ジチタイワークス

愛媛県西予市

のむら復興まちづくりデザインワークショップ

取組概要

西予市野村地区の復興まちづくりについて、「新たな魅力あるまちづくりを進める」という考えのもと、地域の課題や将来像、地域構想について、「のむら復興まちづくりデザインワークショップ」を開催して、意見交換、議論を重ね、その結果を、よりよいのむらの実現に向けた道標として「のむら復興まちづくり計画」を策定した。
この計画は、野村に住む地域の人たちが描いた、野村の将来像を形にしたものであり、”夢”や”理想”の姿を語っている部分もあるが、「これまでののむら」を守り、「新しいのむら」を創り出すものとなっている。(令和元年度)
今後、計画に記したことを、行動に移していくために、継続的にワークショップを開催し、意見交換を深めていく予定である。

取組期間

令和元年度~(継続中)

※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。

背景・目的

西予市野村町野村地区は、平成30年7月豪雨災害にて5名の死者、919件の建物被害を出すなど、甚大な人的・物的被害が発生しました。災害を乗り越え、誇りを持てる西予市をめざすため、平成31年3月に「西予市復興まちづくり計画」を策定した。
その計画の中で、野村地区の復興方針として「市民、行政、学識者等との協働(総働)による未来へ飛躍する復興の実現」が掲げ、地域の発展につながる復興まちづくりのあり方について、住民と行政、大学等が共にアイデアを出し合う場(ワークショップ)を設け、野村地区の将来像を描いていくことを位置付けている。
その具体適的な取組として、愛媛大学・東京大学の協力を得ながら「のむら復興まちづくりデザインワークショップ」を6回開催し、市民の視点で野村地区の将来像等について話し合いを進めてきた。

取組の具体的内容

「のむら復興まちづくりデザインワークショップ」

(1) 主催 西予市 (協力) 愛媛大学 東京大学復興デザイン研究体

(2) 開催時期と回数 令和元年5月~10月 計6回

(3) 運営方針(一部再掲)
 ① 参加者の報酬は無報酬とし、出欠、入会、退会等出入り自由とする。
 ② 西予市復興まちづくり計画に基づき、「新たな魅力あるまちづくりを進める」という考えのもと、地域の課題や将来像、地域構想について意見交換、議論を行い、その結果をまとめる。
 ③ 結果は西予市ホームページにて、随時、公開する。
 ④ 検討した結果から「のむら復興まちづくり計画」を作成する。

(4) 参加者 延148名 (第1回~第6回)
 ① 野村地区内自治会(浸水被害の範囲)及び社会教育団体等の公的団体代表者
 ② 市ホームページ、防災無線および復旧・復興事業についてお知らせを行う「復興まちづくりかわら版」(紙媒体)を通じて、西予市内在住者から募った一般参加者
 ③ 地域の将来を担うのは若者であることから地元野村高校生

(5) ワークショップの方法
ワークショップでは、進行・調整役(ファシリテーター)のもと、少人数のグループに分かれて、それぞれ参加者が意見を出し合いながら、全体の意見となるようまとめる。一人ひとりの意見をふせんに書き出し、大きな紙に貼りながら、関係する内容をグループ化し、整理します。また、出された意見に対しては、その背景や原因を考え、課題を抽出。最後にグループごとにまとめた意見を発表することで、全体で意見の共有を図る。
全体のファシリテーターを愛媛大学社会共創学部松村暢彦教授が担うほか、愛媛大学の学生が(各2名程度)各グループのファシリテーターや書記等の補助を行う。

(6) 内容


特徴(独自性・新規性・工夫した点)

当ワークショップでは、災害に備えるという文化を形成するとともに、災害はまた来るかもしれないけれど、それ以上に魅力ある郷土であるという郷土愛を育むこと(釜石市津波防災教育の手引きを参照)を念頭に、これまでの暮らしを振り返り、これからより豊かな生活を送るために地域がどうあるべきかを一人称で語り、それを整理することからはじめ、その実現のための原動力となる市民活動の在り方、また、必要となる空間整備について意見交換を行ってきた。
参加者は大人だけが対象ではなく、次代を担う若者の視点が重要であるとの観点から、野村高等学校の協力を得て、高校生から参加者を募った。
第1回においては、参加を表明した野村高校生有志による「野村高校生の想う復興まちづくり」について、地域の大人の前で提案することから始めたほか、各回ワークショップにも高校生が参画していることで、参加者の想いはそれぞれの未来へ向けられることは無論のこと、次代を担う若者へ住みやすい、誇るべき故郷を残したいという想いを生むことができました。
また、ワークショップの手法において各グループに大学生がファシリテーターとして参画することにより、参加者はこれまでの野村を素直に語り、行政というフィルターを通すことなく意見を引き出すことができた。

取組の効果・費用

計6回のワークショップの結果をもとに、「のむら復興まちづくり計画」を策定し、計画の実現のために行政に何ができるのかをアクションプランとして取りまとめた。その後、計画に掲げる河川沿いの魅力ある空間ついて、本ワークショップをプラットフォームとして基本設計を行うこととした。

