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官民が手をつなぎ、データに裏打ちされた施策で観光客の周遊を促す

観光の活性化は、地域の価値向上に欠かせないが、有効な打ち手に悩む自治体も少なくないようだ。観光客の動きを読み取り、それを誘導するには高度なテクニックが要求されるため、一歩を踏み出す際の迷いも大きくなる。新潟県新発田市では、経験や勘に頼った施策立案からの脱却を図り、「NTTドコモビジネス」との協業で、エビデンスにもとづいた観光プロモーションを進めているという。
本記事では、取り組みに挑んだ市と企業の対話を軸に、多様な地元関係者の声をおりまぜた座談会の様子を紹介する。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。
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【記事のポイント】
・客観的データと正面から向き合い、課題を乗り越える方法を見つける
・個別の取り組みではなく、施策を連動させて相乗効果を生み出す
・住民や事業者を巻き込み、地域の観光資源が持つ力を引き出す

(上段 左から)
新潟県 新発田地域広域事務組合
(前・新発田市 観光振興課 課長)
事務局長 渡辺 貴守(わたなべ たかもり)さん
一般社団法人 新発田市観光協会
事務局次長 本間 裕之(ほんま ひろゆき)さん
(下段)
NTTドコモビジネス株式会社
事業推進部 グロースマーケティング推進室
室長 徳田 泰幸(とくだ やすゆき)さん
“人流の濃淡を解消したい”という地域の悩み
―― 新発田市で今回の取り組みを始めた背景についてお聞かせください。
渡辺:当市を代表する観光スポットは月岡温泉で、年間約40万人の宿泊客が訪れます。また、市街地には日本百名城の1つである「新発田城」や、和洋折衷の迎賓館「蔵春閣」(※)など、さまざまな観光資源が集中しています。しかし、月岡温泉を訪れる方の多くは、宿泊後にそのまま帰ってしまうのです。せっかく来ていただいたなら、ぜひ市街地の魅力的な部分も見てほしい。同時に、観光客の周遊によって地域経済を活性化できれば、と考えていました。
コロナ禍で観光施策はいったん封印せざるを得なくなったのですが、状況が落ち着き、全国の観光地に人流が戻ってきた。そうした中で当市はというと、さほど盛り上がっている実感もなく、このままだと取り残されるという危機感がありました。そこで、地元事業者や観光協会と話し合い、何らかの手を打とうということになったのです。

※座談会が行われた蔵春閣(ぞうしゅんかく)は、明治45年に東京で建てられ、歴代首相や渋沢栄一らをもてなした大倉喜八郎の別邸。大倉喜八郎は新発田市出身の実業家のため、令和5年にゆかりの地・新発田の東公園へ移築・開館された。
―― NTTドコモビジネス(以下、ドコモビジネス)をパートナーに選んだ理由は?

渡辺:きっかけは、当市で進めている廃校をリノベーションしてシェアオフィスとし、そこでスタートアップ支援や企業間交流をすることによってビジネスの活性化を図ろうとする取り組みでした。その一環で、入居企業と交流会を開くなどコミュニケーションをとっていたときに、ドコモビジネスの担当者(当時)と出会いました。当市の課題を話したところ、「ぜひ一緒に考えましょう」と心強い言葉をもらえたのです。
それからは、両者で勉強会を重ね、補助事業についても検討し、事業の実現に向けて話を進めていきました。誰もが知る企業であるということに加え、担当者の熱意もあり、不安はありませんでした。

渡辺:きっかけは、当市で進めている廃校をリノベーションしてシェアオフィスとし、そこでスタートアップ支援や企業間交流をすることによってビジネスの活性化を図ろうとする取り組みでした。その一環で、入居企業と交流会を開くなどコミュニケーションをとっていたときに、ドコモビジネスの担当者(当時)と出会いました。当市の課題を話したところ、「ぜひ一緒に考えましょう」と心強い言葉をもらえたのです。
それからは、両者で勉強会を重ね、補助事業についても検討し、事業の実現に向けて話を進めていきました。誰もが知る企業であるということに加え、担当者の熱意もあり、不安はありませんでした。
事業者も住民も全員参加の“オール新発田”で挑戦
―― ドコモビジネス側からはどのような提案をしたのですか。

徳田:プロモーションと、人流データ調査です。まずは新発田市の魅力を発信して多くの人に認知してもらうことが必要なので、プロモーション活動として訪日外国人向けメディア「tsunagu Japan(ツナグ ジャパン)」への記事掲出と、Web・SNSでの広告展開を進める。同時に、そうした刺激を与えて人流がどう変わるのか、モバイル空間統計の人流データを分析して変化を読み、レポート化します。こうした施策をパッケージとして提案しました。
人流データ分析では、どの国から来ているのか、どのエリアに立ち寄っているのか、来訪動向に変化があったのかを分析してレポートを作成。メディアで掲出する記事も、月岡温泉だけでなく、新発田市の魅力と併せて伝えることで周遊を促します。さらに、行ってみたいと思ってもらえるよう臨場感のある動画をつくって、温泉と市街地の動線にはシャトルバスがあることを伝える。新発田市を訪れる前から現地の魅力を体験できる内容にしつつ、各施策が連動するようにしました。

