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【おしえて!元公務員 #1】気になる退職後のはなし

ライフスタイル
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【おしえて!元公務員 #1】気になる退職後のはなし

このままでいいのかな……。公務員として働き、やりがいや安定を感じる一方で、これからのキャリアに迷う瞬間があるかもしれません。そんなとき気になるのが、役所を離れた人たちの“その後”。この連載では、自治体を退職した人に、そのきっかけや現在の働き方、今だから思う公務員の価値を聞いていきます。

すぐに答えを出すためではなく、これからの自分を考えるために。キャリアに悩むあなたへのヒントを届けます。

※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

1|今回の“元公務員”は?

プロフィール画像

お名前 横山 裕一(よこやま ゆういち)さん
公務員歴 約18年
公務員時代の仕事 行政事務・課長職
現在の仕事 株式会社YouTopia(ユートピア) CEO
家族構成 妻、子ども2人
性格を一言でいうと?
好奇心旺盛、何でもやってみたい興味津々タイプ

今回登場してくれたのは、福岡市役所で約18年間勤務し、若くして課長職も経験した横山さん。順調なキャリアに見える一方で、横山さんの中には、“行政の枠を越えて地域に関わりたい”という思いがあったといいます。

現在は、行政と民間企業の間に立ち、官民連携や地方創生に関わる仕事に挑戦しています。安定した公務員を辞めることに不安はなかったのか。公務員時代の経験は、今の仕事にどう活きているのか。横山さんの“その後”を聞きました。

2|おしごと年表

-公務員になろうと思ったきっかけは何でしょうか?

深いビジョンがあったわけではなく、親が別都市で公務員をしていたため、自然に自分も公務員の道を選びました。地元は福岡市内ではありませんが、大学がこちらで、その時代が充実していたこともあり、"ここで働きたい"という思いから福岡市役所を選びました。

-「深いビジョンはない」とのことですが、略歴を見ると、順調なキャリアを歩んでいたように見えます。公務員時代に困難だったことはありますか?

周りの助けもあって、比較的順調なキャリアを歩ませていただきました。とはいえ、色々失敗もしましたし、迷惑をかけたことも多々あったなと思います。

特に大変だったのは、係長に昇任して区役所の保険年金課に配属されたときです。窓口業務の経験がないまま責任者となり、判断に迷う事案やクレーム対応に向き合う日々でした。制度や法律は勉強できても、窓口対応の流れや現場感はすぐに身につくものではありません。本当に部下に支えられた2年間でした。一方で、チームの団結力があり、若手職員も多く、活気のある楽しい職場でした。

-確かに、業務内容が180度変わりますもんね。そんな中、どうやってご自身の力を発揮しましたか?)法学部出身で制度解釈は比較的得意だったことと、経験でいうと、人事で多くの法規に触れたことが役立ったと思います。また、今までの経験から、組織や職場改善には使命感を持って取り組みました。特に、若手職員と話し合いながら窓口での業務フローを改善したことが庁内で表彰されたときはうれしかったですね。

-そのような働きが認められたのち、観光系に戻り、若くして課長に。順調なキャリアを歩む中で退職を決断されたわけですが、現在はどのようなお仕事を?

今はこれまでやってきた経験をさらに広げて仕事に取り組むべく起業をしました。

大きくは “国や自治体が実施する地方創生分野の事業を対象とした提案・実行支援”、“多様な分野や企業との掛け合わせによる新たな事業創出や事業拡大を支援するコンサルティング・伴走支援”、“観光を軸とし、地域と共に産業を興して人が集まる仕組みをつくる地域まちづくり”の三つを柱としています。

行政の立場では制度をつくり、環境を整備し、事業者のビジネスを側面支援することが仕事でした。今はよりプレイヤーに近い立場で実際のビジネスをつくり、その成功に向けた伴走支援や直接実行するところまでを事業領域としています。

3|公務員時代とその後(現在)の比較

4|気になる深掘りインタビュー

ー安定した公務員を辞めることに、不安はありませんでしたか?

