新型コロナの影響で、住民と関わるイベントなどの機会が減り、地域との距離を感じている職員も多いのではないだろうか。
村橋さんは住民の身近な存在になるべく、休日に地域とつながる機会をつくり、イベントで出店の接客をするなど幅広い仕事を手伝っている。
※下記はジチタイワークスVol.24(2023年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
熊本県 阿蘇地域振興局 総務振興課
村橋 友介 さん(入庁4年目)
地域に飛び込み、人とつながる“レンタル公務員”の面白さとは。
住民からの依頼に応え、様々な仕事を無償で手伝うレンタル公務員として自主的に活動する村橋さん。令和4年1月から始動し、約10カ月で30件以上を引き受けた。公務では経験できない作業にも携わり、住民との関係性を築けることがやりがいだという。活動開始から1周年を迎えて感じるのは、“特別な技術があるわけでもない自分に興味をもってくれることへの感謝”。活動で得た出会いは、本業の地域振興にも活きているようだ。
地域と直接関わるために。
令和3年度、希望していた地域振興局に配属されました。阿蘇地域の移住促進や観光PRなど、地域とつながる仕事をしたいと思っていましたが、コロナ禍で住民と関わる業務はほとんどありませんでした。“このまま異動まで過ごすのはもったいない、阿蘇地域にいる意味がなくなる”と焦りを感じ、何かできることはないかと情報収集する日々。そこで他県職員の“レンタル何でもする公務員”の活動を知りました。住民の依頼を受け、休日にごみ拾いや草刈りなどを無償で手伝うというものです。自分にもできるかもしれないと思い、令和4年1月から同様の活動を開始しました。
SNSで依頼を募るも、すぐには来なかったので、観光協会から手伝える作業をもらったのが最初。そこから徐々に実績や人脈が広がり、30件以上を引き受けました。阿蘇地域の各所に赴き、内容は大工・ウエディングスタッフ・まき割り・カフェ店員など多種多様。接客では、人と話すことが好きなところが活かされています。ウエディングスタッフは一生に一度の大イベントを手伝う責任感にとても緊張しました。どれも公務員としてはできない経験で、そこに関わる皆さんの気持ちに触れられることが楽しみです。
住民に光を当てる活動を。
活動を始めて4カ月ほどは、とにかく場数を増やそうと前のめりになり、活動すること自体が目的化してしまっていました。ちょうどその頃、作業に工夫が足りていないことを依頼主から指摘されたのです。これをきっかけに、相手の求めているものは何か、自分の役割とは何かを考え直しました。活動はあくまで地域とつながる手段で、目的は依頼主への貢献。意識を改めてからは、その日の依頼に限らず、住民が必要としていること、求めていることを本質から理解しようと心がけています。また、それぞれの熱意を知るたびに、自分は裏方として地域を支え、住民一人ひとりを主役にしたいという思いがより強くなります。
本業で地域に入る機会がなかったことが活動のきっかけですが、結果として公務だけでは得られない出会いが増えました。県のイベントも徐々に再開でき、知り合った人同士のつながりをつくるなど、活動の経験が本業に活かせることも原動力に。今後、他地域にもレンタル公務員が生まれたなら、情報共有や現地交流ができるネットワークをつくりたいです。そして、私たちの活動を通じて、地域の様々な取り組みや、住民の皆さんの思いにスポットを当てられるようになりたいです。