渡辺:直行バスは今回の取り組みに合わせて運行を始めました。冬期は温泉客の増加で最寄り駅からの路線バスが満員になるという繁閑差があったため、その解消をめざしたのがきっかけです。これで新潟駅から月岡温泉に直行できるようになったので、“東京から3時間で行ける温泉”というキャッチコピーを掲げています。
この新しい試みも、Webメディアによる訴求で効果が出てくると思いますし、前後の変化をドコモビジネスが分析してエビデンスを得ていく。そうした組み立て方はとても勉強になりました。
徳田:広告についても、知恵を出し合って進めましたね。新発田市には自然を活かしたゴルフ場が複数あり、ゴルフ人気の高い韓国からの来訪者が多い。また、米の輸出でハワイとつながりがある。そうした点からソウルとハワイをターゲットに絞り、SNSでの広告掲載を実験的に行いました。
―― 新発田市とドコモビジネス、それぞれの役割について教えてください。
渡辺:この取り組みではステークホルダーが多いので、一つの目標に向かって“オール新発田”で臨めるよう、市が音頭をとる役割を担いました。また、観光協会が関係者をつなぎ、両者が連携して全体を取りまとめています。具体的には、観光協会が財政面のシミュレーションを担当し、市が住民や事業者への説明会を行いました。特に住民への説明では、市全体のために行う事業であることを伝え、地域全体でおもてなしの雰囲気づくりをしていくという方向で理解を得られるよう努めました。
徳田:弊社の具体的な役割は、施策の設計から、記事や広告の運用、データ分析までを一貫して担うこと。ですが、全体としては目標を達成するまで伴走するという役割が大きいと考えています。単にアイデアやサービスを提供するのではなく、一緒に悩み、試行錯誤を繰り返して、突破口が見つかるまでサポートしていく。必要に応じ、我々が持っている他地域の情報を提供して議論を深める。あるいは補助金を受ける方法も考える。この取り組みはまだ途中段階ですが、観光マーケティングを通し、地域が潤って、自治体の税収も上がるというところまでを視野に入れて伴走しています。

初めての試みは、新しい発見に満ちていた
―― 施策を通して、どのような反応が確認できていますか。
徳田:例えば「ツナグ ジャパン」を使ったメディア戦略を見ると、弊社調べでは公開約3カ月でビュー数は1万人を超えており、ユーザーも8,000人超です。新発田市の魅力発信は広がっていると感じています。ただ、国によってリアクションに違いがあり、動画が支持されている国では記事の閲覧が少なかったり、逆に読み物が響く国があったりします。また、SNSやWeb広告に対する反応を分析すると、国によって歴史的建造物に興味があるとか、食や自然の情報を求めるといった傾向もある。これらの結果をさらに分析して精度を高めつつ、ピックアップした改善点を次の施策に反映させていきます。
ほかに、YouTubeから「しばた町めぐり」という市のサイトへの流入数が多かったのも興味深い反応でした。ちなみに、人流データについては分析中ですが、全体的に増加傾向だということが分かっています。ある時期は台湾からの観光客が多いといった結果も出ており、そうしたデータをもとに戦略を練っていけば、新しい成果が得られると思います。
渡辺:市としては、現実が見えたという点が大きいです。今までは、月岡温泉がにぎわっているから、それなりに市街地も巡ってくれているのだろうと考えていました。しかし人流データで見ると新発田城が突出していて、周遊することなく直線的な動きになっているのです。どうすれば市街地を巡ってもらえるのか、もっと真剣に考えなければと捉え直すきっかけになりました。これは客観的なデータがあったからこその収穫です。当市の市街地には、国指定名勝の日本庭園「清水園」や、風情のある寺町通りなど見どころも多くあります。土産店なども含めてコンパクトに周遊できる観光スポットになっているのです。できれば半日くらい滞在して名所巡りも楽しんでもらいたい。そのためにも“旅マエ”に情報を得る機会の提供が大切だと実感しています。

