公開日:

【セミナーレポート】庁内改善を根付かせる|定着する仕組みの作り方と、バックヤード改革の自治体事例

情報政策
読了まで:19
【セミナーレポート】庁内改善を根付かせる|定着する仕組みの作り方と、バックヤード改革の自治体事例

「日々の業務に追われ、どこから改善に手をつければいいか分からない」「効果が限定的で、現場全体に広がらない」——会計事務・文書管理・調達業務などのバックヤード業務において、これから業務改善を始めようとする自治体も、推進の壁にぶつかっている自治体も「継続して動く仕組み」に悩むことは少なくありません。

そこで、本セミナーでは、庁内のバックヤード改善を現場に根付かせ全庁へ広げるための手法をお届けします。

概要

■テーマ:庁内改善を根付かせる|定着する仕組みの作り方と、バックヤード改革の自治体事例
■実施日:令和8年6月18日(木)
■参加費:無料
■申込者数:200人

【掛川市】変えてみよう、市役所の当たり前~100人のリーダーが切り拓く掛川市のDX~

プロフィール画像

【講師】
寺田 翔之介 氏
掛川市
CDO補佐官 兼 企画政策課デジタル戦略係長

2015 入庁 公共交通部門:地域の交通確保を担当
2019 人事部門:人事評価制度の改訂や研修企画を担当
2022 民間企業派遣:DXソリューションの顧客提案を担当
2023 企画部門:市全体のDX推進と庁内DX人材育成を担当
2026 CDO補佐官就任

「普通の行政職」が挑む、掛川市のDX

私はデジタル職として採用されたわけではありません。入庁後は公共交通部門に配属され、バス停の草刈りに出向くこともありました。そんな「普通の行政職」である私たちが、令和5年度から全庁DXに取り組んでいます。

当時、庁内では「DXって何?」という声が聞かれ、デジタルは情報システム部門が担うものだという雰囲気もありました。職員のスキルや関心には差があり、推進部門も「誰がどの程度の力を持ち、どこを目指せばよいのか」把握できていない状態。そのため、相談を受けても、限られた人員だけでは支援しきれないという問題を抱えていました。

そこで掲げたのが、「個人が最大限のパフォーマンスを発揮できる組織になる」という目標です。最終的な目的は市民サービスの向上ですが、そのためには、まず職員が楽に、楽しく働ける環境をつくる必要があります。DXを単なるツール導入ではなく、コミュニケーションや働き方・働きがいと一体で進める組織文化改革と位置づけました。

定着のための3つの戦略

私たちが実践した戦略は3つです。1つ目は、目指す人材像を定義し、現在地を見える化すること。DXスキルを、最低限の知識・技能を持つ「レベル1」、業務改善のアイデアを生み出し周囲に伝えられる「レベル2」、周囲を巻き込みプロジェクトを動かせる「レベル3」に整理しました。

さらに年1回、全職員が40問のセルフチェックに回答し、自身のスコアや全庁平均、過去からの成長を確認できるようにしています。

2つ目は、改革を牽引するリーダーをつくることです。庁内に募集をかける際、上司から「ポップにやっていいよ」と背中を押してもらい、行政文書らしくない募集通知の出し方をしたら大反響があり、定員を超える112人が応募してくれました。

さらに、そのリーダーたちが活躍できる場所も作りました。生成AIの普及において、まずリーダーに使い方を説明し、その後、リーダーが自分の部署の人たちに説明を行うというものです。自分たちの業務にどう活かせるかを隣の同僚が説明したことが大きく、生成AIの利用率は77%まで向上しました。

さらに、リーダーたちにスポットライトが当たるよう、専用のストラップも作りました。「つけている人がかっこいい」と思えるようなデザインを心がけたのがポイントです。

挑戦を個人任せにしない仕組みづくり

3つ目は、意欲ある職員の頑張りを組織として支える仕組みです。DXに関する項目を人事評価に組み込み、通常業務や部署を越えた挑戦が正当に評価されるようにしました。

加えて、全庁改革につながる取り組みを表彰する「Kakegawa Maemuki Challenge オブザイヤー」を開催。全ての部から27件のエントリーが集まり、全職員の投票で受賞事例を決めました。

また、研修後の感謝の声や、アワードに寄せられた応援コメントも庁内ポータルで共有しています。「ありがとう」「いいね」を見える形で届け、挑戦した人にスポットライトを当て続けることが、次の挑戦につながると感じます。

