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手軽な野菜摂取量チェックが、健康づくりの入口になる

推定野菜摂取量の可視化ツール
野菜を意識して食べていても、必要な摂取量に届いているかを知るのは難しい。自治体のイベントや学校教育を通じて手軽に摂取量を把握できるツールを活用した、足立区と豊橋市の取り組みを紹介する。
※下記はジチタイワークスINFO.(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
CASE 1|東京都足立区|野菜を食べやすい環境を整え 区民の糖尿病予防に注力。
野菜摂取を通じた健康事業に10年以上取り組んでいる足立区。年代を問わず、暮らしの様々な場面で自然に健康になれるよう環境を整え、楽しみながら参加できる工夫を重ねてきた。区民の食習慣にも変化があらわれているという。

足立区
こころとからだの健康づくり課
健康経営・協創推進担当係長
関谷 昴幸(せきや たかゆき)さん

足立区
こころとからだの健康づくり課
糖尿病対策担当係長
黒川 真美(くろかわ まみ)さん

足立区
こころとからだの健康づくり課
栄養施策推進担当
北澤 優美(きたざわ ゆうみ)さん
推定野菜摂取量を数値で知ることが具体的な行動変容のきっかけに。
同区は平成25年、野菜摂取を呼びかける健康事業「あだちベジタベライフ」を始めた。「当時、区民の健康寿命が都の平均より約2歳短く、糖尿病治療にかかる医療費が23区で最も高い状況でした。そこで、糖尿病対策に絞った取り組みを、特に“野菜から食べること”による血糖値上昇を抑える効果に着目して事業を進めてきました」と、黒川さんは説明する。区民の野菜摂取量は、年1回のBDHQ(※)による食習慣調査で確認し、データにもとづいた事業を展開。また、意識しなくても野菜を摂取できる環境づくりに力を入れ、野菜料理を提供する約1,000店舗の飲食店などが“ベジタベライフ協力店”として登録されているそうだ。
同区の強みは全庁的な連携体制にある。教育委員会やシティプロモーション課、危機管理部など幅広い部署と協力。例えば防災分野では、ローリングストック向けに野菜を使った備蓄食品レシピを開発し、講座も開催。複数の事業とかけ合わせ、区民との接点を増やしている。
令和3年からは「カゴメ」が手がける推定野菜摂取量の測定機器「ベジチェック®」を取り入れた。これまでの様々な取り組みに加え、野菜が十分に取れているのか、不足の場合もどのくらい足りていないのかをより身近に、具体的に数値で把握してもらうためだ。同機器は、手のひらを30秒ほどセンサーに当てるだけで、直近2~4週間前の推定野菜摂取量が分かる。「自分自身の摂取状況を知ることは、野菜を食べる意識や行動につながります。採血なども要らず、手軽に楽しく測定できるので、意識の底上げになると考えています」と、関谷さん。令和7年度には健康診断やイベントなどに持ち出して約6,700人が体験した。令和8年度からは区の2カ所の施設に常設している。
※BDHQ=Brief-type self-administered Diet History Questionnaire(簡易型自記式食事歴法質問票)食生活に関する約80の質問から、食品摂取量および栄養素摂取量の推定値を算出できる。

食を楽しむしかけを入口にして健康に無関心な層にも届ける。
全世代を対象とする同事業だが、常に同じアプローチを続けているわけではない。協力店とキャンペーンを実施する“食育月間”のテーマとターゲット設定には、区が行う食習慣調査の結果を参考にしているという。前年の調査結果から、令和8年度は若い男性をターゲットに。外食の利用頻度が高く、野菜摂取量が少ない傾向が見られたことから、麺類を提供する飲食店に協力してもらい、野菜を豊富に使った麺メニューを食べるとプレゼントが当たる企画を実施。その結果、男性の参加者は前年の企画と比べて4割ほど増加したそうだ。
並行して健康関連のイベントなどを開き、推定野菜摂取量を気軽に測定できる機会を設けている。「初めて体験した人が、数カ月後に別のイベントを訪れて測定することも増えています。繰り返すことで、“前回よりも野菜が取れてきた”と自身の変化を実感できます」。健康セミナーなどの健康を前面に出したイベントよりも参加のハードルが低く、手軽に自身の健康状態を知ることができているという。

