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【区長の本音<14>葛飾区長・青木 克德さん】安全と人情が両立するまちづくりを。

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【区長の本音<14>葛飾区長・青木 克德さん】安全と人情が両立するまちづくりを。

区長公選制復活から半世紀、基礎的な地方公共団体となって25年という大きな節目を令和7年に通過した東京23区。そんな日本の首都を支える区長の皆さんの素顔と“本音”をご紹介する連続インタビューの14回目は、葛飾区・青木 克德さんが登場。区政一筋に歩んできた原点と、子育て支援、駅前再開発、地域交通などの重点政策についてお話をうかがった。

※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

職員として42年。適正に評価されるまちを目指して。

― まず青木さんが区長になった理由をお聞かせください。

地元亀有の小学校、中学校に通い、高校卒業後に葛飾区役所に入って、当時から“葛飾区をよくしたい”という思いがありました。はじめから区長になろうと考えていたわけではありませんが、自分の住んでいるこのまちが、必ずしも適正に評価されていないと常々感じていたからです。

バブルの頃まで、東京の東側の下町エリアが総じて低く評価されていた面がありました。“下町といえば人情”とよく言われますが、当時はそれがべたべたした否定的なものと捉えられていました。東日本大震災以降は“絆”が大切だという流れになって再評価されてきていますが、自分の住むまちが正しく評価されて、区民が、特に子どもたちが自信をもって暮らせるまちであってほしい。その思いで区長をやっています。

― 区職員として42年以上勤務された上での立候補でした。

区の職員として地域振興部長や政策経営部長などを務めてきましたが、基本構想や基本計画を策定するうちに、葛飾区を良くする政策を具体的に実現していきたいと考えるようになりました。前任の区長から「出馬してはどうか」というお話もあり、ぜひ区長としてやってみたいと思ったのです。

ちょうど60歳になったときで、次のステップとして頑張ってみようと決めました。毎日1人で駅前に行き、看板を立てて話をしたのです。勝ち負けを考えずに3カ月、全力で頑張り、結果として当選することができました。自分が考えている仕事を少しでも前に進めたいという思いでした。2期目の当選をした頃からは、「安全なまちにしたい」、「子育てを大切にする地域にしたい」ということを、より具体的に考えて取り組んできました。

区民一人ひとりの声を聴き、期待に応えるのが仕事。

― 職員の仕事として一番印象に残っているのは何でしょうか。

区の基本構想・基本計画をつくったことですね。昨今はコンサルタントなどの専門家に依頼することも多いようですが、当時はそういうものがなかったので、人口推計など色々なことを全部自分たちでやりました。資料をつくるだけでも1年ぐらいかかりましたが、とても勉強になりました。福祉、まちづくり、防災など、区政全てについて何年も取り組んだことで、全体を見る力が養われたのではないかと思います。

もう一つは、地域振興部長として現場に赴き、色々な声を聞いたことです。計画をつくるときは統計データや社会の流れを重視しますが、それとは別に、現場では区民一人ひとりの思いが違います。そこに暮らす方々の現場の声をどう受け止めて施策につなげていくのか、その難しさや大切さを学びました。

― 区長に就任されて16年半になります。区長とはどういう仕事だとお考えですか。

今、葛飾区には約47万4,000人の区民がいます。子ども、高齢者、障害のある人、働いている人、働いていない人など、置かれている状況は様々です。最近は外国の人も増えている。そういった多様な人たちの期待にどう応えるか。全体としてだけではなく、一人ひとりの期待に応えていく。いつも「区民第一、現場第一」と言っていますが、多様な区民がいることを認識したうえで、現場で知った色々なことを基に、区民のための政策を組み立てることが大事だと思っています。

区長が区民の声を“直接聞く”ことが重要だと考えています。毎年開催している区民との意見交換会はもちろん、様々な会議やイベントにできる限り参加し、意見に耳を傾けます。スーパーマーケットで買い物をしているときに区政への要望をお聞きすることもあります。

駅前再開発で建物の耐震化・不燃化を進める。

― 区長就任後、印象に残っている仕事は何でしょうか。

「子育てするなら葛飾区で」とずっと言ってきて、子育て支援の充実のために取り組んだ施策の1つが、給食費の無償化です。23区の中でいち早く実施しましたが、結果として都内全域が追随し、今では国が補助を出すのが当たり前のようになりました。政策はタイミングを捉えてやることが大事だと改めて感じていますが、子育て支援・教育に力を入れていることを区民に理解してもらう意味で効果的でした。

