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若手公務員の離職はなぜ増えている?離職理由と自治体の定着事例

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若手公務員の離職はなぜ増えている?離職理由と自治体の定着事例

“離職率が低く、安定している”というイメージを持たれやすい公務員。しかし近年、若手職員の自己都合退職が増加し、人材の確保や定着が自治体の大きな課題となっている。

本記事では、公的データをもとに離職の現状と若手職員が早期離職を選ぶ理由を整理。さらに、元・公務員へのインタビューや自治体の取り組み事例から、人材育成・定着施策のヒントを解説していく。

※掲載情報は公開日時点のものです。

公務員の離職は増えている?データから見る離職率と若手離職の現状

ここ数年で変化しつつある自治体の離職状況について、まずは公的データをもとに全体像を確認してみよう。

地方公務員・国家公務員と民間企業の離職率を比較

令和6年度の公的データをもとに、地方公務員・国家公務員・民間企業の離職率を比較すると、以下のようになる。

区分
対象の定義
離職率
地方公務員(一般行政職)
定年・勧奨などを除く普通退職(自己都合など)
約2.57% ※1
国家公務員(行政職俸給表(一)適用職員)
「割愛」などを除く辞職
約1.34% ※2
民間企業(一般労働者)
パートタイム労働者を除く年間離職率
約11.5% ※3

対象者や退職理由、算出方法が異なるため単純比較はできないが、参考値として見ると、公務員の離職は民間企業より低い水準にあるようだ。

※1 総務省「令和7年4月1日地方公務員給与実態調査結果」より
    総務省「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査」より
※2 人事院「令和6年度(1)給与法職員、任期付職員、任期付研究員、行政執行法人職員:俸給表別・項目別総集計表」より
※3 厚生労働省「-令和6年雇用動向調査結果の概況-」より

若手公務員の退職者数は10年あまりで約3.2倍に

30歳未満の地方公務員(一般行政職)の普通退職者は、平成25年度の1,564人から令和6年度には5,010人へ増加し、11年間で約3.2倍となった。

一方、一般行政職の普通退職者全体も、同期間に5,727人から2万2,552人へ約3.9倍に増えている。退職者に占める30歳未満の割合は約27.3%から約22.2%へ低下しており、若手だけが突出して増えているわけではないものの、退職者数そのものは大幅に増加している。

こうした状況を踏まえると、若手職員を含む人材の確保・定着は、自治体にとって重要な課題といえる。

総務省「平成25年4月1日地方公務員給与実態調査結果」より
総務省「平成25年度 地方公務員の退職状況等調査」より

若手公務員が離職する5つの原因

若手公務員の早期離職の背景には、複数の要因が絡み合っている。総務省の検討会資料や各調査をもとに、現場で指摘されている代表的な5つの課題を整理した。

総務省「社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会(第3回) 」より
総務省「令和7年 地方公共団体定員管理調査結果」より
総務省「令和6年度 地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」より
総務省「令和7年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会 報告書」より

原因1 入庁後に感じる理想と現実のギャップ

入庁前にイメージしていた仕事と、実際の業務とのギャップは、若手職員が離職を考える一因になり得る。実際、今回話を聞いた元・公務員からも、若手時代に定型業務が続き「仕事がつまらないと感じていた」という声が聞かれた。

こうした入庁前の期待値と初期配属とのミスマッチは、総務省の検討会でも、大きな課題として指摘されている。

原因2 人手不足による業務負担の増加

※総務省「令和7年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会 報告書」より

地方自治体では、行政需要が複雑化・多様化する中、職員数に余裕のない状態が続いている。特に、災害対応や制度改正などの突発的な業務が重なることで、現場の負担が大きくなるケースもある。

総務省の研究会報告書でも、公務災害として認定された精神疾患の原因は“仕事の量(業務過多)”が約22.6%※で最多だ。特に入庁後1〜2年の初期段階は、業務への不慣れや環境変化などによる負担を抱えやすいことも指摘されている。