職員の変化が、具体的な業務改善へ

こうした取り組みを重ねたことで、3年間で、全職員のうちレベル2以上の割合は8.4%から21.2%へ、DXリーダーでは24.8%から65.0%へ上昇しました。TeamsやAI-OCRの活用が広がり、原課から業務改善の相談や報告が寄せられるようになっています。

オンライン化した手続きは33件から約200件に増加。生成AIやRPAなどの活用による効率化は、年間35,000時間に達しました。推進部門だけが旗を振るのではなく、各部署の職員が自ら改善を進める状態に近づいています。

現在は第2期DXリーダーの育成も始まり、周辺2市町との共同実施へ取り組みを広げています。庁内だけでなく自治体同士でも学び合い、改善の輪を広げていく考えです。

ツール導入や外部研修には費用が必要ですが、ポップな庁内発信や称賛の見える化は、工夫次第で予算をかけずに始められます。そして何より重要なのは、上司が「いいね、やってみよう」と背中を押してくれることです。その一言が職員のアイデアを引き出し、「変えてもいいんだ」という文化を育てていくと考えています。

【参加者とのQ&A】(※一部抜粋)

Q:スキルチェックについて、順位を出すことに反発やハレーションはありませんでしたか。
A:順位を出したのは、今回が初めてでした。ここまでやっていいのかドキドキしながら上司に相談して進めましたが、人事に直接反映されるものではなく、事務局と本人のみが確認できるという注意書きをした上で出しています。自治体それぞれの状況によるかとは思いますが、今のところ苦情は一件もありません。

Q:DXにあたって財政当局の理解度はどのぐらいでしたか。良いアイデアがあっても予算の壁が立ちふさがる現実があります。
A:我々も予算の壁は感じていますが、DX単体ではなく「全庁改革」として、人事改革や財政改革とセットでトップと握って進めています。優先順位を意見交換しながら進めているのが現状です。最近では財政課からもリーダーに手が挙がるなど、理解が進んできていると感じています。

Q:業務多忙のせいか、庁内が冷めきっていて、取り組もうとすることに対して冷ややかな目が向けられがちです。若手職員のモチベーションはどうしたら上がりますか。
A:空気作りには常に気を配っています。例えば、DX推進本部会議などで部長たちに支援をお願いしたり、アワードの際に「これ、いいから出してみなよ」と上司から部下に後押ししてもらえるようお願いをしたりしています。実際、その声かけでエントリーに至った事例もあります。上司が「いいね」「やってみよう」と言ってくれる流れができてきたことが大きいですね。

【株式会社インフォマート】転記作業ゼロへ!請求書など帳票類のデジタル化と定着の仕組み

株式会社インフォマートの入江秀樹氏は、全庁共通のバックヤードである会計・調達業務に確実に定着する、実務直結の運用ノウハウをご紹介くださり、事業者をスムーズに巻き込むアプローチから紙の業務を完全に根絶する仕組みまでを伺いました。

プロフィール画像

【講師】
入江 秀樹 氏
株式会社インフォマート
デジタルガバメント推進課 副部長

法政大学卒業後、広告代理店に入社。18年間、営業・事業開発に従事。インフォマートのミッションに共感し入社。現在は、2021年より開始した自治体事業の責任者を務め、自治体と事業者(=地域)の生産性向上を、BtoBプラットフォームを通じて推進している。

帳票をデータでつなぎ、転記作業をなくす

なぜ、帳票業務から改善に取り組む必要があるのでしょうか。私たちが実施した調査では、毎月100件以上の請求書を処理している自治体が4割を占めました。帳票処理は特定の部署だけでなく、全庁の職員が日常的に関わる業務です。デジタル化によって得られる改善効果も、それだけ大きいと考えています。

自治体における請求書の受け取り方法を見ると、紙が依然として多い一方、PDFによる受け取りも増えています。一見するとデジタル化が進んでいるようですが、実際には「システムへの転記」による負担やミスが新たな課題として浮かび上がっています。

例えば、PDFで受け取った請求書の内容を、職員が財務会計システムへ手入力しているケースです。受け取り方が紙からPDFへ変わっても、業務フローがデータでつながっていなければ、転記作業はなくなりません。紙、PDF、電子データが混在し、かえって二重管理が発生する可能性もあります。

