三重県いなべ市

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支援物資が増えるほど避難所に届かない矛盾を、物流の仕組みで変える

防災・危機管理
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支援物資が増えるほど避難所に届かない矛盾を、物流の仕組みで変える

物流の発想で物資の停滞を防ぐ防災拠点倉庫の整備

災害時には全国から多くの支援物資が送られ、自治体職員は搬入・搬出や仕分け作業に追われるなど、現場では多くの混乱が生じてきた。いなべ市では、災害時の物流を滞らせないために、防災拠点倉庫を整備した。

※下記はジチタイワークスVol.45(2026年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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いなべ市
総務部 防災課
課長補佐 大月 浩靖(おおつき ひろやす)さん

物資を床に直置きしてしまうと後から動かすことができなくなる。

災害時は全国から大量の支援物資が殺到し、現場の受け入れ能力を超えることも少なくない。その結果、避難所への搬送が滞ってしまうケースも発生しているという。既存の備蓄倉庫にはあっという間に入りきらなくなるため、多くの自治体は急きょ、体育館などの広いスペースを物資置き場として開放するのが一般的だ。その際、次々と届く大小様々な段ボールを体育館の床に直接置いてしまうと、後から少しスペースを空けたり、レイアウトの変更をしたりといったことが、人力では到底対応できなくなってしまう。

「以前、とある災害現場へ支援に入った際、この直置きによって現場がパンクしている惨状を目の当たりにしました。一度置いた段ボールを動かせないため、避難所へ搬送する機能がうまく働かず、単なる保管場所になっている状況に強い危機感を覚えたのです」と大月さんは振り返る。

この深刻な現場の課題を解決するヒントは“民間物流”にあった。平成28年の熊本地震の際、現地で物資管理を委託されていた地元物流業者を視察。そこでは、荷物を棚にきれいに収めるのではなく、パレットに載せたままフォークリフトで運んだり、カゴ台車を活用したりして管理していた。「災害時に次々と届く多種多様な物資を棚に収める余裕はありません。必要なのは物を置いておく“備蓄”ではなく、届いたものを素早くさばいて動かせる“物流”の仕組みだと確信しました」。そこで同市は、固定棚を設けずにパレットごと動かせる民間業者のノウハウを取り入れ、令和2年に「いなべ市防災拠点倉庫」を整備した。

▲床に直置きで積み上げた段ボールは、移動や搬出が難しくなる。
▲床に直置きで積み上げた段ボールは、移動や搬出が難しくなる。

物資によって届け先を分けることで仕分け作業を減らし、管理をなくす。

同倉庫には、物流を止めないための様々な工夫が施されている。支援物資を受け入れるメインエリアから棚を排除したことで、フォークリフトが施設内を自在に動きまわれるようにした。同市の試算によれば、フォークリフト1台の作業量は人間約20人分に相当し、人力のバケツリレーで約2時間かかる荷役作業を10分弱で完了させることができる。こうした運搬機械の活用に加え、搬入口と搬出口を分け、動線を一方通行にすることで、人や車の交錯を防ぎ効率的に流す仕組みとしている。

一方、ハード面だけでは解決できない課題もある。物流を停滞させる要因の一つが、個人などから届く“混載物資”だという。「1個の段ボールに水や日用品が混ざっていると、倉庫で細かい仕分け作業が発生してしまいます。箱を開けて何がいくつあるかを数えるなど、全てを完璧に管理しようとするから現場がパンクしてしまうのです」。

そこで同市は、届け先を最初から分ける仕組みを導入した。企業から届くパレット単位の大口物資は防災拠点倉庫で受け入れ、仕分けの手間がかかる混載物資や、間仕切り・段ボールベッドなどすぐに使わない物は近隣の別施設へ振り分ける。また、各避難所には箱単位で配送する方針を徹底。細かい要望に応じて箱を開封するのではなく、あえて箱ごと送って現場で余らせることを容認するのだ。1個単位の細かい在庫管理を手放すことで、全体の供給スピードを維持していくことにつながる。なお、各所に点在していた備蓄倉庫をある程度集約したことで、点検や補充の手間が大幅に減るという平時のコスト削減効果も生んでいる。

新たな倉庫整備が難しくとも、工夫で物流拠点を確保する。

同施設は、食料・機材の保管、消防団の訓練にも使われ、災害時はメイン拠点となる。さらに民間物流業者と協定を結んでおり、有事の倉庫管理をはじめ、物資の受け入れから搬送までを包括的に委託する体制が整っている。

物流の仕組みを取り入れた画期的なモデルとして、同倉庫には多くの自治体が視察に訪れているそうだ。ただし、専用施設をすぐに整備できる自治体は少ないだろう。「倉庫を建てられなくても、コンクリート敷きの広い空間があれば工夫次第で物資拠点にできますし、大型テントを張れば雨風も防げます。熊本地震で被災した益城町(ましきまち)のように、季節的に空く農協の集荷場を利用するなど、まずは拠点にできる場所を見つけておくといいでしょう」。

拠点づくりと並んで、市民への呼びかけも欠かせないと大月さん。「行政の備蓄だけで、全てを対応するのは現実的ではありません。だからこそ、避難の際は各自で7日分の食料を持参するという、“自助の原則”を呼びかけつづけることが重要なのです。一人ひとりが持参すれば配給を待つ必要がなくなり、現場の混乱を防ぐことにつながります。それこそが、最大の備えになるはずです」と締めくくった。

大月さんが動画で防災拠点倉庫を紹介!

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