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公開日:2025-12-12

森林環境税の使い道を解説!自治体の活用事例や制度の仕組みも紹介

農林水産
読了まで:6分
森林環境税の使い道を解説!自治体の活用事例や制度の仕組みも紹介

令和6年度から「森林環境税」の徴収が始まった。個人住民税とあわせて年1,000円を負担する税で、森林整備の遅れや担い手不足に対応するための財源となる。とはいえ、森林環境税がどのように使われるのか、その使い道は分かりにくい。本記事では、森林環境税の仕組みや法律で定められた使い道、自治体の活用事例を分かりやすく解説する。

※掲載情報は公開日時点のものです。


目次

森林環境税とは?令和6年度から始まった新しい税金
森林環境税の具体的な使い道
自治体別による森林環境税のユニークな活用事例
森林環境税の使い道に関する今後のポイント
まとめ

森林環境税とは?令和6年度から始まった新しい税金

出典:総務省「森林環境税及び森林環境譲与税」

森林環境税とは、日本の森林がもつ公益的機能を維持し、次世代へ確実に引き継ぐために創設された新しい国税である。令和6年度から徴収が始まり、地球温暖化の防止や災害に強い国土づくりに欠かせない森林を、社会全体で支えることを目的としている。

森林環境税が創設された背景と目的

日本の森林は、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、生物多様性の保全など、国民生活に多くの恩恵をもたらしている。しかし、林業の担い手不足や所有者不明森林の増加により、適切な手入れが行き届かない森林が各地で広がっているのが現状だ。

こうした課題に対応し、パリ協定の目標達成や災害防止に向けた森林整備に必要な財源を安定して確保するため、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が制定され、森林環境税が創設された。

出典:林野庁「森林環境税及び森林環境譲与税」

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森林環境税はいつから誰がいくら払うのか

森林環境税は、令和6年度から、日本国内に住所をもつ個人に対して課税される。具体的な内容は以下の通りだ。

この税金は国税に位置づけられているが、徴収の利便性を考慮し、地方税である個人住民税とあわせて徴収される仕組みになっている。

森林環境譲与税との違い

出典:総務省「森林環境税及び森林環境譲与税について」

森林環境税として集められた税収は、その全額が「森林環境譲与税」として国から都道府県および市区町村へ譲与される。つまり、私たちが納める森林環境税は、自治体が森林整備などの取り組みを進めるための財源である森林環境譲与税へと置き換わる仕組みだ。

譲与額は、私有林の人工林面積、林業就業者数、人口といった客観的な基準にもとづいて各自治体に配分される。この制度により、都市部を含む全国の自治体が、それぞれの地域の実情に応じて森林保全に関わる取り組みを進められるようになっている。

森林環境税の具体的な使い道

出典:総務省・林野庁「令和5年度における森林環境譲与税の取組状況について(令和6年 12月)」

森林環境譲与税の使い道は法律で明確に定められており、市町村と都道府県で役割が異なる。市町村は、森林整備やその促進に関する施策に活用し、都道府県は市町村が実施する森林整備を支援するための施策に充てることとされている。

間伐や路網整備などの森林整備

森林環境譲与税の最も中心的な使い道は、間伐(木の間引き)や林道・作業道の整備などの「森林の整備に関する施策」である。

適切な管理が行われていない森林では、木々が密集して日光が地表まで届かず、下草が生えにくくなることで土壌流出が起きやすくなり、災害リスクが高まる。間伐を行うことで、残った木の成長を促し、健全で災害に強い森林を形成できる。

林業の担い手確保と人材育成

林業の持続的な発展には、次世代の担い手を育成することが欠かせない。このため、森林環境譲与税は、林業への就業を目指す人への支援や技術研修の実施といった「人材育成・担い手の確保」にも活用される。林業に関心をもつ人を増やす普及活動や、新たな就業者の定着を支援する取り組みも含まれている。

公共施設の木質化など木材利用の促進

森林を健全に保つためには、伐採した木材を有効活用し、植林して育てるという循環を確保することが重要である。このため、地域の公共施設(学校、役所、公民館など)に地元産の木材を積極的に使用する「木質化」や、木製品の開発支援など、「木材利用の促進」に関する施策も森林環境譲与税の重要な使い道の一つとなっている。