重要なのは、帳票をPDFに置き換えることではなく、見積もり、契約、発注、納品、請求、支払いまでの取引プロセスを、一気通貫のデータとしてつなぐことです。

年間4万件の請求書を処理する横須賀市の改革

ここからは、横須賀市の事例をご紹介します。同市では年間約4万件の請求書を処理しており、紙の開封やスキャン、サーバーへの保存、原本のファイリングなどに多くの時間を費やしていました。請求書の受け取り方法も、郵送、持参、FAX、メールなどに分かれ、部署や担当者によって運用が異なっていました。処理が属人化し、請求書が現在どの工程にあるのか、全体の進捗を把握しにくい状態だったのです。

しかし、電子請求書へ移行したことで、開封やスキャン、保管といった作業を削減できました。さらに、部署ごとに行っていた支払いを集約し、まとめて振り込む運用に変えたことで、5年間で約1,500万円の振込手数料削減を見込んでいます。

効果はコスト削減だけではありません。請求書の処理状況がデータとして蓄積され、どの工程で差し戻しやミスが発生しやすいのかを把握できるようになりました。これまで担当者の中に隠れていた業務の課題を可視化し、プロセス単位で改善できるようになったことも大きな成果です。

横須賀市では、導入後の定着に向けて3つの工夫を行いました。1つ目は、庁内の関係部署を早い段階から巻き込むことです。一部の担当者だけで進めず、全庁のDXプロジェクトに位置づけ、実務を担う主管課にも参加してもらいました。現場の職員が「自分たちの業務を変える取り組み」と捉えることが、合意形成につながります。

2つ目は、取引事業者への丁寧な案内です。取引件数の多い事業者には個別に協力を依頼し、説明会でシステムの概要や操作方法を伝えました。市のホームページでの周知やマニュアルの整備も行い、事業者が迷わない環境をつくっています。

3つ目は、自治体側だけでなく、事業者側の課題も解決することです。まとめ払いを実施する横須賀市では、複数の請求分が合算され、事業者が入金の内訳を確認しにくくなるリスクが発生していました。そこで支払通知書を電子発行し、どの請求に対する入金なのか分かるようにしました。自治体と事業者の双方にメリットがある活用方法を提案することが、利用の広がりにつながります。

財務会計システムまでつないで転記をなくす

当社の「BtoBプラットフォーム」は、見積書、契約書、発注書、納品書、請求書などの帳票を電子データでやり取りするクラウドサービスです。LGWANに対応し、既存の財務会計システムともデータ連携できます。
財務会計システムまでデータをつなげることで、職員による手入力を減らし、転記ミスや伝票の作成漏れ、支払い遅延の防止につなげられます。

帳票のデジタル化では、紙をなくすこと自体を目的にするのではなく、前後の業務までデータでつなぐことが重要です。同時に、庁内の関係部署や事業者を巻き込み、双方が使い続ける理由をつくることが、導入効果を定着させるカギになります。


【ブレインズテクノロジー株式会社】庁内に眠る文書を価値あるナレッジに変える〜導入自治体から見えた全庁DX成功の秘訣〜

庁内DXやペーパーレス化が進む一方で、日々の業務で発生する「必要なファイルや過去の資料が見つからない」という検索の手間は、職員の大きな負担となっています。そこで、ブレインズテクノロジー株式会社の江川優一氏からはこうした業務をスムーズにするソリューションを紹介していただきました。

プロフィール画像

【講師】
江川 優一 氏
ブレインズテクノロジー株式会社
製品開発部 Neuron ES事業開発室
公共ソリューション担当

自治体担当としてセキュリティ、仮想化ソフトメーカーとして製品販売に従事。同時に業務効率化や庁内ネットワークなどのSI提案としても活動。2024年から庁内のナレッジ活用を支援すべく邁進中。

「どこにあるか分からない」が時間を奪っている

自治体DXにおける「職員の業務効率化」では、RPAや電子ワークフロー、各課に特化したシステム、生成AIなどが導入されています。ただ、こうした取り組みの多くは、特定の業務や部署を対象としたものです。異動の多い自治体では、配属先が変わるたびに新しいシステムの使い方を覚えなければならないこともあります。

では、全職員が共通して使い、幅広い業務に効果を届けられるものはないでしょうか。そこで注目したいのが、普段から当たり前のように使っているファイルサーバーです。

ファイルサーバーには、数十年にわたる行政運営の中で蓄積された文書や知識が保存されています。過去の議会答弁、事案への対応記録、庁内規定、事業計画など、目の前の業務に役立つ情報も少なくありません。一方で、「以前見た資料が見つからない」「異動したばかりで保存場所が分からない」「検索結果が出るまで何分もかかる」といった課題があります。必要な情報を知っていそうな上司やベテラン職員に尋ね、相手が不在なら回答を待たなければなりません。