起業を意識したのは、退職の2年ほど前です。当然不安はありました。妻や子どももいますから、「確実に辞めてもやっていける」という自信がつくまで準備をしました。不安のタネを一つひとつ解消し、自分の仮説を着実に検証しながら前に進めていったという感じです。

自分の強みは行政経験と観光知識です。それを軸とした起業を考えていたので、日々の業務では常に、観光部署の市職員として対応できる最高水準を目指して行動しました。そうすることで自然と周囲からの信用を得られ、新しいつながりや、これまでにない経験を重ねる機会が増えていました。それは自分にとっての大きな財産です。

また、信頼できる経営者の皆さんに何度も壁打ちしてもらい、ビジネスモデルの様々なアドバイスをもらいました。その中で、ある経営者から「あなたが起業したら、私が最初の顧問先になりますよ」と言っていただいたことが、最後の後押しになりました。

ー行動力で不安を払拭したのですね!周りから反対はされませんでしたか?

~家族との時間も大事にしています~
~家族との時間も大事にしています~

妻は内心不安だったと思いますが、「なんとかしてくれるんだったらいいよ」と若干のプレッシャーをかけつつも、全く反対しませんでした。2年間、起業への土台づくりに向けた行動を見守っていてくれたからだと思います。おかげで、やる気も湧いてきましたね。

当初、公務員である親からは反対されましたが、最終的には「時代的にそういうこともあっていいのかもな。やるからには頑張れよ」と言ってくれるようになりました。

職場では驚かれたものの、反対されることはほとんどなく、みんなが応援してくれました。本当に周りに恵まれていたなとつくづく思います。


ーなぜ観光の道で起業をしたのでしょうか。そこを詳しく教えてもらえますか?

観光部署で勤務していた際、"観光と直接関わりのない内容だと思っても、必ず一度は話を聞く"というのを大事にしていました。観光は裾野の広い産業なので、一見異なる分野であったとしても全てがつながり得ると思っていたからです。そうしたら自然と様々な情報が集まってくるようになり、多様な強みを持つ企業とのネットワークが広がっていきました。

ただ、自分の所属する部署でできることには限りがあります。また、観光は行政区域で区切れるものではなく、より広い範囲で連携して取り組むことで、来訪者の満足度や観光消費の広がりにもつながると考えていました。

もっと自由に、自分の知見やノウハウを地域に活かせないか。そう考えるようになり、行政の枠を越えて、地域や企業を官民連携で支えていく道を選びました。

ー実際に起業してみて、公務員時代にしか経験できなかったことや、スキルなどが役立っていると思うことはありますか?また、今後はどんなビジョンを描いていますか?

~顧問先での研修の様子~
~顧問先での研修の様子~

もちろん、観光部署での経験は“今”に活きています。

しかし“行政側がどんな思考で業務をしているか”という感覚を持っていることが、実は一番役立っています。役所特有の思考プロセスや、単年度予算制度の理解、さらには論理的思考や精緻な文書作成能力。これらはどの部署に身を置いていても、役所を離れた際に、公務員経験者が持つ唯一無二の“強み”になると思います。

民間企業がどんなに良いアイデアを持っていても、住民ニーズや地域課題の解決につながらなければ、行政としては協業に踏み出しにくいのが実情です。

だからこそ、企業のアイデアや熱意を、行政が重視する“住民ニーズ”や“地域課題の解決”にどう結びつけるか。その視点を持てることが、公務員経験者ならではの強みだと思います。行政が、地場事業や地域ニーズ、住民の声をどれほど大切にしているかは、役所の中に身を置いた人間だからこそ深く理解できる部分ではないでしょうか。

起業した根底には、観光というジャンルに限らず、自分と同じく“地域を良くしたい”と考える企業に、行政で培った“スキル”を提供したいという気持ちがあります。企業の中にも、地域貢献への熱い思いを持つ人々はたくさんいる。そんな人たちに、18年の公務員経験をもとにアドバイスや協力をするだけで、行政と企業の距離がぐっと近づく瞬間があるんです。今後もそんな熱い思いを持つ人たちと行政のハブになりたい。福岡市はもちろん、その周りの地域も巻き込んで、公務員時代には立場の制限上関わりきれなかった“より広い地域のまちづくり”に携わっていきたいです。