森林や林業への理解を深める普及啓発

子どもを対象とした森林環境教育(木育)や、市民向けの植樹イベントの開催など、森林の重要性や林業の役割への理解を深めるための「普及啓発」活動にも活用されている。これらの取り組みを通じて、国民一人ひとりが森林保全への意識を高めることが期待されている。

自治体別による森林環境税のユニークな活用事例

森林環境譲与税は、令和元年度から各自治体への譲与が始まり、地域の実情に応じた多様な取り組みが進められている。ここでは、その中でも特徴的な活用事例をいくつか紹介する。

千葉県浦安市・山武市ほか|都市と山村をつなぐ森林整備広域連携

千葉県では、森林環境譲与税を活用し、都市部と山村部をつなぐ「森林整備広域モデル事業」を実施している。これは、森林をもたない都市部の自治体が資金を負担し、山村部がその資金を用いて森林整備を行う仕組みである。

整備によって得られたCO₂吸収量は都市側に還元される点が特徴だ。浦安市と山武市の協定から始まり、習志野市や市川市などへも連携が広がり、成果を上げている。

出典:浦安市「浦安市と山武市の連携による森林整備の実施に係る協定」

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県の橋渡しで山村と都市の自治体がつながり、森林環境譲与税を有効に活用する。

山形県西川町|町産材移動式サウナで財源確保と観光PR

西川町では、森林環境譲与税を活用し、地元産の西山杉を使用した移動式トレーラーサウナを製作した。これは、サウナを活用した地域ブランディングの取り組みである。完成したサウナは入札により観光協会へ約930万円で売却され、その収益は高齢者福祉基金に積み立てられた。地域材のPRを行いながら、売却益を病院存続などに還元する循環型の取り組みとなっている。

出典:西川町「西川町 議会だより No.127」

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町産材を活用した移動式サウナを、財源の確保とまちのPRに活用する。

秋田県大館市|専門職の大幅増員による直営体制の確立

大館市では、森林環境譲与税を活用して専門人材の確保に注力し、森林経営管理制度の運用体制を大幅に強化した。制度開始前は数名だった担当職員を、地域林政アドバイザーや会計年度任用職員の登用により16人まで増員。外部委託に頼らず、意向調査から計画作成までを直営で行う体制を整えた。豊富なマンパワーの確保とノウハウの蓄積により、円滑かつ迅速な森林整備を実現している。

出典:大館市「令和6年度森林環境譲与税使途公表」

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森林経営管理制度で進める「持続可能な森林管理」のヒントとは?

森林環境税の使い道に関する今後のポイント

森林環境税が有効に活用され、国民の理解を得るためには、いくつかの重要なポイントがある。

自治体ごとに求められる使途の公表

森林環境譲与税の使い道については、各都道府県・市町村がインターネットなどを通じて公表することが法律で義務付けられている。私たちが納めた税金が、自分の住む地域や日本の森林のためにどのように使われているのかを、各自治体のWEBサイトなどで確認できる。こうした透明性の高い情報公開が、制度への信頼につながっている。

出典:e-Gov法令検索「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」

効果的な活用に向けた自治体間の連携

森林の保全は、1つの市町村だけで完結するものではない。特に、森林を持たない都市部の自治体と、広大な森林を管理する山村部の自治体が連携し、それぞれの役割を果たすことが重要である。水源地の保全や木材利用の促進など、広域的な視点で協力関係を築くことが、森林環境譲与税の効果を最大化するカギとなる。

まとめ

令和6年度から本格的に始まった森林環境税は、日本の豊かな森林を未来へ引き継ぐための重要な財源である。この税金は森林環境譲与税として全国の自治体に配分され、間伐などの森林整備、林業の担い手育成、木材利用の促進など、地域の実情に応じた多様な取り組みに活用されている。私たち納税者も、使い道に関心を持ち、自治体が公表する情報を通じてその成果を確認していくことが求められている。

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