令和2年5月、横須賀市の職員3人で副業として「一般社団法人KAKEHASHI」を設立。個人の副業を認めている自治体はあるが、稼ぐことも目指した法人の設立は恐らく前例がないだろう。同法人で最初に手がけた事業は、地元農家の規格外野菜を活用したピュレの商品化で、これまで400 個以上を販売。ほかにも、立教大学とのピクルスの開発と販売、専門技術者の雇用支援などを行っている。
※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
神奈川県横須賀市(よこすかし) 財務部 FM 推進課
一般社団法人KAKEHASHI 代表理事
高橋 正和 さん(入庁13年目)
日本の企業においては、副業を解禁する動きが少しずつ広がっている。しかし、公務員の副業となると、まだ一部の自治体に限られている。そのような中、令和2年に副業で法人を立ち上げた高橋さんに背景や思いを聞いた。
まちに出て市民の声を聞く。
私は全国転勤のある企業に3年勤めた後、地元で暮らしたいと思い、横須賀市役所に転職しました。6つの部署を経験した中で、最も印象に残っているのは5年3カ月務めた市長秘書時代。人との接し方や市全体を捉えた考え方など、多くのことを学びました。「まちを良くしたい」という使命感と「どうすれば良いのか」という迷いがある中で、平成30 年に、広報課が開催した半年間の広報戦略PR研修に参加しました。職員30人ほどが集まり、まちへ出て市民の声を聞くワークショップを軸に、メディア関係者や官僚など多彩な講師による講義も受講。まちに出て、普段話を聞く機会があまりない専業主婦や子育て中の方と意見交換をするうちに、熱い”想い”や考えを持つ方が多いことに気付き、「この方々のためにできることはないか」と考えるようになりました。
”想い”を持つ人の架け橋に。
「声を聞く活動は良いまちづくりに必要」、そう確信し、平成31年も有志6人で活動を継続。本業外の時間や休日を利用して、農業の手伝いや漁業・工場の見学、民間事業者との勉強会など様々なことをやり続けました。しかし、単なる自主活動では交通費などの負担が増え、持続性がない…。どうすべきか悩んでいたとき、「法人にしては」とアドバイスをもらい、調べたところ、公務員が副業して法人化するには勤務先の許可が必要と分かりました。そこで、市長に、活動実績や今後の事業展開と”想い”を直談判し、許可を得ました。まちのために、前例にとらわれず行動しようとする私たちの”想い”を理解してくださったのだと思います。
こうして、令和2年5月に「一般社団法人KAKEHASHI(以下、カケハシ)」を設立しました。カケハシは、熱い”想い”を持つ人の”想い”をつなげる架け橋となり、”想い”を実現し、世の中をもっと良くすることを目指しています。地域の方の声を聞き、今は主に4つの事業を展開中です。市内外を問わず「ともに活動したい」という声が多く、今年1月にはオンライングループを立ち上げ、100人を超えるメンバーと勉強会などをしています。
法人に興味を持った全国の自治体の方々から数多くの問い合わせもいただいています。ぜひみんなでより良い世の中をつくっていきましょう。