※平成22年4月〜令和5年3月までの総務省の公務災害データ(全年齢対象)が対象

原因3 職場での孤立や住民対応による精神的負担

※総務省「令和7年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会 報告書」より

総務省の研究会報告書によると、令和6年度の29歳以下のメンタルヘルス不調による長期病休者は、職員10万人あたり約3,134人と、全年代で最も高い水準だ。また、精神疾患で公務災害に認定された職員の約6人に1人(16.6%)※が、住民等との関係による強いストレスを経験。※

加えて、相談相手がいないことによる孤立や裁量の低さ、入庁直後の環境変化なども若手の負担になり得る。こうした負担を一人で抱え込ませないためにも、相談しやすい環境づくりや、周囲によるフォロー体制が重要といえる。

※平成22年4月〜令和5年3月までの総務省の公務災害データ(全年齢対象)が対象

原因4 給与・待遇への不満と民間企業との比較

近年、民間企業では初任給の引き上げなど、若手の待遇改善が進んでいる。一方、公務員の給与体系は年功的な要素があり、若手のうちは待遇面で不満を感じるケースもある。

総務省の検討会でも、民間企業との待遇差などが転職を考える要因として指摘されている。転職市場が活発化するなか、公務員から民間企業への転職が以前より身近な選択肢になっていることも、若手の離職を考える上で無視できない。

原因5 異動が多くキャリアの見通しを持ちにくい

数年おきに部署を異動する自治体では、多様な経験を積める一方、特定分野の専門性を深めにくい面もある。近年は専門性や自身の市場価値を重視する若手も増えており、将来のキャリアを描きにくいことが離職を考える一因になり得る。

どのような強みを磨き、どうステップアップできるのか見えない不透明さが、離職を選択する背景にあるといえそうだ。

【元公務員に聞く】若手時代に離職を考えた理由と“上司にしてほしかったこと”

ここまで見てきた離職要因について、実際に若手時代に離職を考えた元・公務員は、当時どのように感じていたのだろうか。その理由や上司との関わりについて話を聞いた。

プロフィール画像

【お話を伺った方】

元・公務員 Aさん
地方自治体で約12年間勤務(一般行政職)。市⺠課や子育て関連課など複数部署を経験したのち退職。

※勤続10年未満の若手時代を振り返って回答いただいた。


ー 若手のときに公務員を辞めようと思ったきっかけは何か?

大きく3つの理由がありました。

  • 給料の低さとギャップ: あまり働かない上の世代の給料が高く、頑張っている自分がむなしくなりました。
  • 理不尽な住民クレーム:ひどい言われようをしたときに“なぜこの仕事を選んだんだろう”と落ち込みました。
  • 定型業務の繰り返し: ルーティンワークばかりで仕事がつまらないと感じてしまいました。

ー 振り返ると、辞める前にどんなサインが出ていたか?

振り返ると、こんな変化があったと思います。

  • 「もっと給料が欲しい」「民間って忙しいのかな」など、民間企業の話をすることが増えた。
  • 業務に対して少し投げやりになった。
  • 周囲とも「辞めることを考えたことある?」と話すことがあった。

ただ、明らかに元気がなくなるような大きな変化ではなく、普段の様子からは気づきにくいものだったと思います。

ー クレーム対応の際、当時の上司に“こうしてほしかった”と思うことは何か?

いちゃもんに近いクレームに一人で対応させられたとき、守ってくれる人がいないと孤立感を感じました。言ってもいないことを主張された際も、上司から「言ってなくてもいいからとりあえず謝って認めてきて」と追い返されてしまって……。

対応が終わった後でいいから、私の言い分を聞いて信用してほしかった、味方として寄り添ってほしかったというのが本音です。

ー 上司の言葉や行動に救われたという経験はあるか?

ありました。給与そのものは上司がどうにかできるものではありませんが、給料日前にご飯に連れて行ってくれたり、お菓子を差し入れてくれたりした気遣いは本当にうれしかったです。クレーム対応でも、ずっと横に立って守ってくれ、理不尽な要求に対してはっきりとフォローしてくれた上司がいました。

また、ルーティン業務に物足りなさを感じていたとき、自分なりに業務改善をしていたら「素質がある」と褒めてくれて、業務改善担当として自由に動かせてもらえました。

ー 若手職員の定着に向けて、管理職に期待したい関わり方は?

