ジチタイワークス

愛知県西尾市

【中村 健さん】対人関係を改善していくための行動とは?

「もっと何かできないか…?」「仕事にやりがいはあるけど、思うように成果が出せない...」「このままでいいのか...?」仕事をしていると、誰しも一度は迷いを抱いたり、もしくは立ち止まったりすることはあるだろう。きっと首長も同じ。何度も迷ったり、立ち止まったことがあっただろう。

そんな時に出会った本を軸に、現状を打破した、もしくは感銘を受けたエピソードから明日の仕事へのヒントになる話を聞いた。

西尾市長
中村 健(なかむら けん)さん

プロフィール

1979年(昭和54年)4月25日生まれ、大阪大学法学部卒業後、西尾市役所に入庁。
その後、愛知県庁へ出向などを経て西尾市役所退職。2013年(平成25年)に西尾市議会議員選挙へ出馬、初当選。 
2017年(平成29年)7月西尾市長に就任(2期目)。

職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(イクボス)として、職員のワーク・ライフ・バランスの推進を図り、自らもその充実に努めている。

 

#紹介したい本

「嫌われる勇気」
岸見一郎、古賀史健/ダイヤモンド社 

本屋でタイトルが気になって購入


―中村市長は読書が趣味とのことで、本とどんな付き合い方をされているのでしょうか。

中村市長:最近はなかなか時間を取れないのですが、ときどき本屋にフラッと行って、面白そうだと思った本を買って読むようにしています。読むのはほとんど実用書やビジネス書。本は誰かが長い時間をかけて蓄積したことを1,000~2,000円ほどで共有できる、すごく貴重なツールだと思っています。


―「嫌われる勇気」に出会ったきっかけを教えてください。

中村市長:市議会議員になってすぐ、本屋でたまたまタイトルが目にとまり、手に取ったのが出会いです。読んでみると「こんな考え方をすれば、前向きに生きられそうだな」と自分の中で腹に落ちて、世間的に大ベストセラーになったというのも理解できます。読んで良かったと、とても思っています。

外に原因を求めず自分ごととして受け止める


―どんなところが役に立ちましたか。

中村市長:アドラー心理学について対話形式で分かりやすく解説されていて、私の生き方に影響を与えているものもあります。具体的に2つ挙げると、1つは「目的論」。一般的に、人は過去に縛られて今があり、何かうまくいかないときは過去やまわりに原因があると思ってしまいがちです。でも、アドラー心理学では、全ての行動は自らがかなえたい目的のためにしているという考えで、目からウロコでした。自分は最善を尽くしているつもりでも、まだ改善点や至らない部分があるはず。他力本願にならず現実をしっかり受け止め、現実をさらに良くするという目的のためにどうするかを考えられるようになったのは、「目的論」を知ったことが大きいですね。


―受け止めるというのがポイントでしょうか。

中村市長:今は絶対の正解がない時代で、自治体の仕事においても、間違いではない複数の選択肢から選ぶ局面がよくあります。選択するために自分で調べたり意見を聞いたりして、最終的には自分で選ぶ。たとえうまくいかなくても決めたのは自分ですから、受け止める必要があると思います。

自分でコントロールできることに集中する


―2つ目はどんなことでしょう。

中村市長:「課題の分離」という考え方です。人には色々な悩みがあるけれど、ひもといていくと人間関係に端を発していることが多く、自分ではどうしようもないことに思い悩んでしまう傾向があるように感じます。心情的には分かりますが、どうしようもないことにクヨクヨしても仕方ない、自分でコントロールできることに時間や労力をつぎ込むことが大事だという話にその通りだと納得しました。
 

―中村市長にも思い悩むことがあったと。

中村市長:振り返ってみると、職員時代には熱を持って仕事をすればするほど、「なぜ分かってもらえないのか」と歯がゆく、フラストレーションがたまっていくこともありました。当時は若くて、独りよがりだった部分もあるでしょう。仕事はチームでするものですから、全部自分の思い通りにならないのは仕方のないことで、自分の持ち場で最善を尽くすことに集中することが大事だと今は思っています。

人は誰でも変われて幸せになれる




―「目的論」と「課題の分離」を理解すれば、思考や行動が変わりそうです。

中村市長:すぐに実践できたわけではないけれど、物事を前向きに考えられるようになったと思います。壁にぶつかっても、本に書かれていることを思い出して実践するうちに頭や体が順応し、心もついてきたという感覚です。前提として、人は誰でも変われるし、幸せになれるのだと信じています。


―中村市長は心の状態を大切にされているという印象を受けました。

中村市長:首長の大きな仕事は、色々なことにアンテナを張りながら物事を決めること。心が健康でないと判断力が鈍ってしまい、最善の決断ができなくなるかもしれないと感じた時期がありました。いい意味で割り切り、その都度気持ちを切り替えて100%の状態で決断できるようにするためにはやはり健康が第一。私の場合は、しっかり睡眠をとることと、家に帰ったら家族との時間を大事にすることが健康の秘訣(ひけつ)ですね。

腐ることなく外とつながって行動しよう


―現状を打破したいと考えている自治体職員に向けてメッセージをお願いします。

中村市長:現状を打破したい職員は仕事に真剣に取り組んでいて、問題意識や熱量が高いのだと思います。意識としてトップランナーであるがゆえに、組織全体でその職員に追い付くというのは正直難しいかもしれません。ただ、そんな職員がいることはとても大事で、市民の皆さんから「いい職員がいるね」と言っていただけるのはそういうタイプの職員なんです。自分の思うようにいかないことが多々あるかもしれませんが、絶対に腐らずに熱量を持って仕事を続けてもらうことで、まわりにも熱が伝わって化学反応が起きることを期待しています。しっかり信念を持って、負けずに頑張ってほしいと思います。


―首長にそう言ってもらえると心強いですね。

中村市長:現状を打破したいという皆さんの思いは、地方自治体がこれからの時代を生き抜いていくための大きなエネルギーになります。いち役所の中だけだとそういう職員は多数ではないかもしれませんが、全国には同じような思いを持った職員がたくさんいます。外の公務員のネットワークに参加してみてはどうでしょうか。広い目で見て、自分の地域や日本を良くしていこうという人たちと交流することがパワーになり、新たな視点も得られると思います。


―視野を広く持ち、前を向いて行動することが大事ですね。

中村市長:そうなんです、私は2期目の就任式の訓示で、「できない理由」を探すのではなく「できる方法」を考えてほしいと伝えました。役所には、住民の方から様々な相談が寄せられます。それを安易に断ることなく、どうすれば力になれるか寄り添って考えてほしい。結果としてどうしようもない場合もあるけれど、しっかり耳を傾けて対応すれば、行政に対する信頼が高まるはずです。「できない理由」を考えるのではなく、前を向いて率先して行動し、より良い社会を一緒につくっていきましょう。
 

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