2点目は医療環境の充実です。区内の病床数が足りないという話があり、新小岩に総合病院を誘致しました。救急病院としての位置づけで、非常に喜ばれています。また、区内にあった日本赤十字社の産婦人科医院の区外移転を回避できたのは本当に良かったと思います。区内に周産期医療の中核となる産院があるのは、とても大事なことですから。

3点目は市街地再開発です。亀有、金町に続いて、新小岩、立石の駅前で進めています。特に立石の再開発について私が初めて選挙に出た16年前は、多くの人が反対していました。しかし安全・安心なまちをつくるうえで、木造家屋が密集している駅前の建物の耐震化・不燃化は避けて通れません。最近になって“安全で安心なまちをつくる”ということに理解が得られるようになり、着工できました。

亀有、金町の再開発についても様々な意見がありましたが、再開発事業が完成すると、下町らしい感じはしっかり残しつつ、若い人にも子育て世代にも住みやすいまちになっています。これからもこうしたまちづくりを進めていきたいと思っています。

― 区の将来像をどのように描いているのでしょうか。

区民へのアンケート調査を長く実施していますが、もっとも多い回答は、「災害に強いまち」、「防犯が整った安全なまち」です。今後は、立石に続き、京成高砂や青砥などの市街地再開発や、四つ木や新小岩などの木造住宅密集地域の不燃化を順次進めていきたいと思っています。安全なまちにすることは、若者から高齢者まで多くの人に住んでもらうことにつながります。

また、水と緑を活かしたまちづくりを大事にしており、今年は「全国みどりと花のフェアかつしか」や全国「みどりの愛護」のつどいを開催しました。さらに、葛飾区は川が身近にありますので、川を活かしたまちづくりを進めていきたい。今、国土交通省と一緒に、中川の河川敷整備などをはじめとする「中川かわまちづくり」を進めています。イベントが開けるような水辺空間を創出する計画です。

まちづくりの根底にあるのは下町であるということ。人情の良さがあって、そして、安全で暮らしやすいまちであること。これが大事だと思っています。

BRTで南北連結へ。「寅さん」「こち亀」も支援。

― 今年度の予算で特に力点を置かれたポイントをご説明ください。

物価高騰対策や企業支援に力を入れています。法人15万円、個人事業主3万円の支援を葛飾区独自で盛り込みました。葛飾区は中小企業や町工場の力に支えられてきたまちです。その力を守り、さらに伸ばしていくためにも重要な施策だと考えています。

地域交通は高齢者が外出する際に非常に重要であり、継続して力を入れていきたいテーマです。区長になってから、交通不便地域の解消に向けてバス運行の実証実験を行い、その結果を踏まえて本格運行へ移行した路線もあります。

― 懸案となっていたJR新金線(※1)の活用では、BRT(※2)導入を打ち出しました。

鉄道において大事なことは定時性と本数と輸送力です。区内の南北の移動は路線バスがありますが、より定時性と本数が確保できて多くの人数を運べる路線ができれば、沿線地域はさらに活性化すると思っています。

新金線についてはJR東日本・JR貨物とずっと話をしてきましたが、貨物線を廃止できないというのがJR側の意向です。そこで、複線用地を区に譲っていただき、そこをバス専用道としてBRTを導入する方針です。今考えられる条件の中で、思い切って進めようということです。

― シティプロモーションにも力を入れていますね。

区長に就任した際、広報に力を入れていきたいと考えました。行政の取り組みは、実施するだけでは十分に伝わりません。その目的や背景、生活とのかかわりを丁寧に発信してこそ、正しく理解され、評価され、多くの方の関心や参加にもつながっていく。そのためにも広報の役割は非常に大きいと思っています。

葛飾区には町会ごとに100カ所以上の盆踊りなど、イベントがたくさんあります。年の暮れにはみんなで餅をついて食べて楽しむ。人の結びつきがあって、にぎやかだけれども落ち着きのある、そんなまちの様子を知ってもらいたいですね。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の秋本 治先生は亀有に、「キャプテン翼」の高橋 陽一先生は四つ木にゆかりがあります。山田 洋次監督の「男はつらいよ」では葛飾区の下町らしさや人と人とのつながりが描かれてきました。それぞれの作品が地域の魅力につながっています。区としては出版社や映画会社と連携して「寅さんサミット」などのイベント開催や記念館の開設を進めています。

