ジチタイワークス

東京都墨田区

主管課と広報担当が二人三脚で、効果的なまちの魅力発信に挑戦。

墨田区では、平成28年に「墨田区広報広聴戦略プラン」にもとづくシティプロモーションを開始。職員全員を“まちの広報担当”、広報広聴担当職員を、より効果的な伝え方を一緒に模索する“伴走者”と位置づけ、二人三脚で事業そのものの魅力度アップにチャレンジしてきた。外部との連携や協力は得ながらも、主体はあくまで職員が行う広報活動。プロモーションのスタートから5年、その成果と今後の展望を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.17(2021年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

他人事から自分事への変換と、伝えるから伝わるへの進化がカギ。

墨田区といえば、江戸時代から続く歴史のあるまち。情緒ある景色とともに、現代までずっと、人の絆を大切にしてきた。平成24年には東京スカイツリー®が完成し、観光客にも人気の高いエリアだ。この5年間で人口が約1万人増加し、暮らしやすさを考えた制度や施設も充実。しかしその良さが、“受け手である区民にうまく届いていない”というジレンマを抱えていた。そこで、効果的な魅力の発信を目指し、平成28年から“人と人のつながり”をテーマに、シティプロモーションを開始。葛飾北斎直筆の“人”の文字をモチーフに使用したロゴマークをシンボルに、様々な活動を展開してきた。同時に、庁内全体で広報意識を高める「スタッフプライドチャレンジ」にも取り組んできたという。

この取り組みは、職員一人ひとりが区の情報発信の主役として、分かりやすく正確に伝えられるよう、“自覚と責任感”を持って自ら行動しようという試み。「この取り組みの肝は、各部門の制度や取り組みについて1番詳しく知っている主管課が主導し、広報広聴担当はその思いに寄り添いアドバイスをするというスタイル。しかし当初は『広報広聴担当が主導で何か新しいことを始めるんだろう』と、みんなが遠巻きに見ている感じでした。“自分事”として捉えてもらうまでが大変でしたね」と山田さん。

職員のプライドを育むことで“伴走あり”から“自走”に発展。

職員の意識を変えたのは、スタッフプライドチャレンジの一環として取り組んだ「プロモーションサポート事業」だ。毎年4月に全庁からプロモーションの手伝いを必要とする事業を10件程度募集し、1年間かけて広報広聴担当が伴走する仕組み。事業開始の翌年からは庁内での注目度も上がり、デザインや動画制作など様々な相談が寄せられるように。そこで、技術的な面を補完するため、8人の地元クリエイターにもサポート役として加わってもらった。「ただ、あくまでも専門的な立場からアドバイスをいただくだけで、クリエイターの皆さんに仕事を丸投げすることではないのです。事業でより良い発信を継続的に行うには、やはり担当職員自身が汗をかき、アイデアを出すことが必要になると考えています」と河村さん。

左:同区のシティプロモーションロゴ。
右:プロモーションサポートの事例をまとめた職員向け冊子。

スタッフプライドの醸成は難しい課題だが、このほかにも全庁向けに、デザイン講座や媒体の活用講座の開催、他自治体の好事例紹介など、継続的な意欲喚起を行ってきた。その結果、平成28年からの5年間で、約50事業の深掘りとPR方法の改善、500人を超える職員への研修機会の提供に結びついたという。さらに、広報広聴担当の伴走を終え、その後に主管課だけで発展させて軽快に自走し始めた事例も多く見られるようになったといい、同区が目指す広報のあり方に近づいてきているようだ。

■プロモーションサポート事業をきっかけに発展した事例

●平成29年度 生活衛生課「食中毒予防普及啓発事業」

クリエイターからのアドバイス
「すみだこ」への“共感や親しみ”を高めるため、動きをつけて動画などで展開してみてはどうか。

生活衛生課の取り組み
「すみだこ」のパペット人形を自作して、CATVやYouTubeでの発信にチャレンジ!区ホームページにも「すみだこの部屋」を立ち上げ、認知度がアップ。区民から「また見たい」の反響も!

“どうやったら伝わるか?”を考えることが習慣に。

自分たちで動画を制作する過程で、“一番伝えたいことは何か?”を明確に決めて発信する大切さを実感。以降のPR活動に活かしています。課内で少しずつ広報マインドが育ったことで、年々展開が広がり、コンテンツの拡充や他自治体キャラクターとの交流などにつながっています。

生活衛生課
左から
川﨑さん、久保井さん、白石さん(当時)、椎名さん

区民とともに魅力を発信し、まちへの愛着を持続的に高める。

ここまで様々な取り組みを進めてきた同区だが、次なるフェーズへの展開を検討中だという。「区民の皆さんが区の魅力を自ら発信していきたくなるように、様々な事業や機運の醸成を通じて取り組んでいきたい」と、口を揃える。

これまでもInstagramを活用したフォトコンテストや、すみだ子どもPR大使によるまちの魅力発信などに区民とともに取り組んできた。今後はさらに多くの人を巻き込み、参加してもらうことで人と人がつながり、まちが面白くなるアイデアを検討中だ。進化を続ける同区に、注目していきたい。

墨田区 企画経営室
広報広聴担当
右:河村 亮(かわむら りょう)さん
左:山田 格(やまだ いたる)さん

課題解決のヒント&アイデア

1.媒体ごとの特性を理解し“伝わる”を意識すると反響が増え、広報の面白さに気づく

プロモーション開始を機に、SNSも含めて発信媒体数を増やし、目的に応じた活用方法をサポート。反響が増えることで職員の意欲向上にもつながった。

2.サポート側は“伴走者”という立ち位置をぶらさずアドバイザーや進行役に徹する

外部クリエイターは制作物の委託先としてではなく、相談会のアドバイザーとして担当。主管課に寄り添いつつ、自走を促すスタイルを徹底。

3.区民参加型のプロモーションを通して得た様々な気づきが、職員の成長を促す

すみだ子どもPR大使など区民参加型の情報発信を展開。区民はまちへの愛着が増し、職員はリアルな声を次のプロモーションにつなげるという相乗効果を生んだ。

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