平成27年、東京都渋谷区と世田谷区が同性カップルを婚姻相当の関係と認めるパートナーシップ制度を開始。日本でも少しずつ性的マイノリティに関する取り組みが進んできたが、地方ではどうか。越前市で取り組みに力を入れる緒方さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.19(2022年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
福井県 越前市 総務部 市民協働課 ダイバーシティ推進室
緒方 祐 さん( 入庁9年目)
LGBTを取り巻く環境を改善するための活動を展開。
多様な性の理解促進に向けて様々な活動を続けている緒方さん。平成28年「地方自治研究全国集会」において、越前市での取り組みをテーマに執筆したレポートが、約250本の中でトップの優秀賞に輝いた。令和3年12月に市役所の階段を虹色に装飾した「にじいろ階段」もメディアやSNSで肯定的な反響が大きく、活動の手応えを感じているという。
行政文書の見直しを実現
鳥取での大学時代、友人に誘われて多様な性について啓発するサークルに設立から参画しました。勉強会や交流会などでその多様性を学ぶ中、行政窓口で配慮のない対応に傷ついたという当事者の話を聞き、公務員になって職場内外の人の意識や仕組みを変えていきたいと決意。試験の1次選考からその思いを伝えて、採用に至った越前市に入庁しました。
最初の5年は、行政管理課と社会福祉課に所属。業務の傍ら、職員組合やNPOでLGBTに関する啓発活動を継続していました。令和元年4月には念願のダイバーシティ推進室に配属となり、取り組みを加速させています。例えば、行政文書にある性別の記載欄が必要かどうかを全庁的に見直し、計69件の不要な性別欄を削除しました。
また、性的マイノリティをテーマにした啓発ポスターの展示、小・中学校への出前講座、教職員や保育士など子どもに関わる大人向けの講演会、市民向けの講演会なども行ってきました。当初は、講演会のテーマとしてどうなのかと団体内で慎重な声もありました。しかし、今では関心をもって応援してくれる職員が増えていると変化を感じて、うれしくありがたいなと思っています。
どの地域にも当事者がいる。
行政の仕事は、住民の声をもとに進めることが多いでしょう。しかし、性的マイノリティに関しては当事者が相談するにはカミングアウトが必要なので、なかなか声を上げにくい現状があります。都市でも地方でもどんな地域でも必ず当事者はいます。だからこそ自治体側が率先して自ら学んで取り組む必要があります。
ほかの自治体の方からよく受ける相談が2つあります。まずは予算があまりないこと。越前市でも大きな予算の確保は難しいのですが、できることから考え、ほかの自治体の公開資料を使わせてもらったり、大学がつくったポスターを展示したりしています。好評だったにじいろ階段も低価格のパネルに越前和紙を貼るなど工夫して、製作しました。
次に、こうした取り組みをやっている人が身近にいないこと。私は困ったとき、全国の同志や職員に相談しています。もし困っている方がいれば、私が話を聞きますので、気軽に連絡してほしいです。
今は福井県初となる同性パートナーシップ制度の導入を目指しています。様々な立場の人が手を取り合い、LGBTの方をはじめ誰もが安心して暮らせる社会をつくるために、これからも取り組みを進めていきます。