一人が探し物に費やす時間はわずかでも、それが全庁で毎日繰り返されれば、大きな業務負担になります。日常的な検索を少し効率化するだけでも、全体では大きな改善につながる可能性があるのです。

ファイル名だけでなく文書の中身まで検索する

当社が提供する「Neuron ES」は、ファイルサーバーやSharePointなどに保存された文書を横断的に検索できるシステムです。ファイル名だけでなく、文書の中身まで検索できるのが特徴で、Word、Excel、PowerPoint、PDFなど、幅広い形式のファイルを対象にしています。

使い方は、検索欄にキーワードを入力するだけです。結果は数秒で表示され、キーワードが文書内のどこに含まれているかも確認できます。サムネイルやプレビュー機能を使えば、ファイルを一つずつ開かなくても、中身を見ながら必要な資料を絞り込めます。

また、既存の閲覧権限を引き継ぐため、自分にアクセス権限がある文書だけが検索結果に表示されます。生成AIと連携する場合も、検索できる範囲の文書に限定され、かつLGWAN内で完結する構成にも対応しています。

各自治体導入事例

現時点で事例にご協力いただいている自治体様は以下の通りです。

神戸市健康局食品衛生課では、過去の事案や対応事例を探すために「Neuron ES」を導入し、資料検索にかかる時間を86.6%削減しました。経験の浅い職員や異動直後の職員も、自分で必要な情報を見つけやすくなっています。

石川県庁では、導入前の評価トライアルで検索時間を平均約60%削減できると試算しました。削減時間を職員の人件費に換算して費用対効果を示し、財政部門にも実際の操作を体験してもらうことで、予算確保につなげています。

京都市では、ファイルサーバーと庁内ポータルを検索対象とし、職員アンケートで「1回の検索につき10~15分短縮できた」という回答が多く寄せられています。

無意識に使われる仕組みが定着につながる

全庁DXでは、導入するだけでなく、職員に使い続けてもらうことが重要です。そのためには、操作が簡単で、利用する場面が多く、職員自身が効果を実感できることが欠かせません。ファイル検索は、部署や職種にかかわらず日常的に発生します。必要な情報がすぐ見つかれば、職員は自然に検索システムを使うようになります。

そして、定着した結果、過去の文書が再利用され、個人で保管していた資料を共有フォルダーへ保存する動きも生まれます。こうして情報の「発見」「共有」「活用」が循環するようになり、庁内に蓄積された知識が生きた資産へ変わっていくのです。

DXは、新しいシステムを増やすことだけではありません。日頃から使っている仕組みを見直し、「この待ち時間は減らせないか」「この探し方は変えられないか」と考えることも、業務改善の一歩です。まずは庁内にある身近な時間の無駄に目を向けることが、全職員に届くDXにつながると考えています。

【川口市】効率的・分かりやすく始めるデジタル推進!

性質の異なる複数のツールをどのように全庁へ展開していくことができるのでしょうか。川口市の酒井公平氏からは、原課をスムーズに巻き込みながらDXを定着させるための実践的なアプローチを紹介していただきました。

プロフィール画像

【講師】
酒井 公平 氏
川口市 企画財政部情報政策課 主任

令和6年4月 川口市役所 企画財政部情報政策課 入庁。庁内における唯一のデジタル職採用者として、BPRを含めたDXを推進。LoGoフォーム、RPA、生成AI、窓口DX SaaSなどを担当。

2つのノーコードツールで現場の業務を改善

今回は川口市が活用しているノーコードツール「LoGoフォーム」と「kintone」をご紹介します。この2つは、どちらもプログラミングの知識がなくても扱えるツールです。ただし、役割は異なります。「LoGoフォーム」は、住民や事業者からの申請、庁内照会などに使う電子申請システムです。一方の「kintone」は、台帳や申請データを管理する業務アプリを作成できます。

川口市では、この2つを業務に応じて使い分けながら、住民と職員双方の負担軽減に取り組んでいます。

9カ月で132フォームを作成

川口市では以前から別の電子申請サービスを利用していましたが、操作性などの課題から、庁内で十分に活用されていませんでした。そこで、より直感的にフォームを作れる「LoGoフォーム」を導入したところ、約9カ月で132件の電子申請フォームが作成されました。令和8年6月11日時点では、作成されたフォームは約7,500件に達しています。