1 のむら復興まちづくり計画

 (1) 目標
「のむら復興まちづくりデザインワークショップ」では、「野村で残したい思い出」を守る(取り戻す)とともに、「野村で実現したい暮らし」に向けた歩みを進めるため、以下の4つのテーマを掲げて話し合いを行ってきた。そこでの意見等を踏まえて、それぞれのテーマから、のむら復興まちづくりの目標像を以下のように定めた。
 テーマ①肱川とその周辺の整備・活用
  ➡ 肱川と共に生きる
 テーマ②商店街の活性化
  ➡ 野村の住民だけでなく、地域外からも野村に来たくなるような商店街を創る
 テーマ③野村の文化の継承と観光
  ➡ 「相撲文化」や「飲む村、のむら」等の野村の文化を守る
 テーマ④日常生活サービスの維持・更新
  ➡ 地域で支え合い、市民一人ひとりが活躍するまちを創る

 (2) 施策体系


2 アクションプラン
「のむら復興まちづくり計画」に掲げられた目標の実現に向けた”市としての行動計画”をアクションプランとして作成した。このアクションプランは「今、市としてできること」を中心に作成したものであり、地域住民や各種団体等との連携を図ることで更なる展開・発展等が期待されるものだ。

3 のむら復興まちづくりデザインワークショップアクション編
「のむら復興まちづくり計画」に掲げる“河川沿いの魅力ある空間整備”の基本設計について、地域住民が理想の暮らしを営むことのできる空間であることが第一であることから、「のむら復興まちづくりデザインワークショップ」をプラットフォームとして実施することとした。基本設計の完成までに、計3回を計画し、令和元年12月と令和2年2月に2回を開催し、残り1回を令和2年7月に終えたところで、今後、基本設計計画の取りまとめが行われる。

4 費用
 R1:5,219千円

取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)

復興まちづくりとは何か、また、そのためにどんな議論やプロセスが必要だろうか。
平成30年7月豪雨により、尊い命が奪い去られるとともに、甚大な被害を受け、市民生活に大きな影響を与えた。さらに、災害は人口減少、福祉、公共交通などの従来からの社会的課題を浮き彫りにしたとともに、その流れを一気に加速させていくのではないかという驚異を感じさせられた。
社会的課題の加速を食い止めて災害を乗り越えるには、迅速な復旧事業に加えて、本来、災害を受けていなければ到達している成長点へ、予定された時期に、いやそれ以上に早期に到着する必要がある。そのために、今次災害を起因とする被害に対してだけではなく、従来からの社会的課題にも注目し、同時に解決していくことが「復興まちづくり」であると整理した。
そのために議論するテーマやそのプロセスについては、愛媛大学松村教授の支援を受けて、議論に参加する一人ひとりが「残したい野村の風景」と「これからの野村の在り方」を語ることから、解決していかなければならない課題と、実現すべき理想像を整理していくこととした。
このように大きな方向性を見定めたものの、その時の議論の内容によって左右されるものであり、当初、行政の事業としては不確かな道を進むことを、非常に不安に感じていたが、これがまさに市民の主体の「復興まちづくり」なのだと、後に理解した。

今後の予定・構想

「のむら復興まちづくり計画」の推進にあたっては、市民一人ひとりが計画の推進の担い手であることを原則としている。現在、河川沿いの空間整備における基本設計の検討を行っているが、作るだけでなくその管理を踏まえることとし、住民自らが計画し、管理運営に積極的に関わることで、整備した施設に対する愛着や地域への誇りが高まることは間違いなく、西予野村方式の新しいまちづくりの手法とし、市内全体へ伝播していくことを期待している。
また、その先駆けとして、空間整備にかかる基本設計終了後には、この空間をどのように利用し、地域の活性化に繋げるのかについて、愛媛大学と野村高等学校の高大連携による取り組みにより、その方策を検討し、その提案を題材としてワークショップを進めていきたいと考えており、その後も、「のむら復興まちづくり計画」を行動に起こすための話し合いの場として継続していきたいと考えている。

他団体へのアドバイス

松下電器(現在のパナソニック)を創業した松下幸之助さんの本、「道をひらく」という短編集が50年前に発刊されている。その中の一つのエッセイの一部を紹介する。
「風が吹いて川があふれて町が流されて、だからその町はもうダメかと言えば、必ずしもそうではない。十年もたてば、流れもせず、傷つきもしなかった町よりも、かえって余計にきれいに、余計に繁栄していることがしばしばある。大きな犠牲で、大変な苦難ではあったけれど、その苦難に負けず、何とかせねばの思いにあふれて、みんなが人一倍の知恵をしぼり、人一倍の働きを積み重ねた結果が、流れた町と流れなかった町とのひらきをつくりあげるのである」
激甚災害に見舞われた西予市、そして西予市民が取り組むべき姿勢は、こうあるべきだと考えている。
また、全国各地どこにおいても、急な大雨に頻発し災害に繋がる事案が多くなってきている。災害が発生してからではなく、事前に災害が発生したと想定する事前復興を予め検討をしていくことも迅速な復興まちづくりに有効であると言われているので、ぜひ、検討してみては。

取組について記載したホームページ

https://www.city.seiyo.ehime.jp/shisei/machidukuri/fukkoumachidukuri/6734.html

問い合わせ先

愛媛県 西予市 復興支援課
電話番号 0894-62-1455

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