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【デジタル庁指針】行政AX・DXを成果につなげるポイントとは?

情報政策
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【デジタル庁指針】行政AX・DXを成果につなげるポイントとは?

行政DXやAI活用が広がる一方、自治体によってはシステム導入にとどまり、十分な効果が出せていない……といった課題があるという。こうした中、デジタル庁は令和8年6月に「各府省庁AX/DXの更なる効果発現に向けた依頼事項について」を公表。本記事では、依頼事項のポイントと、行政AX・DXを成果につなげている自治体の事例を紹介する。

※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

デジタル庁が示す「各府省庁AX/DXの更なる効果発現に向けた依頼事項」とは?

まずはデジタル庁が令和8年6月に公表した本指針の背景と、そこで使われている“AX”“DX”という言葉の位置付けを押さえておこう。

単なるツール導入から“本質的な効果発現”への転換

公表の背景には、“システムやAIの導入自体が目的化しやすい”という課題がある。同指針では、現状の業務やデータを整理せずAIを導入する進め方を“NGパターン”と位置付け、以下のリスクを指摘した。

  • 費用対効果の低下:非効率な業務をそのまま高速化しても、期待したほどの効果が得られない。
  • 定着の難しさ:現場の業務フローとかみ合わず、利用が広がりにくい。

つまり、求められているのは導入の先にある“本質的な効果発現”だ。行政コストの削減や、住民の利便性向上、業務効率化といった目に見える成果につなげてこそ真の価値を発揮する。深刻な人手不足の中で行政サービスを維持するためにも、成果創出を見据えた取り組みへの転換が急務となっている。 

出典:デジタル庁「令和8年6月 各府省庁DX推進連絡会議(第5回)・デジタル社会推進会議幹事会(第22回)合同会議 各府省庁AX/DXの更なる効果発現に向けた依頼事項について」より

行政におけるAX・DXの位置付け

同指針では、AX・DXを以下のように定義し、両者を掛け合わせた推進を求めている。

  • AX(AIトランスフォーメーション):AIを活用したサービス・組織・文化の変革と競争優位性の確立。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を活用した業務やサービスの変革。

DXで整えた基盤の上に、急速に発展するAIによる変革(AX)を掛け合わせる。つまり、両者を切り離すことなく取り組むことで、従前の変革を大きく加速させるという考え方だ。

行政でAXが重視される背景には、政府の後押しもある。令和7年12月に閣議決定された「人工知能基本計画」では、政府自らが積極的かつ先導的にAIを利活用する方針を明記。令和8年5月には、全府省庁の職員が生成AIを利用できる「ガバメントAI源内」の大規模実証も始まった。

出典:内閣府『初の「人工知能基本計画」を閣議決定しました』より
出典:デジタル庁『ガバメントAI「源内」』より

AX・DXの効果を最大化するために求められるポイント

デジタル庁の指針を踏まえ、効果を最大化するための重点項目を3つのポイントに整理して解説する。

POINT1 業務プロセスの徹底的な見直し(BPR)

特に強調されているのが、上流工程におけるBPR(※)の徹底だ。アナログ業務をそのままデジタル化するのではなく、業務フロー自体を再設計することが求められている。

指針が示す“成功パターン”は、以下の通りだ。

  • BPR:業務フローの見直し、ムダ・重複の排除、標準化・ルール化、例外の最小化。
  • データマネジメント:データの統合・連携、定義の統一、品質確保、ガバナンス強化。
  • AIの適用:業務に最適化したAIによる、信頼できるアウトプット。

重要なのは、この順番だ。BPRとデータマネジメントはAI適用の土台であり、順番を誤ると十分な効果が得られないとされている。

例えば、紙の申請フローをそのままオンライン化しても、結局使われずに紙の手続きが残るケースは少なくない。デジタル化の成否は、発注前の“業務の洗い出し”が重要ということだ。

※ BPR=Business Process Re-engineering(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)。従来のやり方にとらわれず、業務フローや組織の仕組みそのものを最初から見直して再構築すること。

POINT2 ガバナンス構築と生成AI・共通基盤の活用促進

効果発現のもう一つの柱が、安全な運用体制を整えた上での先進技術の活用だ。

ガバナンスの土台となるのは、令和7年5月に運用が始まった「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」だ。これを背景に、各府省にはAI統括責任者(CAIO※1)が設置され、生成AIの利活用促進とリスク管理を一体で総括する体制が整えられている。

その上で、以下のような生成AI・共通基盤の活用を展開していく方針だ。

  • ガバメントクラウドやマイナポータル、GビズID(※2)といった共通機能の効果的な活用。
  • 生成AI利用環境「ガバメントAI源内」による約30種類のAIアプリの提供。
  • 国産大規模言語モデル(LLM)を源内で試用し、行政実務への適合性を評価。

安全性を確保しながら徹底的に活用する姿勢が、行政AX・DXの推進には不可欠といえるだろう。

※1 CAIO=Chief AI Officer
※2 GビズID=1つのIDとパスワードで複数の行政サービスにログインできる、法人や個人事業主のための共通認証システム。

POINT3 成果の可視化と継続的な評価

AX・DXは、導入して終わりではなく、成果を可視化して改善し続けるサイクルが欠かせないといわれている。

同指針の成功パターンでも、効果の最大化の先に“継続的に改善・高度化”、“全体最適・横展開”が描かれている。削減時間やコストを定量的に把握できれば、庁内の理解が得やすくなり、次の投資判断にもつなげやすい。

単なるデジタルツールの導入にとどまらず、住民体験と業務の変革という“真の効果発現”を見据える視点は、自治体がAX・DXを推進する上でも重要な道しるべとなるだろう。

AX・DXの推進に成功している自治体事例|横須賀市の生成AI全庁活用による業務効率化

神奈川県横須賀市では、令和2年にデジタル・ガバメント推進室を設置して行政DXの基盤整備に着手、令和5年4月からは全庁を対象にChatGPTの実証実験を開始。文書作成をはじめ、Excel関数の作成補助や外国人居住者向けの翻訳など、幅広い業務に生成AIを活用している。

庁内報「ChatGPT通信」の発行やプロンプトコンテストなど、利用を定着させる取り組みも実施。その結果、令和7年10月時点では職員の約7割が利用し、業務時間の削減効果は年間2万2,700時間にのぼると推計されている。

導入スピードだけでなく“庁内に定着させた具体的な仕掛け”が参考になる取り組みだ。

まとめ

デジタル庁の指針は、行政のデジタル化が“導入の時代”から“成果の時代”へ移ったことを示している。ポイントは次の3点だ。

  • BPRの徹底:AI導入前に、業務プロセスの見直しとデータ整理を行う。
  • 安全な活用体制:ガバナンスを整えた上で、生成AIや共通基盤を活用・横展開する。
  • 成果を可視化:効果を定量的に把握し、継続的に評価・改善するサイクルを構築する。