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手軽ながんリスク検査をきっかけに、特定健診の未受診層を動かす。

採尿によるがんリスク検査キット
がんは早期発見が重要だが、忙しさや抵抗感から検査を後まわしにする人も少なくない。美郷町では特定健診の受診予定者から希望者100人に、尿でがんリスクを調べるキットを提供。働き盛り世代の、検査への関心を高めるねらいだという。
※下記はジチタイワークスINFO.(2026年7月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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美郷町
健康福祉課
課長 志村 幸恵(しむら ゆき)さん

美郷町
健康福祉課
課長補佐 岩谷 真弓(いわたに まゆみ)さん
検査への関心の低さや抵抗感などから働き盛り世代の受診率が課題だった。
同町では、町民の死因に占めるがんの割合が高く、肥満など生活習慣病のリスクを抱える人も多いという。ところが、“忙しくて時間がない”、“元気だから検査しなくても大丈夫”などの理由から、働き盛り世代は特定健診やがん検診の受診率が低い現状があった。個別に受診を促すチラシなどを送っても、十分な効果は得られなかったそうだ。
「胃カメラやバリウムなどを使う検査に、身体的・精神的負担を感じるという声もあります。また、決められている集団検診の日程に都合がつかない場合は、車で約1時間かけて町外に出なければ、専門的な検査が受けられる医療機関がありません。そういった地理的な条件も受けづらい要因になっていると思います」と志村さんは話す。
特に、国民健康保険加入者の特定健診受診率が約5割にとどまっていることから、受診率向上につながるしかけを模索していたという。そんなときに知ったのが、名古屋大学発のスタートアップ「クライフ」が開発・提供する、がんリスクを調べるキット「マイシグナル・スキャン」だった。


尿を採取して送るだけの手軽さで10種のがんリスクを調べられる。
同製品は、尿に含まれる物質“マイクロRNA”をAIで解析し、胃がんや肺がん、大腸がんなど10種のがんリスクを“低・中・高”の3段階で判定する検査キットだ。自宅や医療機関で採尿し、ポストに投函するだけで、がん種ごとにリスクが分かる。手軽に調べられて、リスクがあった場合には、どの科でどんな検査を受けたらよいかという提案ももらえる。岩谷さんは「こうした検査を受けられる機会が、特定健診受診のきっかけになればと導入しました。まずはその簡単さが決め手の一つです。忙しさなどから検査を敬遠しがちな働き盛り世代が健康管理の第一歩を踏み出すきっかけになると思いました」と話す。
さらに注目したのは、すい臓がんも検査対象に含まれていることだという。「令和4年は、町内ですい臓がんの死亡が多い年でした。すい臓がんは、見つかるときにはすでに進行しているケースが多いと聞きます。市区町村が行う一般的ながん検診には含まれないので、これをきっかけに早期発見につながることを期待しました」と志村さん。
同町では、令和8年度に特定健診を受診予定の40~74歳を対象(社会保険加入者を含む)に、希望者の中から抽選で100人に検査キットを提供するプロジェクトを実施。検査費用を公費で助成し、対象者の自己負担は約2~3割に。「町内の診療所で採尿・受検することで、結果が中~高リスク判定になった人を必要に応じて専門の医療機関へつなげる体制を整えています」。

283人から申し込みが集まり健診に届きにくい人の入口に。
反響は大きく、100人の定員に対して283人の申し込みがあったという。「募集の開始前から問い合わせが入っていました。メディアで知った他自治体の住民からも、“美郷町さんの取り組み、いいですね”といった声が届き、町内外での関心の高さを実感しています」と岩谷さん。
申し込み状況からは、興味深い傾向も見えた。国民健康保険加入者のデータを見ると、直近3年間で特定健診を受けていない人が21%、胃がん検診を受けていない人が50%だという。「プロジェクトが目指していた、特定健診受診のきっかけにつながったと感じます。バリウム検査などと比べて手軽なことも、後押しになったようです。これからは皆さんが感覚ではなくデータにもとづいて健康を意識するようになり、その結果として医療費の削減にもつながればと考えています」と志村さん。結果を踏まえ、今後も取り組みを続けていきたいという同町。忙しさや不便を理由にせず、多くの人が自分の健康と向き合える環境づくりが進んでいきそうだ。
導入実績
●交付金の活用事例
岡山県新庄村(しんじょうそん)
「へき地小規模自治体での早期がん発見による充実ライフの構築」事業の一環として、同製品を導入。“人生100年時代づくり・地域創生ソフト事業交付金”を活用している。

※令和8年4月 クライフ調べ
受賞歴
●日本医療研究開発機構理事長賞(令和7年1月)
●東京都ベンチャー技術大賞(令和6年度)
●科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞(令和2年度)など
※開発チームの受賞を含む
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