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【相談室】異動の希望は叶うものでしょうか?

「何でこうなってるの?」「もっとこうならいいのに」毎日仕事をする中で、頭をよぎる疑問や悩み…そんな「モヤモヤ」を、一歩先ゆく公務員の皆さんに解決して頂く企画。

第6回は、この時期にソワソワ気になる「異動」について、小金井市の堤直規さんに執筆頂いた。

【今回のモヤモヤ】

異動の希望は叶うものでしょうか?

「希望の部署へ行きたい」もしくは「残留したい」…そんな異動の希望を叶えることは可能なのでしょうか?

 

「異動の希望は叶うものでしょうか?」
「異動の希望はどうやったら叶うでしょうか?」

公務員に異動はつきもの。かつて私もそんな疑問を抱きました。そして、『公務員の「異動」の教科書』(学陽書房)を書いたからでしょうか、今も毎年多くの方からそんなご質問・ご相談をいただきます。
申し訳ないですが、異動の希望をゼッタイ叶える魔法の方法はわかりません。でも、叶いやすい異動の希望はあります。どうやってそれに近づけるか考えていきましょう。

どうなってる?人事異動の手続き

「敵を知り己を知れば百戦危からず」。まず、人事異動の手続きを理解しておきましょう。

皆さんから見える手続きは、①異動希望調査票(例:自己申告書)、②人事異動の内示、③人事異動の発令でしょうか。多くの場合、12月ごろに異動希望調査票が対象者に配付され、1月中旬に必要事項を記入の上で所属長(課長)に提出することとなっています。

異動希望調査票の提出を受けた所属長は、対象者全員について、要配慮事項等の特記事項・本人の異動希望への所属長としての意見をつけて部長に報告します。そして、部長が部全体の意見を付けて人事担当に報告します。その後、人事担当による所属長ヒアリングが行われ、所属長は人事異動に関する意見を述べます。人事担当はそれらを踏まえて内示の原案を作成し、人事担当部長・理事者(都道府県知事・市町村長等)の了解・決裁を受けて内示され、特段の問題がなければそのまま発令されます。

「異動の希望」を叶える方法

ざっくり言ってしまえば、異動のポイントは①本人の希望、②所属長の意見、③人事の動向であり、それらが噛み合っていれば異動の希望は叶いやすくなるということですね。

まず、①本人の希望ですが、異動希望調査票をしっかりと書くことが大事です。都市伝説で「書いても意味がない」などと言われますが、書かなければ上司や人事に希望と事情が伝わりません。多くの人事担当者は調書を読み込んで活かそうとしています。

次に②所属長の意見です。その内容は業務上の観点からの異動の可否が中心です。業務に支障を来すと考えられる場合には「待った」をかけるわけです。このため、異動を希望するならば、業務をよく整理して自分がいなくても回るように引き継ぎ等を進めておくことが大事です。残留を希望するならば、翌年度以降も自分が職場で不可欠とされる状況を確かめておくことです。その上で上司によく相談しておきましょう。相談では、事情を伝えつつも前向きに話すのがポイントです。

③人事の動向は、一職員では組織全体のことは中々わかりません。それでも、誰の異動が近いのか、テコ入れを要するとされる部署がどこか、わかることもあるでしょう。それをつなぎ合わせて、自分の希望を踏まえつつどのような貢献ができるか考えてみることです。それを希望調査票に書き、上司にも相談することで、①②③は噛み合ってきます。

一言でいえば、職場・組織に「求められること」と自分の「やりたいこと」「できること」の重なりを大きくしていくことです。逆の言い方をすれば「楽そうだから」というような異動希望は、上司や人事担当に見透かされています。病気治療や子育て・介護との両立等のために業務負担の軽い部署への異動が必要な場合には、その中で/その先でどのような自分なりの貢献をするのかを考えていくとよいです。

「指名される人」になる!

人事の中では具体的な名前が飛び交うことがあります。所属長は、所属長意見及びヒアリングの中で、業務上支障を来すから「自分の課の誰それは異動させられない」などと意見を言います。また、業務の課題を解決するために「たとえば、○○課の△△さんのような人が欲しい」といった話をすることもあります。

ある自治体の関係者から伺った話ですが、そうした際に出てくる名前はかなり一致するのだそうです。「あいつが欲しい」「誰それは異動させられない」、いずれもその人に対する信頼が言わせる言葉です。

人事異動は、なかなか希望どおりにならないかもしれません。特に幅を広げ、適性を見るための若手の異動はなおさらです。でも、だからこそ、若手がめざすべきは、指名される人材になることです。指名される人材になれば、その強みを活かせるように配慮されるようになります。意に沿わない異動も、当然減ってくるでしょう。

では、指名される人材になるにはどうしたらよいでしょうか? 一番大事なのは能力ではありません。モノを言うのは信頼です。上司も人事担当もそれを見ています。コツコツと信頼を積み上げてください
希望を持ちつつそれに捉われずに、ぜひ仕事を、そして異動を楽しんでみてください!
 


堤 直規(つつみ なおただ)

小金井市行政経営担当課長、キャリアコンサルタント(国家資格)。

1971年生まれ(49歳)。東京学芸大学教育学部卒業、同大学院社会教育専攻修了。2001年小金井市入所。前職はIT関係。情報システム係、国保税徴収担当、企画政策係長、納税課長を経て、2016年から現職。2018年にキャリアコンサルタントとして登録。
著書に『公務員1年目の教科書』(学陽書房 2016年)、『公務員ホンネの仕事術』(時事通信出版局)等4冊。2020年度は月刊『ガバナンス』に「未来志向で考える!自治体職員キャリアデザイン」を連載。趣味は旅行と日本酒・ワイン。特にキャンピングカーでの気まま旅。


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