますか?
吉川さん:前提として、今まで教員から生徒に教える構造でやってきた中で、時代の流れの速さや情報量の増え方に学校が対応できなくなったと感じます。だからこそ、社会で活躍している魅力ある地域の方々と生徒をつなげることが重要だと思っているので、高校生と大人をつないで化学反応を起こすことを意識してやっています。また、人をつなげることで、自分自身が成長したり新しい分野に踏み込んだりできるので、そういった経験が僕の考え方を大きく変えてきた気がします。
―― 今後の展望について教えてください。
吉川さん:最近では、プロジェクションマッピングに加えて、地元スーパーとお弁当やお総菜を開発してコンテストで賞をとったり、農園とコラボして新しい商品を開発したりしています。地元企業とつながって新しい価値を生み出すことにこだわっているので、活動の幅をどんどん広げていきたいです。地域の方々と生徒の視野が広がったり、地域で新しい価値が生まれたりしたらいいと思っています。
―― 生徒さんにとっても、きっと面白い経験になりますよね。
吉川さん:今まで、知識を詰め込ませたり良い大学に行かせたりするのが学校の当たり前だったと思うんですが、テクノロジーが進むことで世界の価値観がどんどん入ってきて、当たり前が大きく崩れてきました。
最近は起業したい生徒も増えていますが、アントレプレナーシップを身につけさせようとしても学校には起業の経験者がいないので、いかに地域の経営者と生徒をつなぐかが重要になってきたと痛感しています。市役所や県庁など、あらゆるところで同じような転換を迎えてきているような気がしていて、公と民の良い化学反応が求められているなと感じます。
アワード参加は職場にとっても大きなチャンス
―― 最後に、地方公務員アワード2022に向けてメッセージをお願いいたします。
吉川さん:どこの職場でも輝いている人はたくさんいるはずで、みんなで応援することは大きな価値があると思います。また、輝いている人を素晴らしいと認識して発信することは、自分たちの仕事を俯瞰で見たり、職場への誇りを持ったりできる大きなチャンスになるはずです。多くの方々が参加してくださることをお待ちしています。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」
「自治体業務マニュアルアワード2022」について
【開催概要】
1)スケジュール
・推薦・応募受付期間:2022年5月31日(火)~7月7日(木)
・結果発表(WEB上)2022年8月中旬
・表彰式:2022年10月7日(金) ※スケジュールは変更する可能性がございます
2)応募・推薦方法
▼詳細はこちらから
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022』開催のお知らせ
3)結果発表等
・2022年8月中旬に、『Heroes of Local Government』 にて掲載
・2022年10月7日(金)夕方に表彰式開催予定(変更可能性有)