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【公務員のメンタルヘルス最前線―データと現場から考える #01】公務員と民間どう違う?

キャリア・働き方
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【公務員のメンタルヘルス最前線―データと現場から考える #01】公務員と民間どう違う?

近年、増加傾向にある公務員のメンタルヘルス不調。いまや地方自治体の持続可能性にも関わる重要なテーマです。この連載では、現役の地方公務員で自身も不調を経験し、現在は情報発信や支援活動にあたっている「県庁メンタル応援課」さんにお話を聞き、公務員のメンタルヘルスの現状についてデータと現場感覚の両面から分析。職場環境や働き方を見つめ直し、無理なく働き続けるためのヒントを探ります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為や診断を目的としたものではありません。体調や心身の不調については、医療機関等の専門家へご相談ください。記事の掲載情報は公開日時点のものです。

メンタル不調による休職者増が自治体の課題に。

- はじめに自己紹介をお願いします。

  私は現役の県庁職員として勤務する立場から、公務員のメンタルヘルスに関する情報発信を行っています。私自身も過去に適応障害やうつ病を経験し、長くメンタルの問題と向き合ってきました。現在は、メンタルに悩みを抱える公務員が少しでも安心して働ける社会につながればという想いから、「県庁メンタル応援課」として公務員のしんどさを軽くする考え方やセルフケアの重要性を伝える活動をしています。

  近年、地方自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。人口減少・少子高齢化が進む中、地方創生の取り組みを進める主体である地方自治体に求められる役割は増え続けています。福祉、危機管理、地域づくり、インフラ維持など、どの分野も重要性が高まり、自治体職員にかかる負担は決して小さくありません。

  一方で、行政サービスを支える職員数は長期的に減少傾向にあります。若者の公務員離れや公務員から民間への転職者の増加が進む中で、現場では「人が足りない」「採用募集しても人が集まらない」「昔では考えられないが、今は若手があっさりと辞めてしまう」という声を聞く機会が増えました。さらに、自治体が頭を悩ませている大きな課題の一つが「メンタルヘルス不調による休職者の増加」です。

職員の2.3%が1か月以上の休暇・休職

- 地方公務員のメンタルヘルス不調はどの程度増えているのでしょうか。データで現状をご紹介ください。

総務省「令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査」の結果によれば、令和6年度中にメンタルヘルス不調により1か月以上の病気休暇または休職を取得した地方公務員は 48,971人。前年より1,196人増加し、職員数に占める割合は 1.5%となっています。指定都市が1.7%と最も高く、次いで都道府県および市が1.5%、町村が1.4%となっています。この調査の対象職員は全地方公共団体の一般職に属する地方公務員です。

出典:総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況」

また、一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要」によれば、令和6年度における「精神及び行動の障害」による長期病休者数は 10万人率で2,372.9人 となっています。これは対象職員の2.3%に相当し、10年前(平成25年度)の1.9倍、15年前(平成20年度)の2.1倍という水準です。この調査の調査対象団体は351団体となっており、首長部局の一般職員の約61%に相当する約78万人で、警察職員、消防職員、教員は入っていません。

出典:一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要」

特徴的なのは年代別の傾向です。全年齢平均を上回っているのは20代・30代であり、特に20代女性職員の10万人率は3,699.1人であり、20代女性職員の3.6%が長期病休者であるという、非常に高い水準です。

出典:一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要」

- 国家公務員の状況はいかがでしょうか。

国家公務員についても同様の傾向が見られます。人事院「令和6年度年次報告書」によると、令和5年度に1か月以上勤務できなかった「精神及び行動の障害」による長期病休者は 5,683人。全職員の 2.02% にあたり、前年の5,389人から増加しています。対象は一般職の国家公務員で、国家総合職(キャリア官僚)は含まれておりません。

過去の年次報告書を遡ると、10年前(平成25年度)の長期病休者は3,450人であり、全職員の1.29%であったことを踏まえれば、10年間で約1.6倍となり、割合も1.3%から2%へと上昇しています。また、性別では女性が高く、年代別では20代が最も高い水準の傾向となっています。

出典:人事院「令和6年度年次報告書」「平成26年度年次報告書」「令和5年度年次報告書」

民間は横ばい傾向0.5%。公務員との差が広がる。

- 公務員と民間で状況は違うのでしょうか。

厚生労働省「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休職した労働者は、常用労働者全体の 0.5% とされており、令和5年度の0.6%から0.1ポイント下がっています。事業所規模が大きいほど割合は高く、1,000人以上では約1%、10〜29人規模では0.3%という結果です。また、業種別でみると、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、学術研究,専門・技術サービス業といった業種の割合が高くなっています。

さらに、遡って調査結果を見ると平成27年度の0.4%から、ゆるやかに0.6%まで上昇しておりますが、おおむね横ばいの傾向であることが読み取れます。

出典:厚生労働省「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」政府統計「労働安全衛生調査(実態調査)」

まとめると、

 ・民間企業:0.5%
 ・国家公務員:約2%
 ・地方公務員:約1.5〜2.3%

であり、公務員のメンタル不調者割合は民間より明らかに高い水準にあります。

さらに、横ばいの民間に比べて、公務員は過去10年間で不調者割合が倍増するといった上昇傾向にあることも読み取れます。

背景に人員減と業務増。自治体の持続性に影響も。

- なぜ今、公務員のメンタルヘルスが重要なのでしょうか。

メンタルヘルスは個人の問題として語られがちですが、自治体運営という視点で見ると別の側面が見えてきます。

冒頭で述べたとおり、人口減少や行政課題の複雑化が進む中で、公務員がやるべき仕事はどんどん増えています。反面、行政サービスの担い手である職員数は減少傾向にあります。そのような中でメンタルヘルス不調者が増加しています。

人員減少と業務増加が同時進行する環境では、「不調者が増えるほど残った職員の負荷が高まり、その負荷が次の不調者を生む」という循環構造が生じやすくなります。そのため、職員一人ひとりが「程よく安定したメンタル」で働ける状態を維持できるかどうかは、行政サービスの質そのものに影響しうるでしょう。

このように、公務員のメンタルヘルスは、決して個人の問題として片付けてしまえるものではなく、自治体運営の持続性という観点から、改めて危機感をもって、真剣に向き合う必要があると考えます。

連載第1回は、公務員のメンタルヘルスの現状をデータを中心に整理しました。次回は、公務員は何にストレスを感じやすいのか、民間との違いはどこにあるのか、といった点を、調査データをもとに掘り下げていきます。