ジチタイワークス

東京都

【蒲原 大輔さん】公務員、転職する。

かつて課題と感じていた自治体での業務改善やキャリア形成。転職先や社外活動で、自治体全体を良くしたいと奮闘する蒲原さんの思いを聞いた。

※下記はジチタイワークス公務員特別号(2021年3月末発行)から抜粋し、インタビューの内容やプロフィールは原稿作成時(同年2月中旬)のものです。

サイボウズ株式会社
営業本部
蒲原 大輔 さん

かんばら だいすけ:2011年、品川区に入庁。総務部人事課では、職員寮の管理、年金事務や給与控除事務といった職員の福利厚生に関する業務に従事。在籍中には、中小企業診断士の資格を取得するなど、興味のあることに積極的に取り組む。2015年に地域振興部商業・ものづくり課へ移動し、製造業と情報通信業を営む企業に対する支援を担当。2016年11月、「サイボウズ株式会社」へ転職。自治体と連携しながら、社会全体へ波及するような成功モデルの創出と拡散を目指した事業に取り組んでいる。


区役所を離れて見つけたミッションは、自治体の業務改善。

Q.入庁6年目での転職、決断したきっかけは。

人事課在籍時に、いつか産業振興の仕事をしたいと思い、中小企業診断士の資格を取りました。初めての異動で希望していた商業・ものづくり課へ配属されたのは運が良かったと思います。品川区は立地上ベンチャー企業の集積場となっていて、勢いのある企業の支援をしていたときに、漠然と自分も「何かに挑戦したい」と思ったのが転職を考え始めたきっかけですね。

私のように希望部署へ異動できることは珍しく、自治体の人事の多くは思うようにいきません。5年に1回はどこに行くか分からないし自分でコントロールができない。40代になったとき、自分が何をしているか分からないのは不安だな、と。だったら、キャリアを自分でデザインできるように力をつけながら、主体的に働ける環境に身を置きたいと転職を決めました。

当時、転職先は“より自由に働ける環境があるかないか”で探していました。サイボウズは、副業が自由であることなど様々な人事制度があり、チームワークを重視しながら一人ひとりが個性を活かして働ける点に魅力を感じました。また、サイボウズのビジネスであれば自治体に貢献できる、自分が課題に感じていた公務員の業務改善ができるというのも決め手でしたね。実は、在庁時代に訪れた研修先で、当社の業務改善アプリを使って業務効率化をはかっている自治体の取り組みを見たことがあったんです。

私自身、人事課にいたときに、それまでは深夜までかかっていた給与計算の一部の作業を、Accessというソフトを用いて効率化したことがありました。そのシステムが完成する頃には、給与計算の日に定時で帰れるようになっていて。目に見えて作業時間が短くなっていくのが楽しかったですね。しかし、私の異動後は誰もその複雑なシステムをメンテナンスできなかった。そのような経験もあり、“誰もが使えて業務改善できる仕組み”を用いて自治体のデジタル化が進められたら……と考えていました。

 

Q.企業の一員として再び自治体へ入った際に感じたことは。

サイボウズ入社後は、民間企業向け営業チームの一員として知識と経験を積み、平成30年1月から現在の公共チームで自治体向けの営業をするように。同年、神奈川県鎌倉市が働き方改革を推進する人を民間から募集していて、3カ月間、鎌倉市役所に飛び込ませてもらいました。当然、品川区とは勝手が違い、とにかく様々な部署へ話を聞きに行きました。3カ月で成果を出すという目標に向け、市長や弊社社長とで話す機会をつくってもらうなど、必死でしたね。

官民双方の経験があっても簡単に成果が出せるものではなく、一個人として大きな成長の場になりました。そこから、“当社の業務改善アプリをどう自治体に普及できるか”という提案にもつながりましたし、私が現在業務外で取り組んでいる「地方公務員カタリスト事業」の原体験にもなりました。

 

Q.転職しても、「自治体のために」という思いがあるんですね。

不思議なことに、在庁していたときよりも転職後の方が、いろいろな自治体の方と関わる機会が増えました。

「品川区の元職員がサイボウズに転職したらしい」と聞きつけ、声をかけてくださった都内の自治体の方もいて。課題を解決したいと熱い思いで一緒に動いてくださる方がいるというのが、モチベーションの一つになっています。鎌倉市での経験や自治体の方とのつながりの中で取り組んでいることが、前述した地方公務員カタリスト事業です。

経験や技術を積んだ自治体職員を“カタリスト(触媒)”として、自身が培ったスキルを必要としている他自治体へ週1日以上のリモートワークで支援する仕組み。単なるアウトソーシングではなく、カタリスト自身の能力向上や、支援先自治体の問題解決能力が高まるなど、双方向にメリットがある事業です。令和3年より実証実験を開始し、一般社団法人を立ち上げて運営していく予定です。

この事業は副業になりますが、もちろん、自由に活動できています。“自治体で働くことを、より面白い体験に変える”という自分のミッションを、業務内外から達成していきたい。そして、自治体全体をより良くしていきたいと考えています。

 

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