他にも葛飾区には地域に根付いた産業や伝統工芸、自然、人のつながりなどまだ十分に伝えきれていない魅力が数多くあるので、今後も積極的に発信していきたいと思います。

※1 新金線 葛飾区内のJR金町駅と新小岩信号場を結ぶ総武線の貨物支線の通称。同区では南北交通の強化に向けて旅客化を検討してきたが、令和8年1月にBRT導入を軸とする整備構想を策定し、事業化を目指している。

※2 BRT Bus Rapid Transit(バス高速輸送システム)の略。専用レーンなどを活用し、通常の路線バスより速く、時間通りに多くの人を運ぶことを目指す交通システム。鉄道とバスの中間的な役割を担う。

職員への期待は「チャレンジしましょう」。

― トップとして心がけていることはありますか。

新規採用の職員には入庁式で必ず2時間ぐらいの時間を取って区職員としての心構えなど様々な話をしています。主任・係長・課長などの研修の場面でも、区政について話をします。また、私自身がなるべく現場に行き、職員が区民とどのように接しているか目配りすることを心がけています。

区民47万4,000人の幸せをつくっていくのが仕事ですから、一人ひとりの声にしっかり耳を傾け、区民が何を望んでいるのか、本当のところをきちんとくみ取ることが大事です。区長になってすぐに「すぐやる課」をつくり、現場に行って直接声を聴く仕組みをつくりました。まずは話をしっかり聴くこと。それだけでも、不安や不満が和らぐことは少なくありません。

また、「くらしのまるごと相談」というものを始めました。役所のサービスはどうしても分野ごとに分かれがちですが、実際の困り事は、家計や仕事、家族の介護、福祉など暮らし全体に関わって起こるものです。だからこそ、一人ひとりの暮らし全体の状況を受け止めて必要な支援につなげていく姿勢が大切だと考えています。

職員に求めたいのは「チャレンジしましょう」ということ。今は社会の変化が非常に早く、行政にもこれまで以上に柔軟な対応が求められています。そのため新しいことに取り組む必要性は高まっていますが、一方で行政の仕事は生活に深く関わるものですから、どうしても「失敗してはいけない」という意識が強くなりがちです。だからこそ大切なのは、チャレンジすること、小さく試してみることです。うまくいかなければ原因を考えてやり方を変えていく。知恵を出し合って挑戦と改善を積み重ねていける組織にしていきたいと考えています。

― お休みの日は何をされていますか。

スポーツが好きなのですが、区長になってからは土日も会合やイベントに出席することが多く、休みという休みはなかなか取れません。息抜きとしては、子ども3人が独立していますが、家族で一緒に外で食事をしたり、妻と家で料理をして食べたりするのが一番の楽しみですね。

趣味の囲碁は、1人でもネットや本で勉強できるので暇をみてやっています。社交ダンスは、区長になるまで30年ほど指導者として教えていたのですが、今はパーティにちょっと顔を出して踊るくらいですね。

― 座右の銘はありますか。

「区民第一、現場第一」とずっと言っています。当たり前のことですが、やはり大事だと思うので。その気持ちを忘れずに仕事をしたいですね。

― 最後に葛飾区の魅力と区役所のご自慢をご紹介ください。

葛飾区の魅力は、なんといっても“人”です。人柄の良さや、人との結びつきを大切にする。これを活かすべきだと思っています。また、川が多いことも魅力です。区内に1級河川が7本もありますが、緑と水の環境を大事にしていきたいですね。

区役所の自慢は、職員がみんな真面目なところです。仕事に一生懸命に取り組んでいる。真面目にやることがあまり評価されないように感じた時代もありましたが、やはり長い目で見れば、区民のために真面目に取り組むことが良い結果につながると思っています。

葛飾区では今、20代、30代の若い区民が増えています。区の子育て政策の効果もあると思いますが、都心に近く交通の便が良いわりにアパートや住宅の値段が安いことが最大の要因でしょう。昔のマイナスイメージが払拭されて、価値が新たに見直されているのだと思います。この流れを活かし、ずっと住み続けられる、新しい区民が定着していくまちにしていきたいと思っています。