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キャッシュレス化を起点に広げる地域交通DX

路線バスなど地域交通のキャッシュレス化は、職員や運転手の負担軽減に加え、住民の利便性向上にもつながる。それを起点にサービスの維持・向上につながるDXを進めている、福岡県春日市と滋賀県竜王町の事例を紹介する。
※下記はジチタイワークスINFO.(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
CASE1|福岡県春日市|初期費用を抑えた簡易端末で、地域交通の存続を支える
ポータブルタイプの簡易型IC車載機
春日市はコミュニティバスの運営事業者変更に伴い、運賃の決済手段を見直すことになった。交通系ICカード決済の利便性を維持するため、簡易型IC車載機を導入。初期費用を抑えつつ、住民生活に欠かせない交通環境を守っているという。

春日市
元・都市整備部 都市計画課(現・都市整備部 道路管理課)
統括係長 松本久幸(まつもと ひさゆき)さん

新たなバス事業者探しとともに、運賃の決済手段の見直しも課題に。
平成15年の事業開始以来、住民に親しまれているコミュニティバス「やよい」。幹線道路を走る路線バスを補完するため、バスセンターから住宅地や公共施設まで7路線・各12便を運行している。運営は、協定を結ぶ県内のバス事業者に委ねてきた。
ところが令和5年、運転手不足などを理由に次の協定更新に慎重な姿勢が示されたという。「今後の見通しを正式に確認すると、“継続は難しい”と返答がありました」と松本さんは振り返る。「将来的には、バスセンターと公共施設を集約した複合施設の建設計画もあり、それらと住宅地を結ぶコミュニティバスの存在は不可欠です。“住民の生活の足を堅持する”という方針のもと、協定満了を待たずに令和6年から事業者を探しはじめました」。約30の県内事業者に問い合わせ、その中のI社と交渉。令和7年2月、合意・締結に至った。
新体制への移行を進める中、旧事業者から車体は引き継げるものの、交通系ICカードの運賃決済機には機密情報が登録されているため、譲渡を受けられないことが判明。新たな決済手段の検討が必要になったという。「一般的な路線バスの交通系ICカード決済は、初期費用の費用対効果が見合いません。二次元コード決済も検討しましたが、処理速度に課題がありました」。クレジットカード決済も希望にそぐわず頭を悩ませていたとき、旧事業者を通じて提案されたのが簡易型IC車載機だった。
費用や乗り降りのしやすさから、交通系ICカード決済を選択。
簡易型IC車載機とは、交通系ICカード「ICOCA(イコカ)※1」などの対応機器を展開する「JR西日本テクシア」のポータブル端末だ。小規模事業を想定し、一般的な路線バスのIC車載機と比べて機能を絞ることで、設置やメンテナンス費用を抑制。設置はバス降車口のみで、乗車時のカードタッチは不要となる。多区間精算には、決済時に運転手が直接操作をすることで対応できるという。「タッチ1回で運賃精算ができる点も魅力でした。10種類の交通系ICカードも利用できます」。令和6年に70歳以上の市内在住者のバス運賃を無料にしたことで利用が増加し、運行遅延が問題になっていた。そのため円滑な乗り降りにつながる点も、導入の決め手になったという。
仕様については、同市と同社、九州エリアで一緒に事業を進めている「ニモカ」の3者で協議を重ねた。通常は運用開始まで1~2年かかるというが、同市は導入決定から比較的早く運用を開始している。「当面は現金決済のみの運行を覚悟していましたが、同社の迅速な対応のおかげで間に合いました。緊密に連携してくれたニモカやバス事業者にも感謝しています」。運賃が基本一律100円とシンプル、かつ事前に仕様書を作成していたことも短期間で運行を開始できた要因だそう。「国の補助金を申請する時間はありませんでしたが、新たな事業者への費用と簡易型IC車載機の初期費用を想定よりも抑えられたので、当初予算で対応することができました」。
※1 ICOCAは西日本旅客鉄道株式会社の登録商標です

※2 nimocaは西日本鉄道株式会社の登録商標です
3日間で設備を入れ替え、路線も便数も維持して運行開始。
新体制への移行は令和7年10月1日。その日から3日間運休し、全8台のコミュニティバスから旧設備の撤去、車体ラッピングの変更、簡易型IC車載機の設置などを実施。4日から運行を開始した。「バスの路線、便数、運賃の決済手段は以前と変わりません。住民の利便性を損なうことなく移行できたと思います」。
運転手不足によるバス事業者の事業縮小や撤退は、どこの地域でも起こり得る懸案事項といえるだろう。そのため松本さんは、前例にとらわれず早い段階から将来を見据えて備えることの重要性を指摘する。「新たな事業者を見つけられたのは、協定満了を待たずに事業者の変更を決断したからだと考えています。最適な選択肢をしっかりと見極めるためには、“住民にとって一番大事なことは何か”を考え、アンテナを張って必要な情報をキャッチすることが大切ではないでしょうか」。同市の取り組みは、地域交通を持続させるためのヒントになるだろう。



CASE2|滋賀県竜王町|マイナンバーカードによる本人確認で通学定期代補助をオンラインで完結
定期券と連携させたマイナンバーカードの活用
バスの定期券購入システムにマイナンバー認証機能を組み込み、WEB上で定期券の割引購入を可能にした竜王町。申請者は来庁不要になり、職員の負担も軽減されたという。今後は周知に注力し、利用者を増やす考えだ。