活用例の一つが、水道使用開始の申し込みです。住民は受付時間を気にせず申請でき、入力制限によって記載ミスも抑えられます。交通災害共済の加入申し込みでは、オンライン決済、会員証のPDF出力、電子文書の交付までを一つのフォームで完結させました。

学校施設の利用申請では、利用したい施設や日時などに応じて使用料を自動計算します。現場の職員から業務内容を聞き取り、細かな計算式を設定することで実現しました。

こうした活用を広げるには、ツールを提供するだけでは不十分です。そこで情報政策課では、年間処理件数が200件以上ある手続きを中心に原課へヒアリングを行い、フォーム作成を支援しています。相談専用の「LoGoフォーム相談BOX」も設け、困りごとを随時受け付ける体制を整えました。

重要なのは、情報政策課がフォームを代わりに作り続けることではありません。運用開始後は原課自身がメンテナンスできるよう、作成方法や設計の考え方を伝えることを意識しています。

わずか3日で業務アプリの運用を開始

「kintone」を導入したきっかけは、令和2年にスタートした「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」でした。対象となる市内事業者は約1万6,000社。申請状況に関する問い合わせの集中が予想され、Excelでの管理には限界があると予想しました。

そこで「kintone」を使った結果、通常のシステム開発では考えにくい約3日という短期間で、申請状況を管理する仕組みを構築することに成功しました。事業者が整理番号を入力し、自ら進捗を確認できる検索サイトも設置したところ、1日約300件のアクセスがあり、電話対応の大幅な削減につながっています。

現在「kintone」は全課で利用され、約200のアプリが稼働しています。例えば紙で記録していた公用車日報をスマートフォンから入力できるようにしたほか、契約書類の作成や計算を支援する財務会計契約アプリも開発しました。

繰り返し発生する作業を仕組み化することで、記入漏れや計算ミスを減らし、担当者が変わっても同じ手順で処理できる環境を整えています。

相談のしやすさと役割分担が定着を支える

「kintone」は自由度が高い分、職員の苦手意識や扱う情報の判断、カスタマイズの難しさといった課題もあります。そのため川口市では、継続的な伴走支援を重視しています。

相談は、電話・メール・チャット・問い合わせフォームのいずれからでも受け付けています。原課ごとにLoGoチャットのトークルームを作り、複数の担当者が参加することで、連絡や情報共有の負担も減らしました。

また、役割分担も明確にしています。アプリの基本部分は業務を熟知する原課が作成し、高度な外部プラグインは情報政策課が担当。現場の知識とデジタル部門の技術を組み合わせることで、使いやすさを確保しながら、属人化や人事異動にも対応できる体制を目指しています。

動画による学習だけでは自分の業務に置き換えにくいため、複数の講師がその場で疑問に答えるハンズオン研修も実施しました。職員が実際に操作し、小さな成功体験を得ることが、次の活用につながります。

ツールは、導入しただけでは定着しません。相談しやすい窓口をつくり、原課と一緒に考え、運用開始後も支援を続ける。川口市では「作って終わり」にしない取り組みによって、デジタル活用を全庁へ広げています。

【ZVC JAPAN株式会社(Zoom)】クラウドPBXで実現する電話応対業務の改革〜奈良市様の取り組み~

代表電話の集中や取次負担を解消し、現場の業務効率化と住民サービス向上をどう両立させたのでしょうか。従来の電話交換コストをAIや新基盤への投資へと転換する戦略的アプローチなど、自庁で真似できる実践的なポイントをZoomの野澤さゆり氏と奈良市の中村 眞氏に解説していただきました。

プロフィール画像

【講師】
野澤さゆり 氏
ZVC JAPAN株式会社(Zoom)
執行役員 公共サービス営業本部 本部長

2024年9月にZVC JAPAN株式会社、公共営業本部の本部長として入社。人と人を繋ぐ、AI搭載型のコミュニケーションプラットフォームとしてのZoomを通して、行政における「デジタルイノベーション」の推進を支援。

プロフィール画像

【講師】
中村 眞 氏
奈良市
総合政策部 CIO(最高情報統括責任者)

2000年東北大学大学院情報科学研究科修了 博士(情報科学)。1987年より30年間シャープにて情報通信事業で事業部長、知財本部で統轄、研究開発本部で研究所長を務める。2017年より奈良市参与、2019年4月より現職。

