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電話対応の前提を見直し職員が一丸となって現場発の改善を重ねる

福祉・医療
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電話対応の前提を見直し職員が一丸となって現場発の改善を重ねる

自動音声とSMSを活用した電話対応改善の取り組み

入電が多く、区民を待たせるとともに職員の業務もひっ迫していたという文京区。“職員が電話対応する”という当たり前を見直し、段階的にシステムを導入しながら、区民サービスの向上と職員の負担軽減を図った。

※下記はジチタイワークスVol.46(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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文京区
福祉部 国保年金課
課長補佐 新名 有紀子(にいな ゆきこ)さん

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文京区
福祉部 国保年金課
主事 出川 舞(でがわ まい)さん

保険関連の電話問い合わせが膨大で、区民と職員双方に負担が生じていた。

“電話対応で忙しく、事務が後まわしになってしまう”という悩みをもつ自治体は多いだろう。同区の国保年金課は、国民健康保険、国民年金、後期高齢者医療制度を所管しており、電話による問い合わせが年間5万件を超えていた。特に、加入・脱退手続きや、保険料の計算を担当する国保資格係への問い合わせが、全体の20%以上を占めていたという。「繁忙期には、終日電話が鳴りやまない日々が続きます。電話対応も重要な業務ですが、集中を要するほかの業務を並行して行うことは難しい状況でした」と新名さんは振り返る。

「当時は問い合わせ先として管理係の電話番号をホームページなどで案内していたため、管理係が一次受けをして各担当へ振り分けることが多かったです。このワンクッションがあることで、速やかに対応できないケースも多くありました」と出川さん。電話対応に追われて事務が停滞し、職員の超過勤務や区民サービス品質の維持が課題となっていたという。

実際のところ、問い合わせ内容は定型的なものが多く、ホームページで確認できる内容も少なくない。しかし、区民にとってはその該当箇所を見つけることが難しいのではと考え、令和6年度、区民からの定型的な質問に回答するチャットボットを導入。庁内でDXを推進する動きがあり、情報政策課からの呼びかけを受けて踏み切った。時間を問わず区民が自力で答えを得られる環境が整い、一定の効果があったものの、個々の事情に関する相談への対応には限界があったという。

チャットボット運用の知見を活かして改善を重ね、新たな仕組みを構築。

そこで令和8年度に自動音声とSMSを組み合わせたシステムを導入。自動音声の案内に沿って番号を選んで進むと、該当する情報を掲載したURLがスマートフォンにSMSで送信される仕組みだ。電話で相談したい区民のニーズに応えつつ、職員負担の軽減をねらったという。「直接の電話対応が減ることでサービスの品質が低下するのではと、課内で懸念の声もありました。それでも区民を待たせないことや、職員が個別の相談や事務に集中できることを示し、他自治体の事例も交えながら合意形成を進めました」。自動音声の分岐シナリオは、チャットボットで蓄積したノウハウを活かしながら、8つの係から選出された担当者が設計したという。

運用開始後すぐに、問い合わせ入電のうち約2割が職員対応なしで完結できるようになった。令和8年の6月には、職員による電話対応件数が令和6年度の同月比で60%も減少。こうして迎えた繁忙期は例年になく落ち着いていたという。「職員が対応する問い合わせの件数を減らしたことで、複雑な相談について集中して対応することができました。また、導入に対して区民からの批判的な意見も少なく、スムーズに受け入れてもらえたと感じています」。

▲定期的に集まり現場目線の意見を交換している。
▲定期的に集まり現場目線の意見を交換している。

現場の課題やアイデアからブラッシュアップを重ねる。

毎年7月の納付書発送時期には問い合わせが増加していた同区。その対策として繁忙期専用のシナリオも作成したという。「例えば、特に増える問い合わせ内容を優先的に自動音声の冒頭で案内しています。また、比較的つながりやすい時期をあらかじめ案内することで、問い合わせの分散を図りました。ほかにも、専門用語を日常的な言葉に言い換えたりと、区民が迷わず問題を解決できるような工夫を凝らしました」と出川さん。「定期的に担当者同士で集まり、現場で見えてきた課題やアイデアを共有し、シナリオのブラッシュアップをしています。こうした場を重ねる中で、係を越えたつながりができて、課としての一体感が高まりました」と新名さんは笑顔を見せる。

こうした成果の背景には、導入時からの丁寧な進め方があったという。「徹底したのがスモールスタートです。最初から完璧な仕組みを目指してハードルを上げるのではなく、まずは実行可能な範囲でやってみることが肝心だと考えています」と語る。システムの導入前には、どのような電話が、どの時間帯に、どのくらいの頻度で入っているのかを分析。現状を正確に把握した上で、区の課題や区民の行動に合ったシステムを選定した。

自動音声の運用が軌道に乗る一方、専用番号の混雑により、区の代表番号にかかる電話も出てきたという。こうした課題に対応するため、シナリオは今後も随時見直していく方針だ。「効率化や電話件数の削減そのものを目的にしないことが重要だと思います。大切なのは、区民がいかにスムーズに問題を解消できる環境を整えるか、という考え方ではないでしょうか」と締めくくった。


※同区の国民健康保険は“保険料”方式だが、実務は税方式と共通点があるため、本特集にて紹介