管理職の方々が経験してきた時代とは環境も大きく変わっているので、若手への接し方に頭を悩ませる場面も多いのではないかと思います。ただ、若手が発する疑問や意見の裏には、“仕事を良くしたい”、“期待に応えたい”という意欲が隠れていることも多いはず。

若手なりの考えに耳を傾けながら、公務員という仕事のやりがいや魅力を温かく示してもらえたら、これ以上に心強いことはないと思います。


若手職員が働き続けやすい職場づくりに取り組む自治体事例

では、組織として若手職員の孤立を防ぎ、成長や定着を支えるためには、どのような取り組みができるのだろうか。ここからは、“相談しやすい環境づくり”、“心身の不調を防ぐ支援”、“成長機会の創出”という3つの観点から、若手職員を支える自治体事例を紹介する。

神奈川県小田原市|クロスメンター制度で“相談しやすい環境づくり”

小田原市は令和2年度から、職場を超えて先輩職員に気軽に相談できる「クロスメンター制度」を導入した。

  • 対象:初めて異動した職員、新任係長(ほか希望者)。
  • 方法:メンティー(相談する側)が、所属の異なる先輩職員をメンターとして指名
  • 期間・頻度:半年間、月1回程度。
  • 特徴:目標設定や報告は不要。雑談も含めテーマは自由。

導入の背景には、同市が捉える“3つのキャリアの転機(入庁、初異動、係長昇任)”における環境変化の大きさがある。過去に異動先になじめずメンタル不調に至った例を踏まえ、職場を超えた相談相手を用意して転機を乗り越えさせる狙いだ。実施後のアンケートでは約9割が“満足”と回答している。

所属部署以外にも相談相手をつくる仕組みは、異動など環境変化の大きい時期の孤立を防ぐうえで参考になりそうだ。

小田原市「クロスメンター制度による人材マネジメント 職員の意識改革の取組みについて」より

大阪府大阪市|相談・フォロー体制で“心身の不調を防ぐ支援”

大阪市では29歳以下のメンタル不調による休職率上昇を受け、「大阪市職員心の健康づくり計画(第4次)」を策定し、 若年層の未然防止(一次予防)に重点的に取り組んでいる。

若手職員を支える主な取り組みは以下の3点だ。

  • 新規採用職員全員への保健師による保健指導・健康相談
  • メンター制度と連携した相談体制の整備。
  • 新規採用や昇任直後など、環境変化の大きい時期の個別フォロー。

不調が表面化してから対応するのではなく、新規採用時など環境変化の大きいタイミングで接点を設ける点は、若手支援を考えるうえで参考になる。

大阪市「大阪市職員心の健康づくり計画(第4次)」より

岐阜県岐阜市|政策立案への挑戦で“成長機会を創出”

岐阜市は平成30年度から若手職員の政策立案能力の向上と組織風土改革を目的に、「若手職員プロジェクトチーム」を運営している。部署の垣根を越えて集まった若手職員が約1年をかけ、産学官連携のもとで政策立案に挑む取り組みだ。

大学や民間企業のノウハウを取り入れながら提案を磨き、最終的には市長プレゼンや予算化に向けた協議まで行う。実際に応募提案が事業化されたケースもあり、 参加した若手からは論理的思考力の向上や、庁内外における人脈形成を実感する声が寄せられているようだ。

若手に日常業務とは異なる挑戦の機会を設けることは、成長実感や庁内外のつながりを生み出す一つの方法といえる。

岐阜市「令和8年度 若手職員プロジェクトチーム」より

まとめ

若手の離職を防ぐためには、必ずしも大規模な制度改革だけが必要なわけではない。困ったときに相談できる相手をつくる、理不尽な住民対応から職員を守る、若手の挑戦を後押しするなど、日々のマネジメントでできることもあるだろう。

“ここで働き続けたい”と思える環境をつくるため、できる取り組みから検討してみてはいかがだろうか。