アナログな電話業務からの脱却

「Zoom」というと、オンライン会議を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし我々は、チャットや電話、コンタクトセンターなど、組織のコミュニケーションを支える「Zoom Workplace」を提供しています。

電話業務を支援するソリューションとして「Zoom Phone」、ボイスボットの「Zoom Virtual Agent」などがあります。

自治体の現場では、「電話の取り次ぎだけで午前中が終わる」「同じような質問への対応で本来業務が進まない」「通話記録が残らず、言った・言わないの問題になる」といった悩みをよく聞きます。固定電話では、テレワーク中や災害時に庁舎外から応対しにくいことも課題です。

こうした悩みは、庁内に設置していた電話交換機をクラウド化するサービス「Zoom Phone」で解決できます。「Zoom Phone」はパソコンやスマートフォンから庁舎の電話番号を利用でき、場所にとらわれず電話業務を行えるのが特徴です。

自動通話録音やリアルタイムの文字起こしに加え、AIが通話内容を要約し、要点や次に行うべきことを整理します。職員は電話をしながら細かくメモを取る必要がなくなり、通話後すぐに次の対応へ移れます。録音や文字起こしが残ることは、応対品質の向上やカスタマーハラスメント対策にもつながります。

【奈良市】電話業務改善に向けての取り組み

ここからは奈良市の取り組みをご紹介します。奈良市では、少子化の中でも業務が成り立つよう、絞れるところは絞って改革してきましたが、なかなか絞りにくかったのがアナログな電話業務でした。

コロナ禍の前から検討していましたが、当時はまだ技術が追いついていなかったため、良いシステムに出会えませんでした。大きく世の中が変わってきたのは令和6年頃のAIの急速な発展。また、固定電話の番号ポータビリティが令和7年から可能になったことなどです。

そこで、調達を行うことに決めました。クラウドPBXに求めたのは単なる音声回線の交換だけでなく、録音、文字起こし、要約、要点抽出などのDX・AXの領域です。そのため、セキュリティ要件としてISMAP登録などを厳格に設定しました。結果、選ばれたのが「Zoom Phone」です。

約5,000万円の経費削減と、電話業務の見える化

奈良市では、代表番号に年間約14万件の電話があり、そのうち約10万件が各担当課へ転送されていました。これとは別に、担当課が直接受ける電話も年間約117万件に上ります。

さらに、従来のコールセンターには年間約7,445万円の経費がかかっていました。しかし、クラウドPBXとエージェントなどを導入することで、これらの費用は大きく削減されています。

また、オペレーターの画面にAIが回答候補を表示することで、応対品質を一定に保ちながら、効率的に問い合わせへ対応できるようになりました。今後は、AIが自動回答する「Zoom Virtual Agent」も活用し、職員へ転送される電話そのものを減らしていく予定です。

さらに大きな変化は、これまで把握できなかった電話業務の実態が見えるようになったことです。どの部署が何件の電話を受け、コールセンターからどの課へ転送されているのかをデータで確認できます。

現在は、蓄積した会話をAIで分析し、頻出する問い合わせからFAQを自動抽出する試行も進めています。電話を受けて終わるのではなく、通話データを次の業務改善や問い合わせ削減に生かすことが狙いです。

電話機をスマートフォンにすることで災害時の業務継続も可能に

本庁舎と西部出張所では、1,030台の電話機をスマートフォンへ切り替えました。端末上で通話内容のAI要約を確認できるほか、LTE回線を利用するため、災害時にも場所を選ばず電話業務を継続できます。

固定電話からスマートフォンへの変更は大きな挑戦でしたが、通話品質についても、利用者が不満を感じにくいとされるMOS値3.5以上を99.8%の通話で確保しています。電波が弱い場所については、アンテナなどを追加して改善を進めています。

今後はAIによる一次受付を拡大し、24時間365日対応できる行政サービスを目指します。加えて、電話交換機の入れ替えを機に、FAXの撤廃や業務の見直しにも着手しました。保健所や教育委員会、市立学校など、ほかの拠点への展開も検討しています。

電話をクラウドへ置き換えるだけでは、十分な改革とはいえません。通話をデータとして残し、AIで分析し、問い合わせの削減や市民サービスの改善につなげる。電話応対業務全体を見直すことが、自治体の新たなDX・AXにつながると考えています。