和歌山県上富田町

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外部の視点や視察で業務整理の大切さを知り、意識変革につながった。

情報政策
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外部の視点や視察で業務整理の大切さを知り、意識変革につながった。

DXの土台づくりにアドバイザー派遣や視察を活用

国のDX推進を背景に、業務の見直しに着手した上富田町。単にツール導入を急ぐのではなく、自分たちの“当たり前”を問い直し、業務を整理することから始めたという。現場の変化について、話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.44(2026年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。


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上富田町
総務課
主幹 中村 元樹(なかむら もとき)さん

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上富田町
振興課
主事 大橋 一輝(おおはし かずき)さん

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上富田町
住民課
主査 麳 智香子(こむぎ ちかこ)さん

DXは単なるツール導入ではなく、業務整理から始まると気づいた。

令和3年度は「デジタル改革関連法」が施行されるなど、国による自治体DX推進の動きが全国的に加速した。中村さんは当時を振り返り、「DXを進めなければならないという認識は庁内で共有されつつありましたが、具体的な行動には結び付いていませんでした」と話す。背景には、人員体制の制約があった。限られた職員数の中で、1人が複数業務を担い、定期的な異動もある。そのため、腰を据えてDXや業務改善に取り組む時間を確保することが難しかったそうだ。

また、現場では前例踏襲の意識も根強かったという。当時の空気について麳さんは「前任者のやり方を引き継ぐのが当たり前でした。疑問を感じていても、自分が変えていいのか不安や迷いがあり、踏み出せなかったのです」と話す。

そうした状況の中で転機となったのが、県から派遣されたDXアドバイザーの話だった。“散らかった部屋ではロボット掃除機は動けない”という例え話に中村さんは「納得感がありました。DXを推進するためには、いきなりツールを入れるのではなく、まずは業務の“片付け”から始める必要があると考えたのです」と語る。そこで令和4年度、全課から1人ずつ職員を選出し、「DX推進部会」を立ち上げた。事務局を担う中村さんを中心に、麳さんや大橋さんら10人のメンバーが参加。部署の枠を超えて業務の見直しを進める体制を整えた。

来庁者の立場で窓口を体験したことで見直すべき業務が可視化された。

業務整理の一歩として、まずは現状の可視化から着手。「窓口体験調査」では、デジタル庁の窓口BPRアドバイザー派遣事業を活用し、助言を受けながら取り組んだ。その中で、職員自らが来庁者の立場になり、転入や死亡後に発生する一連の手続きを体験したという。「体験するまで、来庁者が窓口をいくつまわり、申請書を何枚書いているのか、十分に把握できていなかったのです」と麳さん。調査の結果、“押印をなくして手間を省けるのでは”“チェック表で申請漏れを防げるのでは”など、29項目の改善点が抽出された。これらの気づきを一覧化し、すぐに対応できるものから順次見直しを進めてきたという。

こうした現状の把握と並行して、令和6年度には、電子決裁システム導入を見据えた文書管理業務の見直しにも取り組んだ。「先にシステムを入れてしまうと、従来の運用との不整合が生じ、現場が混乱する可能性があると考えました」と中村さんは振り返る。長年手付かずになっていた規則を電子決裁に対応できる内容へと改正し、部署ごとに独自運用となっていた部分を統一。さらに、公印の管理方法の見直しやデータの整理といった“アナログな片付け”を徹底して行った。そうした基盤を固めてからシステムを導入したことで、大きな混乱は生じなかったという。

▲窓口体験調査の様子。住民の立場で確認し、課題を洗い出した。
▲窓口体験調査の様子。住民の立場で確認し、課題を洗い出した。

外の世界を見て感じた驚きが当たり前を疑うきっかけに。

業務改善に向けた意識の変化を後押ししたのが、先進自治体の視察だ。テーマに合う視察先の提案を全庁から募って内容を検討。提案が採択された職員が視察に参加できる仕組みとした。令和6・7年度は“DX”をテーマに、書かない窓口やフリーアドレスなどに取り組む複数の自治体を訪問。そこでは、住民の負担が少ない運用を目の当たりにし、驚きを感じた職員も多かったという。「自分たちのやり方が当たり前だと思って仕事をしてきましたが、前提が覆されました。実際に行って外の世界を見ないと、自分たちの現在地や何を変えるべきかには気づけないのだと、身をもって実感しました」と大橋さん。

視察後は、管理職が参加する報告会で学びを共有し、必要に応じて関係部署にも直接伝えている。こうした取り組みを通じて、“できることから始めなければ”という意識が職員間で共通認識として広がり、業務の見直しに前向きな職員も増えているそうだ。

その一例が、日直業務の改善だ。これまでは、住民情報を正確に確認するため、紙の住民基本台帳の副本を備えていた。住民異動があるたびにシステムから台帳を印刷し、差し替える作業が発生していたという。現在は、既存システムで必要な情報を画面上で確認できるよう運用を変更。副本の準備が不要となり、業務負担の軽減につながったという。「ちょっとした変更ですが、効果は大きかったと思います」と麳さん。

今後は、書かない窓口の実現やフリーアドレスの導入など、職員と住民双方の環境改善に向けた検討を進めていく方針だ。中村さんは「前例踏襲で続いている業務は、まだ多くあります。すぐにシステムを入れるのではなく、自分たちの実情に合った業務整理を重ねていきたいです」と展望を語った。

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