栃木県足利市

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日々の“5S運動”が業務改善の視点を育て、DXの土台となった。

情報政策
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日々の“5S運動”が業務改善の視点を育て、DXの土台となった。

日常的に続けてきた改善活動を基盤にDXを推進

足利市では、全庁で取り組んできた5S(整理・清掃・整頓・清潔・しつけ)運動を通じて、業務を見直す土壌を築いてきた。その積み重ねがシステム導入前の業務整理を支え、DXの推進につながっているという。

※下記はジチタイワークスVol.44(2026年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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足利市
行政経営部 行政管理課
主任 増居 健也(ますい けんや)さん

日常的に全庁で続けてきた5S運動がデジタル化前の業務整理を支えた。

同市で5S推進に向けた動きが始まったのは、平成21年。商工会議所を中心に市内企業などで取り組みが広がる中、市役所でも検討を進めたという。平成23年には、職場環境の改善を通じて、市民サービスの向上や業務効率化などにつなげることを目的に、全庁的な取り組みとしてスタート。平成24年度からは、毎月5日を「5Sの日」と定め、不要なごみ箱の撤去や備品の定位置化など、継続的に実践してきた。「来庁した市民に、スピーディに気持ちよく帰ってもらえる職場を目指してきました」と増居さん。また、取り組みを一部の部署にとどめず、全職員が関わる体制を整えた。各職場では中堅職員が5Sリーダーを担い、その年度に進める改善施策を検討。幹部職員が管理や助言を行い、組織全体で見直しを進めているという。「各職場で毎年1件以上取り組むこととしており、長年続けてきたことで、改善を進める意識が自然と根付いてきました」。

そうした中、令和3年度に「デジタル先進市役所」を政策に掲げる現市長が就任したことをきっかけに、DX推進の動きが本格化。同市では、システム導入を急ぐのではなく、まず業務上の課題整理が必要だと判断。5S運動で培ってきた視点を活かし、デジタル化に向けて、事前の環境整備や業務整理を進めていったという。

業務量の可視化により優先度を判断し効果の高い手続きから改革を進めた。

まず“デジタル化に向けた5S”として、ペーパーレス化やパソコン内の不要なデータの削除、メールの整理などを全庁で一斉に進めた。背景には、紙の運用による事務負担の軽減に加え、加速するデジタル化への備えがあったという。「デジタル化が進めばデータ量も増えていくので、データの保存方法や運用も見直しておく必要があると考えました。また、システムを入れてから運用を合わせるのではなく、先にデジタル化の土台を整えることを重視しました」。その結果、紙の使用量を減らしただけでなく、1年間で写真データ約9万枚分に相当するデータ量を削減したそうだ。

こうした事前整理の考え方は、窓口改革にも広げられた。同市では“書かない窓口”の導入にあたり、対象手続きを選定するために、まず各課にヒアリングを実施。年間の受付件数や1件当たりの処理時間を調べ、業務量を可視化したという。「全ての手続きを一度に変えるのではなく、効果が高いものから段階的に進めました」。また、複数の関連手続きで重複する入力項目の統合なども実施した。その結果、導入課における合計受付件数のうち、約8割をシステムで対応できる状況になったという。

さらに、市民ホールからは申請書の記載台を撤去。「記載台があると、“申請書は書くものだ”という前提が残ってしまいます。そうした既成概念をなくし、市民と職員が自ずとデジタル化に向かう環境を整えました」。業務そのものだけでなく、窓口の環境まで見直したことが、効果的なDXにつながっている。

▲記載台を撤去した後の市民ホールの様子。環境面からも変化を促す。
▲記載台を撤去した後の市民ホールの様子。環境面からも変化を促す。


改善事例の表彰や横展開で業務変革の動きを全庁へ。

5S運動を一過性で終わらせないため、同市では行政改革の計画における数値目標の一つとして、“5S運動の表彰件数”を設定している。毎年度、各職場から実践報告を集めて庁内で審査し、優れた事例を表彰。さらに、その内容をほかの部署にも展開しているという。「受賞事例を共有することで、各部署の改善を広げ、全庁的に業務を進めやすくしています」。

近年は、市の課題に合わせて重点テーマを設定。令和7年度は、内部事務の効率化を目指す“事務の5S”の積極的な報告を募り、過去最多の25件が集まった。「生成AIを活用した効率化や、データを使った対象者の自動抽出などが寄せられました」。加えて、事務室・倉庫の書類整理などの“モノの5S”や、事業の廃止・統合などの“事業の5S”も含め、全体では74件にのぼったという。

日常的な見直しが定着し、DXにつながる改善も増えているそうだ。例えば、ある消防署では、ホワイトボードに記載した内容を写真からAIでデータ化し、勤務日誌に自動転記できる仕組みを職員自らが開発。費用をかけずに活用でき、削減された時間をより付加価値の高い業務に活用することができる。

5S運動やDXは一度きりの取り組みではなく、継続的な改善活動だ。今後も庁内で事例を共有しながら、市全体として、市民サービスの向上と事務の効率化につなげていく考えだ。「非効率な作業のままデジタル化すると、かえって業務を複雑にしてしまいます。システム導入をゴールとせず、事前の業務見直しを徹底し、DXを本来の“業務変革”として進めていきたいと考えています」。

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