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こどもまんなか社会とは?概要と具体的な取り組みを解説

こどもまんなか社会とは、子どもの利益を最優先に考えた取り組みや政策を、国の中心に据える社会目標のことだ。令和5年4月に施行された「こども基本法」では、今後の子ども政策についての基本理念が示された。さらに、施策の立案と実施を担う行政機関である「こども家庭庁」も創設され、こどもまんなか社会の実現を目指す。今回は、こどもまんなか社会の概要と、具体的な取り組みを紹介する。

こどもまんなか社会とは

こどもまんなか社会とは、子どもや若者の視点に立ち、子どもにとって最善の利益を第一に考え、当事者の意見を政策に反映する社会ビジョンのことだ。全ての子どもが権利を保障されながら幸せに暮らし、健やかに成長できるよう、社会全体で後押しすることを目標としている。

子育て世帯の現状

これまで様々な少子化対策が行われてきたが、子どもの数は減少が続いており、少子化や人口減少に歯止めがかからない状況だ。令和4年に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯は991万7,000世帯と、全世帯の18.3%にとどまっている。子育て世帯が全世帯の20%を割るのは初めてのことで、子どもを育てる家庭そのものの減少が、改めて浮き彫りになった調査結果だ。 

子どもを取り巻く日本の社会環境も厳しいものとなっている。令和2年度には、児童虐待の相談対応件数、不登校、ネットいじめの件数がそれぞれ過去最多となり、自殺した19歳以下の子どもは800人にものぼる状況だ。  また、コロナ禍によって子ども、若者、子育て世帯も大きな影響を受けていることから、支援の充実や質の向上が求められている。

こども基本法の位置づけ

全ての子どもや若者が、将来にわたって幸せに暮らせる社会を実現しようと、令和5年4月に「こども基本法」が施行された。同法は国際条約である「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」を踏まえた内容となっており、 今後の子ども施策の基本理念が明確に示されている。国、都道府県、市町村区などが、子育て施策を総合的に推進していく上での指針となる位置づけだ。さらに、こども基本法の施行と同時に、子ども施策の立案、実施を担う司令塔として、こども家庭庁も創設された。

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具体的な取り組み

こどもまんなか社会の実現に向けて、現在どのような取り組みが始まっているのだろうか。具体的に見ていこう。

◆こどもまんなか応援サポーター

「こどもまんなか応援サポーター」は、こども家庭庁が推進する取り組みだ。子どもたちの最善の利益を常に考え、子どもたちが健やかで幸せに成長するという「こどもまんなか宣言」の趣旨に賛同して、自らもアクションに取り組む個人、企業や団体、自治体などが対象となっている。 
届け出や申請などは不要で、趣旨に賛同した上でSNSでの発信を行えば、こどもまんなか応援サポーターを表明できる。自分なりのアクションをSNSで発信する際には、「#こどもまんなかやってみた」をつけることが参加の条件だ。スポーツ選手や芸能人など著名人もこどもまんなか応援サポーターに取り組んでいて、YouTubeには多くの応援メッセージが寄せられている。さらに、全国の地方自治体もこどもまんなか応援サポーターを宣言して、それぞれが行う子ども支援の施策をホームページなどで情報発信している。

◆こどもまんなかアクション公式LINE 

こどもや若者世代の利用が多いLINEでも、こども家庭庁の情報発信が行われている。「こどもまんなかアクション公式LINE」は、子育てを応援する様々な情報をを知ることができる公式アカウントだ。このアカウントでは、令和5年6月13日に閣議決定された、次元の異なる少子化対策への方針を示す「こども未来戦略方針」についての広報活動も行われている。

 

◆DXで「こどもまんなか」 プロジェクト

子育て世帯の負担軽減や利便性向上などを目的に、DXで「こどもまんなか」プロジェクトが進められている。将来的に目指すイメージは、子育てに必要な行政手続きや、保育サービスの情報提供、給付金などの経済支援がオンライン上で完結できるようにシステム整備を行う。子どもに関する様々な事業、行政手続きなどを対象に進められ、サービスは順次リリースされる計画だ。令和4年12月には「こども政策DX推進チーム」が発足し、子育て支援の分野でも国を挙げてデジタル化を推進していく方針も示された。

先進事例として、愛媛県西条市の「こどもDX」が注目されており、スマートフォンのアプリ上で、母子手帳・予防接種・健診・子育てカレンダーなどを一括管理できるシステムの開発が進められている。さらに、行政側も積極的にデジタル技術を活用しようと、「出生手続きDX」も進行中だ。これは、子どもの誕生時に必要な出生届や国民保険加入、児童手当、医療費助成など、多くの行政手続きをDXで一元化する取り組みだ 。さらに、こうした手続きデータを子育てアプリと連携させることで、子育て支援を充実させていこうというねらいもある。

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こどもまんなか社会は、今後の子ども政策の基本理念

子どもに関する施策を進める上で、各自治体も「こどもまんなか社会」の趣旨を理解する必要がある。
政府は全ての子どもや若者が将来にわたって幸せに暮らせる「こどもまんなか社会」を目指し、子どもや若者、子育てをする当事者の意見を政策に反映することで、実現に近づけていこうという考えだ。

子どもたちにも幸福を追求する権利を認め、若い世代の誰もが仕事や結婚、子育てに希望を持てる社会の実現が期待される。

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