竜王町
未来創造課 政策推進係
主事 本間 龍輝(ほんま りゅうき)さん
申請が集中する新学期前後は、自治体職員の事務負担が増加。
町内在住の中学生から30歳未満の学生を対象に、路線バスの通学定期券代半額補助を平成30年度より実施している同町。申請者は年々増えているものの、補助を受けるには定期券を全額で購入後、役場の窓口で補助金を申請する必要があり、住民の負担になっていた。
加えて課題になっていたのが、申請者の増加に伴う職員の事務負担だ。申請書や補助金の振込口座情報などを4人でチェック。不備があれば申請者に電話で再来庁を求め、申請書を修正してもらう必要があったという。「定期券の購入者が増える新学期前後は、100件以上の申請が集中します。その上、初めて申請をする人が記入方法や手続きに戸惑うケースも珍しくなく、全体の4割ほどの申請に不備がある状況でした。また、補助が決定すると金額と振込日を書面に記載して、一件ずつ郵送する作業もあります。毎回2週間近く業務に追われ、改善の必要性を感じていました」と本間さんは語る。
そこで令和6年の秋頃、路線バス事業者向けに、定期券のWEB購入システムを手がけている「JR西日本テクシア」に相談したそうだ。以前から地域交通の利用促進にマイナンバーカードの活用を検討していたことも、同社に声をかけた理由だという。「マイナンバーカードを使って、最初から定期券を半額で購入できる仕組みを構築できれば、住民も職員も手問が省けるのではと考えました」。
同社では、手持ちのICOCAを定期券として使えるようにしたり、定期券をWEB上で購入できたりするシステム「iCONPASS(アイコンパス)※」を提供している。これに、マイナンバー認証機能を組み込むことを提案されたそうだ。
※iCONPASSは株式会社JR西日本テクシアの登録商標です
割引購入や来庁不要を周知し、WEB申請の利用拡大を目指す。
マイナンバー認証機能を組み込むことで、住民は半額補助が適用された定期券の購入を、オンラインで申請できるようになった。オンライン申請には、あらかじめ本人確認アプリをスマホにインストールしておく必要がある。そのスマホで申請手続きを進めると、本人確認画面から同アプリに移動。スマホにマイナンバーカードをかざせば、申請に必要な本人情報を読み取り、割引適用額で購入できる仕組みだ。定期券代の割引額はバス事業者が立て替え、月ごとにまとめて同町に請求する。「当町の仕組みでは、マイナンバーカードから取得した個人情報をバス事業者が直接扱うことはありません。事業者が懸念していた情報漏えいなどのリスクや、事務負担の増大も防げました」。
令和8年2月よりサービスを開始。オンライン申請の場合は窓口業務が発生しないことに加えて、申請者への通知の郵送や補助金の振り込みが不要になる。そのため、職員の負担だけでなく郵便代や振込手数料も削減されたという。実は、iCONPASSにマイナンバー認証機能を組み込んだ事例は、同町が全国で初めてだった。しかし抵抗はなかったそうだ。「システムやサービスを新しく構築するのは大変ですが、既存のものを改修する方法なので、前向きに検討できました。他自治体にとっても、導入を検討しやすいと思います」。
従来通り来庁して申請する住民もいるため、窓口対応そのものがなくなったわけではない。「新学期が始まる前にサービスを開始できたのですが、周知が後手にまわりました。現在は申請窓口での案内や郵送を通じて、住民にサービス開始を伝えています。新たな取り組みを浸透させるには、計画的に、継続して周知することが大切ですね」。

地域交通DXを広げる3つのステップ

導入に関して自治体からよくある質問
【簡易型IC車載機について】
Q. バスヘの設置工事は1日に何台まで対応できますか?サーバーの設置は必要ですか?
A. 1日あたり1~2台です。
バスのシガーソケットやUSBポートなどを介して、車内で充電できる環境を整えれば使用できるため、1日あたり1~2台を設置可能です。また、自治体が新たにサーバーを設置する必要はありません。
【iCONPASSについて】
Q. バスや電車など、複数の定期券情報をICカードに集約することはできますか?
A. カード1枚に集約できます。
定期券情報は当社のサーバーで管理し、カードには情報を書き込まない仕組みです。そのため、異なる事業者の定期券を1枚のICOCAに集約できます。定期券情報や購入履歴はマイページから確認可能です。
【マイナンバーカードの活用について】
Q. マイナンバーカードからはどのような情報を読み取ることができるのでしょうか?
A. 基本4情報を読み取れます。
基本4情報とは、氏名・住所・生年月日・性別のことです。これらを読み取ることで、優待施策の対象者かどうかを確認できます。特定個人情報にあたるマイナンバー(個人番号)は読み取りません。
お問い合わせ
サービス提供元株式会社JR西日本テクシア
兵庫県尼崎市潮江1-1-33
TEL: 06-6496-6416(平日9:00~17:45)
Email: info_product@kwf.techsia.co.jp
お問い合わせ・詳細はこちら
※モバイルICOCAは西日本旅客鉄道株式会社の登録商標です
