意識の変化とともに成果が見え目指すまちづくりに近づく。
10年以上にわたる地道な取り組みは、実を結びつつある。保育園や小・中学校では「ひと口目は野菜から」が食前の合言葉になっており、習慣付いている子どもが半数以上いるという。「子どもから親・祖父母へ、食べ方を伝える好循環も生まれているようです。区民の平均野菜摂取量は、以前は国の平均より40g以上少なかったのですが、今では差が約20gまで縮まるなど、効果が出てきています」と黒川さん。
推定野菜摂取量の可視化は、区民への健康指導にも役立っているという。「必要な摂取量を、具体的に知ってもらうきっかけになっています。栄養士も説得力をもって説明でき、目標設定がしやすくなりました」と北澤さん。関谷さんも「測定は簡単なので、健康への関心が低い人でも気軽に体験できることが利点です。職員がイベントなどに出向くことで測定の機会をつくれるので、今では多くの区民に体験してもらえています」と手応えを語った。健康づくりを意識するきっかけが身近にあることで、同区の目指す“自ずと健康になるまち”へと近づいている。

CASE 2|愛知県豊橋市|子どもの食育を起点として 家庭や地域へも波及させる。
野菜の生産が盛んな一方で、市民の消費は少ない傾向が見られていた豊橋市。「ベジチェック®」を活用した小学校での食育授業を開始し、子どもから家庭や地域へ、野菜摂取への意識と実践を広げている。

豊橋市
健康部 健康増進課
安田 恵(やすだ めぐみ)さん

豊橋市
健康部 健康増進課
日下部 大輔(くさかべ だいすけ)さん
野菜摂取不足の実態を把握し学童期からの食育を始める。
市民の野菜摂取量不足を課題に感じていた同市。令和4年度、市内5カ所のスーパーなどに同機器を設置して調査したところ、実際に摂取量が不足している人の割合が高いことが分かったという。「数値で知ることで改めて現状を認識しました。国保加入者の糖尿病・高血圧有所見者の割合が全国と比べて高い傾向にあり、食習慣の改善が必要だと実感しました」と安田さんは振り返る。
そこで着目したのが、食生活の基盤をつくる児童への食育だ。他自治体の先行事例を参考にしながら、小学校の学校保健委員会と連携した“野菜摂取チャレンジ”を企画。「子どもたちに野菜の大切さを学んでもらうことで、食習慣の改善につながればと思います。さらに、一緒に暮らす保護者の意識も変化することに期待しています」。
楽しみながら実践を重ね家庭の食生活にも変化が。
まずは児童が同機器で推定野菜摂取量を測定し、授業で野菜の働きや摂取の大切さを学ぶ。その上で一人ひとりが“朝ごはんで野菜を食べる”などの目標を設定。ワークシートを使って約1カ月間、野菜摂取量を増やすチャレンジを行う。その後、再び測定し、変化を数値で確かめる流れだ。「食べた野菜に色を塗ってビンゴを完成させるなど、ゲーム感覚で取り組める内容にしました。授業後には、児童が野菜摂取を呼びかけるポスターを作成し、ベジチェックコーナーとともにスーパーに掲示。地域への啓発になっています」と日下部さん。
令和7年度の調査では、食育の授業を受けた児童の半数が“以前より野菜を食べる量が増えた”と回答。保護者アンケートでも“家庭で授業の話をしてくれた”“積極的に野菜を食べるようになった”といった回答が寄せられたという。「児童の学びが、家庭にも影響を与えられている点に手応えを感じています」。

互いのメリットを明確にし民間との連携を広げる。
食育で取り組んだ成果を地域へ広げる上では、民間事業者との連携も欠かせない。「行政側の目的だけでなく、相手にどんなメリットがあるのかを企画段階から示して提案することを意識しています」と安田さん。職員が実際に現場に足を運び、店舗ごとの事情にも配慮しながら協力関係を築いてきた。
今後は市内全52校での食育の実施を目指しながら、スーパーなどでは野菜摂取だけでなく、減塩の啓発も行っていくという。「小売店や食品メーカーと連携し、ヘルシーなレシピをつくるなど、新しい企画にも挑戦していきたいです。家庭に根付いた意識が継続するように、地域のスーパーやコンビニなど、日常生活に身近なところから、無関心層も巻き込みたいですね」と展望を語った。


導入実績
●富山県砺波市
●北海道中札内村
●茨城県かすみがうら市
●福島県国見町 などのべ553団体
※令和8年8月時点 カゴメ調べ
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