―― 現時点でどのような成果が得られていますか。
徳田:まず、有効なコンテンツは何か、というものが見えてきたのは成果だといえます。これを繰り返し、積み重ねていくことで、より訴求力を高めていけるはずです。また、データによる振り返りでPDCAサイクルをまわせるようになったのも大きな収穫だと感じています。地域で何らかの施策を続けているが、その目標や効果があいまいだという事例は意外と多いもの。それに対し、我々は根拠となるデータを示しつつ、施策を続ける意義があるのか、もしないのであれば何を変えていけばいいのかといった提案ができます。そうやって目標を共有しながら伴走していくのです。
渡辺:私の中で印象に残っているのは、「ツナグ ジャパン」の記事執筆に、ドコモビジネスが外国人ライターを起用したことです。私が目にした観光サイトでは、観光事情に詳しい日本人が書いて、それを翻訳したと思われるものが多かったので、“なぜ?”というのが正直な感想でした。でも、実際に記事になったものを見ると、我々の視点とは少し違う見せ方になっていて、PV数も非常に多い。なるほど、と納得させられました。これは新しい発見でしたね。

全員が稼げる観光地をめざし、次のステップへ進む
―― 観光協会の本間さんへ。今後、どのような観光施策に注力していきたいですか。

本間:この取り組みで、新発田市観光の弱点が分かりました。月岡温泉の宿泊客は年間40万人。それに対して新発田城は約5万人。市街地に足を運んでいる人はさらに少ない。とてももったいない話です。今後のポイントは、動線確保や周遊の促進、地域のプロモーションなどを通して人流を活発化させることだと考えています。直近では、羽田空港の「TIAT SKY HALL(ティアットスカイホール)」で開催されている落語イベント「空路寄席(そらじよせ)」と連携し、インバウンドへ直接アプローチする試みが予定されており、どんな変化が生まれるか楽しみです。
私たち観光協会も、月岡温泉旅館協同組合や地元事業者との信頼関係をより強くし、“全員が稼げる観光地づくり”をめざしていきます。その道のりでは、さまざまなアドバイスやデータが必要になるので、そうしたサポートをドコモビジネスに期待しています。
渡辺:同感です。データをふまえて新しい需要をつかむことの大切さが、取り組みを通して実感できました。もちろん、自分たちで需要を生み出すことも重要です。市としても、新しいコンテンツづくりを進め、地域の魅力や価値を上げていきたい。そうした際にも、ドコモビジネスと一緒に挑戦していく機会があればと思っています。

徳田:もちろん、ご一緒させていただきたいです。豊富な観光資源があるのに、その存在が知られていないため観光の選択肢に入らないというのは、本当に惜しい。その魅力を最大限に伝える方法を共に考え、デジタルも駆使して、いろいろな仕掛けをつくっていけたらいいですね。
本間:新発田市は、“PRしなくても観光客が来るまち”ではありません。月岡温泉の皆さんの頑張りに負けず、市としても、新たな施策を打っていかなければならない。食や農、歴史的な文化なども多く残っているので、それらを線でつなぐことができれば、もっと魅力が高まると思うんです。選ばれる観光地になり、市街地を大勢の観光客が歩いている……そんなイメージをぜひ現実にしたいと思います。

徳田:もちろん、ご一緒させていただきたいです。豊富な観光資源があるのに、その存在が知られていないため観光の選択肢に入らないというのは、本当に惜しい。その魅力を最大限に伝える方法を共に考え、デジタルも駆使して、いろいろな仕掛けをつくっていけたらいいですね。
本間:新発田市は、“PRしなくても観光客が来るまち”ではありません。月岡温泉の皆さんの頑張りに負けず、市としても、新たな施策を打っていかなければならない。食や農、歴史的な文化なども多く残っているので、それらを線でつなぐことができれば、もっと魅力が高まると思うんです。選ばれる観光地になり、市街地を大勢の観光客が歩いている……そんなイメージをぜひ現実にしたいと思います。
徳田:そのイメージはとても大切だと思います。どの地域にも“変えなければ!”という思いはあるが、変え方が分からない。そうした中で客観的なデータを目の当たりにして落胆することもあると思いますが、そこからスタートして変化を生んでいくことが大事ですから。新発田市はそうした現実に向き合いましたし、市や観光協会だけでなく、事業者も地域住民も巻き込んだ“オール新発田”で進んでいく姿勢が素晴らしい。観光施策における一つのモデルケースになるのではと感じています。
地域の思いと伴走支援が、観光の未来をつくる
地域の弱点を掘り下げ、その克服に力を注いでいった同市の取り組み。インタビューの中に出てきた“オール新発田”や“全員が稼げる観光地づくり”といった言葉からも、まちの未来を背負う覚悟が感じられる。
そうした思いと共鳴するように、ドコモビジネスの伴走体制がある。取り組みはまだ始まったばかりだが、それぞれの思いは同じ方向を向いている。デジタルの持つ力と、関係者の熱意、創意工夫が結合すれば、未来はきっと開けるはず。そんなことを感じさせられた座談会だった。

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