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教育委員会への長期在籍を軸に学校を熟知する職員を育てる

教育行政のスペシャリストを育てる人事・研修制度
京都市には採用から退職まで一貫して教育委員会に在籍する人事制度があるという。その専門性をさらに高めるために、学校・幼稚園への研修派遣も実施。職員の知見や人脈を、教育施策に還元している。
※下記はジチタイワークスVol.46(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

京都市
教育委員会 総務部 総務課
総務人事係長
甲斐 裕介(かい ゆうすけ)さん
一貫して教育に向き合う職員を育てる、独自の仕組みとは。
同市には、採用から退職まで「教育行政職」として教育委員会に在籍しつづける独自の人事制度がある。同職は専門職のように特別な技術や資格を必要とせず、採用試験は一般行政職として人事委員会が実施。「令和8年4月時点で、教育委員会に所属する行政職は317人。その中の281人が教育委員会が採用した教育行政職です。私も採用から18年、在籍しています」と甲斐さん。
この制度は昭和45年頃から受け継がれてきたという。背景にあるのは、学校現場を深く知る“教育行政の専門人材”を育てる方針だ。「教育行政は、中立性を保ちながら長期的な視点で施策に取り組むことが求められます。地域や学校の実情を大切にしながら、複雑な課題に対応するには、職員の専門性を高めて学校現場と連携することが必要です」。
異動がなくスペシャリストを育てやすい一方で、組織が硬直化する懸念がある。そこで、教員が多く所属する指導系と、人事給与や施設管理などを担う管理系の課に交互で配置を行い、幅広い知識を得られるように工夫。また、首長部局との人事交流を通じて、異なる分野の経験や発想を取り入れているそうだ。


学校現場でのリアルな経験が教育行政職の指針となる。
また、人事制度に頼るだけではなく、現場と密接に関わる指導主事(※)の学校訪問への同行や、若手職員向けの研修など、様々な取り組みも行っている。その中でも、学校現場との相互理解につながっているというのが、教育行政職が市内の学校・幼稚園で勤務する「京都市立学校・幼稚園研修派遣」だ。
研修の目的は、現場経験を通じた人材育成にある。「教育行政職は単なる事務の担い手にとどまらず、学校現場を理解し、自ら課題を見つけ、解決に向けて行動する力が求められます」。研修は採用後3年以内の若手は推奨、主任昇任後2年6カ月以内の職員は必須とされており、期間はそれぞれ1週間程度。研修先の選定や調整は本人が行うが、指導主事からアドバイスをもらうこともあるそうだ。授業の見学や職員会議への同席、教職員との意見交換などを通じて、教育活動に直接関わる機会をもつ。
甲斐さんも採用後の3年目に小学校で研修に参加。「学校には教員以外にも多様な職種があり、それぞれの立場から子どもを支えていることがよく分かりました」と振り返る。キャリア教育の一環として高学年の児童に授業をしたときは、子ども向けに話すことの難しさを実感したそうだ。主任昇任後は幼稚園と中学校へ。「前回と比べ、教育行政職としての知識が身に付いていたため、より深い学びを得られました。幼稚園では子どもとの遊びの一つひとつにねらいがあることに気づかされましたね。中学校では生徒会活動や部活動の見学を行い、思春期の生徒指導の大変さを感じました」。
※教育委員会に所属し、学校や教員へ専門的な指導・助言を行う専門職。学校現場で豊富な経験を積んだ教員から任命される。授業改善の支援や教員研修の実施、学校と行政の橋渡し役を担う。

現場で得た知見を施策に活かし学校や首長部局とつながる。
こうした学校現場への理解と共感が、仕事のやりがいと施策立案につながっている。「学力向上の施策を考える際、研修での経験をもとに自分なりの意見を出せるようになりました」。教職員と顔の見える関係が築けたことで、コミュニケーションも取りやすくなったそうだ。
基本的に学校運営に関する裁量は校長・園長に委ねられている。その上で、方針の転換などは教育委員会が専門性を発揮して主導。例えば同市では全校での通話録音に向けて導入校を拡大中だ。保護者や地域住民からの反発が予想されても、教育委員会がリスクを引き受けるという覚悟をもって進めている。「学校現場の常識は一般社会とのギャップを感じることが少なくありません。調整や修正を行い、判断が難しい案件を後押しすることも、私たちの役割です」。
近年、ヤングケアラーや児童虐待への対応など首長部局との連携が求められる場面が増えている。「学校と首長部局のハブとして機能するには、相手の立場を尊重しながら合意形成を図る姿勢が欠かせません」。学校現場の知見を土台に、多様な視点を備えた人材の育成は、複雑化する教育課題に対応する上でますます重要になっていくだろう。


















